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お姉ちゃんのもの

作者: 熊猫ぱんだ
掲載日:2026/03/13

妹は昔から、私のものを欲しがった。


友達。

好きな人。

彼氏。


気づけば最後は、妹のものになっていた。


だから大人になってからは距離を置いた。


私は結婚して、静かな幸せを手に入れた。

優しい夫がいて、もうすぐ赤ちゃんも生まれる。


やっと自分の人生を守れたと思っていた。


──あの日までは。


実家で妹が言った。


「お姉ちゃん、私も妊娠した」


私は少し驚いた。


「そうなんだ」


でも妹は楽しそうだった。


「相手、誰だと思う?」


胸がざわつく。


妹は笑った。


「お姉ちゃんの旦那」


頭の中が真っ白になった。


妹は平然と続ける。


「お姉ちゃんが幸せそうなの、ずっとムカついてたんだよね」


そして私のお腹を見る。


「だから同じパパの子、作ってみた」


私はしばらく黙っていた。


それからゆっくり聞いた。


「その子、産むの?」


妹は迷いなく答えた。


「もちろん」


そして笑う。


「だってさ」


私のお腹を見て言った。


「兄弟になるんだよ?」


私は小さくうなずいた。


それから静かに言った。


「そっか」


バッグから封筒を取り出してテーブルに置く。


「じゃあこれ、見て」


妹は不思議そうに中を見る。


中には書類が入っていた。


弁護士の名前。


慰謝料請求。


養育費。


認知。


不倫の証拠。


妹の顔が固まる。


私は静かに言った。


「全部そろってるよ」


妹が顔を上げる。


「なにこれ」


私は答える。


「あなたがうちの夫と会ってた記録」


スマホの画面を見せる。


写真。

メッセージ。

ホテルの出入り。


妹の手が震える。


私は言った。


「あなたがうちの夫に近づいた日から」


少しだけ微笑む。


「全部知ってた」


妹は黙る。


私は続けた。


「あなた昔からそうだから」


静かな声で言う。


「私のもの欲しがるでしょ」


妹の顔色が変わる。


私は立ち上がった。


お腹の赤ちゃんが動く。


優しく撫でる。


そして妹を見た。


「でも今回だけは違うよ」


妹が震える声で言う。


「……なにが」


私は静かに答えた。


「あなたが壊したと思ってる家庭」


少し間を置く。


「もうとっくに終わってたから」


妹の目が見開かれる。


私は最後に言った。


「あなたがうちの夫と寝た最初の日」


静かに笑う。


「私、離婚の準備始めたの」


妹は何も言えない。


私は玄関へ向かった。


ドアの前で振り返る。


「おめでとう」


静かに言う。


「そして、ありがとう」


ドアを閉める。


外は春だった。


でも妹の人生だけが、

その瞬間から静かに崩れ始めていた。

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