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異世界で人生をやり直せますか?  作者: 赤べこ太郎
第一章 異世界転生
2/2

転生

 暗い。

 何処までも暗い。

 

 光という概念が存在していないかのように。

 

 上下も前後も分からない。

 ただ、自分が“存在している”という意識的な感覚だけがあった。


 「ああ......そうだ」

 声に出したつもりだが、本当に声が出ていたのかは分からない。

 「僕、死んだんだな....」

 

 不思議な事に恐怖はあまりなかった。後悔がないといえば嘘だが、今になっては関係ない。


 今思うと呆気ない最後だった。

 2年間同じような日々を過ごし、次の瞬間には終わり。2年間闘病した末これか...

 悲しいが不思議と涙も出ない。

 

 ここはどこだ?

 ここは天国なのか?それとも地獄なのだろうか。


 そう考えてから、僕は自分の体を確かめた。

 見えないが、手を動かしている感覚がある。

 足も動く。

 地面の感触を感じないが、歩く事も出来た。

 

 けど、そこには付いてるはずのモノが無かった。

 どうやら男としての機能を失ったらしい。

 死んだから関係ないか...

 今は周囲に何かあるか探してみよう。

 

 30分程歩いただろうか。

 結論から言う。“何もなかった”

 けど、この空間については少し分かった。

 探索中に、何度か走ってみたりしたが、疲れや、息切れ、汗をかく等の概念は無いらしい。


 ---- 一時間後 -----

 

 “何も見つからなかった”それに今何処を歩いているのか分からないし、ここにずっと居るのは精神的にも辛い。

 

 「迷える仔羊よ」

 

 誰かの声が聞こえた。

 どうやらこの探索は無駄ではなかったらしい。


 次の瞬間、この暗闇が薄れていく。

 ゆっくりと、朝霧が晴れるかのように周囲が明るくなった。

 

 透き通るような金色の髪の毛を持っている、人の姿をした“何か”がそこにはいた。

 

 女神にも見えるし、そうでもないようにもみえる。

 白を基調とした白い衣を纏い背中からは淡い光が溢れている。


 「初めまして」

 “何か”が穏やかな声で僕に話しかけた。

 「あんたは.....誰だ?」

 自然と警戒した声が出た。この状況で疑問を持たないほど僕はお人好しではない。


 「誰と言われましても....」

 少し困ったように首を傾げる。その一つ一つの仕草には、人間に近いものを感じた。

 「強いて言うなら、神、女神というものでしょうか。」

 

 神。

 あまりの突拍子のない言葉に思考が追いつかない。

 死んだと思ったら真っ暗な空間に放り出された挙げ句、神を名乗る存在が出てきた。

 頭がパンクしそうだ。


 「あまり、警戒しないで欲しいです。」

 女神は苦笑しながら、僕の前に椅子とテーブルを出現させる。

 

「少し景色を変えますね」

 椅子に座った女神が僕に言う。

 その瞬間景色が草原に変わった。心地良い風が頬を掠める。

 「取り敢えずおかけ下さい。」

 どうやら気遣いはそれなりにしてくれるらしい。


 「突然ですが貴方は死にました。」

 「知ってます」

 女神は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに元の顔に戻った。

 「どうやら貴方の魂はこの空間に迷い込んでしまったみたいなのです。」

 「どうして迷い込んでしまったのですか?」

 「私にも詳しくは分かりません。」

 「じゃあ、僕はこの後どうなるんですか?」

 素朴な疑問だった。

 天国行きなのか、地獄行きなのか、それとも消滅するのか。

 「それが、ですね...」

 女神は言葉に詰まる。

 「すみません。それも分かりません。」

 「そうですか」

 少し拍子抜けした。

 女神は全て知っていると思っていたから。

 沈黙が続く。

 

