表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢屋  作者: さーふぁー
14/14

エピローグ

ずっと呼び続けていたタクシーは、6台目でようやく止まってくれた。

「3丁目のFビルまで。」

車が動き出すと、ようやく気持ちが落ち着いてきた。それでもまだ少しドキドキしている。

運転手のおじさんが、私の手に抱えられている花束に気付いて、言った。

「おお、すっごい花束だねぇ。彼氏にでもあげるのかい?」

「・・ちょっと違いますね。」

「おお、そりゃあ意味深だねぇ。」

夢屋が消えてからもう1ヶ月になる。

私なりにいろいろと考えた。どうして夢屋は私を引き合わせたのか。そしてどうして消えたのか。

どんな出来事にも、何かしらの意味があるはずだ。間違いなく夢屋は私を救ってくれた。自分の夢も、過去も。全部リセットしてやり直すことができると教えてくれた。

あれから、私は一つずつの事を大事にこなしていった。出版社をクビになったことも、正直に両親に話した。やはり、最初は驚いていたけど、ちゃんと別の仕事を探すと言うと、それ以上は問い詰められなかった。

小説はこれからも書き続けるつもりだ。プロにはなれなかったとしても、自分が好きなことならそれでいい。これも、夢屋が教えてくれた。

そして一番辛かったけど、亜季ともちゃんと向き合おうと思った。

亜季の本を買い込んで、じっくり読んだ。どの作品も、亜季らしさが表れていて、少し胸が切なくなった。

最新刊のあとがきで、今日Fビルでサイン会が行われると告知されていた。

正直、怖かった。今、亜季と顔を合わせて、私は自分を保てるだろうか。でも、これを逃したら、もうチャンスはないとも思ったのだ。そうして、今、私はこのタクシーに乗っている。

「もう少しで着きますよ。」

おじさんがバックミラーを見て、言った。

花束を握りなおす。

サイン会で亜季に会ったら。今までのことを謝ろう。全部やり直そう。

そうしてもしも亜季が許してくれたら。私はこう言うんだ。

「友達に、なろうよ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