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空から降る少女①

作者: 小木 々

 とある地方には「女乞い(あまごい)」という奇妙な風習が残っている。

 元は「尼乞い」であり尼寺に入ろうとする女性が「自分の妻となって欲しい」と口説く優男に惑わされず、功徳を積む事ができるかという試練だった。

 それが死別や離婚とならない夫婦円満を尼僧が祈る祭事に姿を変え。

 更に深刻な嫁不足が続く山村の特性から、嫁いで来てくれる女性が現れることを祈る祭事へと姿を変え。

 今では女日照りが続く男による下世話な儀式となったがために「女乞い」と呼ばれるようになったもの。


 ある日、数人の男が儀式に集まるモテない男達を揶揄するように冗談半分で「女乞い」を行った。

 すると信じられない事に、空から美しい少女がそれぞれの男の上にゆっくりと降ってきたのだ。

 身元も何も分からず、警察に保護されそうになった彼女達は、それぞれの男の側から離れようとしなかった。

 この話が知れ渡り、一大ブームが巻き起こった。


 増田はそれによって「女乞い」を知り、実行したモテない男の一人。

 次々に話に聞き、実際に少女が降ってくる瞬間を目の当たりにするが、何度やっても彼のところには一向に降ってこない。

 知人の池綿は一人で行ったその一回目で美少女が降ってきたというのに。

「ただしイケメンに限る、ってか」

 そう吐き捨てたその日。

 外回りの最中、なんとはなしににオフィス街のビルの谷間で一人やさぐれて行った女乞い。

 増田の上に影が差した。

 咄嗟に空を見上げた彼の目に映る女性のシルエット。

 ついに、彼の上にも降ってきたのだ。

 急速に近付いてくる影を見ながら、増田は歓喜の表情を浮かべた。


 その日、ニュースを見ていた池綿は別れたばかりの自分の元恋人が飛び降り自殺したことを知った。

 それに知人が巻き込まれて命を落としたことも。

 小さく袖を引かれる。

 振り向いた先、隣に座って不思議そうに小首をかしげる美しい少女。

 池綿の瞳から意思が消え、虚ろな微笑みを彼女へ返す。

 彼の頭の中に、既に二人の事はなかった。

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