 ーーー鼻をすする音ーーー

 ふと女神の方を見てみると、彼女は俯いていた。

 耳は赤く染まり、肩の辺りが小さく震えている。

 ぽたり、と

 机の上に透明な涙が落ちた。

 「可哀想に」

 彼女は泣いていた。

 「病気で苦しんで....それでも、何も報われないで終わるなんて....」

 神様が泣くという光景に、僕は言葉が出なかった。


 「....そんな顔をしないで下さい。」

 女神は涙を拭い、微笑んだ。

 その笑顔は、何処か無理をしている用にも見えた。 

 その姿は美しく、尊くも見えた。


 「切角のご縁です。」

 女神ははっきりと言う。

 「貴方にやり直しの機会を与えましょう。」

 「....やり直し?」

 彼女は頷く。

 「転生という形になりますが。」

 転生?アニメとかでしか聞かない単語だ。

 「人間として....転生出来るのですか?」

 恐る恐る聞く。

 

 「はい、仰る通りです。」

 胸の奥で何が揺れた。

 もう一度生きられる?


 「転生したらどうなりますか?」

 「貴方なら普通に生きることが出来ると思いますよ。」

 「そうですか...」

 少し考える

 「貴方の望むように生きて下さい。」

 その言葉はとても優しかった。


 「分かりました。後は頼みます。」

 迷いはなかった。

 失うものはもう無い。


 「いきなり危険な場所に転生しないですよね?」

 女神はキョトンとした顔をした。

 「大丈夫です。赤ん坊から親の愛情を受けて育てられます。」

 「それと何か希望はありますか?2つまでなら叶えられますよ。」


 希望...か、

 「では、病気に掛からない丈夫な体をください。」

 即答だった。

 「承知いたしました。あともう一つはどうしますか?」 

 女神は微笑みながら聞く

 「とって置いてもいいですか?」

 「.....分かりました。」

 女神は少し迷っていたが承諾してくれた。

 「それと、貴方に特別な力も授けましょう。」

 「....特別な力?」

 「何か困った事があった時は、こう唱えて下さい“神よ、我に再び立ち上がる力を“と」

 「何か起こるんですか?」

 「秘密です。」

 何か裏があるような笑みにも見えたが気にする必要はないだろう。

 「では、行ってらっしゃいませ。」

 女神は手を振って僕を送り出してくれた。

 「本当に色々と、ありがとうございました。」

 僕は礼をしながらお礼を言う。

 

 次の瞬間、目の前がピカッと光り、体が上下に引っ張られるような感覚。段々と意識が遠くなっていく。

 



 どのくらい眠っていたのだろうか。

 目を開けようとするが、瞼が重い。

 ようやく視界が開けたと思うと、ぼんやり男女の陰が見えた。

 男の方は茶髪。母親の方は暗めの金髪みたいな感じだ。

 ヨーロッパかアメリカの方だろうか。

 

 「・ー・ーー・」

 「ー・・・・ー・」

 「ー・ーーー・・」

 何処の言語だ?何て言ってるのか分からない。

 

 「……?」


 声を出そうとした。

 だが、喉から出てきたのは

 「あ……うぁ……」

 情けない音だった。

 

 ふと自分の体を見てみると、手はちぎりパンみたいになっていた。そして頭が重かった。

 女神との会話を思い出す。そうだ、赤ん坊に転生したのか。って事はこの男女は俺の親ってことか。

 

 悪い人ではなさそうで一安心だ。

 

 (...やめてくれ...)

 急に男が手を伸ばしてきて俺を持ち上げた。

 「ー・ー・ー」

 男が僕に向けて下を出して変顔をしている。

 どうやらあやしているつもりらしい。


 心の中でつぶやいても、声にはならない。

 代わりに

 「...あ゛ー...」

 と間抜けな音が出た。

 父親の方はそれを見て満足そうな顔をして僕を降ろした。

 悪い人ではなさそうで一安心だ。

 頭がくらくらする。眠い。

 再び僕の意識が闇に落ちた。


 この日から、僕の新しい人生が始まった。

 


 


 


 


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