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異世界で人生をやり直せますか?  作者: 赤べこ太郎
第一章 異世界転生
3/3

異世界...?

 生まれてから半年ほどが経った。


 時間の感覚は曖昧だが、それでも「半年」という区切りがつく程度には、僕の意識ははっきりとしている。

 

 僕は両親から「アル」と呼ばれている。


 ご飯の時も、あやされる時も、その名前で呼ばれる。

 他に名前らしい呼び方をされたことがないから、多分これが僕の名前なのだろう。


 アル。


 短く、呼びやすく、響きがいい。悪くない。

 

 半年も経つと、少しずつだがこの言語を理解出来るようになってきた。

 最初は意味が分からない男の連なりにしか聞こえなかった言葉も、今ではかなり聞き取れるようになった。


 親が頻繁に本の読み聞かせをしてくれたおかげだろうか。

 内容はまだ完全に理解出来ないが、言葉の響きや抑揚(よくよう)から、感情や状況くらいは読み取れるようになってきた。

 怒っているのか、笑っているのか、悩んでいるのか。

 それが分かるだけでも、世界は随分と鮮明になる。


 それと、この地域に「紙おむつ」という物は普及していないらしい。

 だから、布をふんどしのように巻いて、オムツ代わりに使っていた。

 何度も使える点では合理的かもしれないが、正直履き心地はあまり良くなかった。

 濡れたままになることも多く、不快感を覚えることもしばしばあった。

 前世の記憶があるせいで、どうしても比較してしまうのだ。


 他にも、家の中を自由に移動出来るようになった。

 はいはいではあるが、自分の意思で行きたい場所へ行けるというのは、思った以上に大きな進歩だった。


 扉の向こう。

 窓の外の景色。

 気になった所へ行ける自由。

 それだけで世界はかなり広がった。


 まず、この家は少なくとも2階まである。

 そしてかなり大きい。

 書庫や、30人は座れそうな大きな食事部屋。

 他にも南京錠で閉じられた謎の部屋などがあった。

 小さなお屋敷みたいな感じだ。

 さらに、メイドも2人雇っていた。

 きっと裕福なのだろう。


 窓から見た景色だと、周囲に何軒も家があり、一つの集落のようになっていた。  

 レンガや木で出来た家々、煙突から立ち上る白い煙、人影もちらちらと見えた。

 

 そして、さらにその向こうに、壁のような巨大な構造物が見えた。

 距離のせいで詳細は分からないが、明らかに自然のものではなかった。


 家の中を観察しているうちに、不思議な点をいくつか見つけた。

 この家には電気製品が一つも無かった。

 以前から部屋の明かりが蝋燭(ろうそく)であることに違和感があったが、まさか本当に何も無いとは思わなかった。

 

 もしかして親は、電気製品からは変な電波が出ているみたいな考えを信じる人なのだろうか。

 それとも、転生と同時にタイムスリップまでもしてしまったのだろうか。

 そんな突拍子のない疑問が、頭の中をぐるぐると巡っていた。

 

 だが、その疑問はすぐに解決することになる。


 ーーー二日後ーーー


 僕は父親に抱きかかえられながら庭に出た。

 外の空気は少しひんやりとしていたが、日差しは暖かかった。

 

 庭では母親が畑に手をかざしてながら、何かを唱えていた。

 「蒼の流れ、千の滴へと分かれ、等しく降り注げ

 スプリンク・ワォーター」

 最初は、本当に変な人だったのかと思っていた。

 意味不明な言葉を唱え、畑に手を伸ばす姿は、少なくとも前世の常識では理解しがたい。


 しかし、呟き終わった瞬間。手が淡く光り、その光から水が出てきた。

 空から降るのではない、

 確かに母親の手から水が湧き出してきた。

 

 驚いた。

 言葉を失う。開いた口が塞がらないというのは、この状態のことを言うのだろうか。


 前々から何かがおかしいとは感じていた。

 家の明かりが蝋燭(ろうそく)だったこと。

 家に電気製品が何も無かったこと。

 それらが、ここが異世界だと考えたら、すべて納得がいく。

 魔法が存在している。

 文明の形が違う。

 ここまで来たら、言わなくても分かるだろう。

 どうやら僕は、異世界に転生してしまったらしい。


 何処に転生するのか、きちんと女神に聞かなかった僕も悪い。

 だが、こういう大切は事は基本的に向こうが話してくれると思っていた。

 ......どうやらその考えは間違っていたらしい。

 

 けれど。

 異世界での生活。異世界での冒険。

 僕は今胸を高鳴らせている。

 恐怖や戸惑いよりも好奇心が勝っている。

 

 異世界での生活。

 異世界での冒険。

 魔法という未知の力。

 これを想像してみるだけでワクワクが止まらない。

 これも悪くないと思っている自分がいる。

 むしろ、最高かもしれない。


 前世に囚われる必要は無くなったのだ。

 自由に気ままにいきる。

 やり直しの人生。

 この日から、真の新しい人生が始まった。

  



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