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異世界で人生をやり直せますか?  作者: 赤べこ太郎
第一章 異世界転生
1/3

プロローグ

 

 17歳の僕には一つだけ夢がある。

 それは旅をすることだ。


 遠くへ行き、知らない景色を見て、知らない人と出会う。

 理由は特にない、ただそうしたかった。


 けれど、悲しいことに。

 その夢は叶いそうにない。


 僕は今、病院のベッドの上にいる。

 病名はガン。

 正確には白血病だ。

 

 医師からはあまり良い話は聞けなかった。

 治る可能性はかなり前低いらしい。


 抗がん剤治療のせいで髪はほとんど抜け落ちた。始めの方は鏡を見る度、自分が別人のように変わっていた。

 頬は痩せこけ、腕や足はゴボウのように細くなっている。


 この病気が見つかったのは、高校入学前の検査だった。

 その日から僕の生活は一変した。学校には通えなくなり、ずっと病院で過ごす日々。

 

 病室で出来ることは限られてる。

 だいたいは寝ているが、体調がいい日はアニメを見たり、勉強したりしている。

 逆に言えば、それ位しか出来ることはない。


 でも、勉強に関しては、それなりに自信があった。

だから学校に行かなくても、きっと大丈夫だと、どこかで思っていた。


 .....今思えば、強がりだったのかもしれない。


 もともと僕は、小さい頃から体が丈夫な訳ではなかった。

 よく風邪を引いて、すぐに寝込む子だった。

 この体質が、病気が治りにくくなる事に少なからず影響があるらしい。

 

 それを知った両親は酷く落ち込んでいた。

 「丈夫な子に生めなくてごめんね」

 「辛いけど頑張ってね」


 僕が苦しそうにしている時、

 両親は何度も、何度も、そう言った。


 謝られるたびに、胸が締めつけられた。

 謝るのは、両親じゃない。

 悪いのは誰でもない。

 分かっているのに.....


 それでも、僕は辛くなって、

 つい両親にきつい言葉をぶつけてしまった。

 

 両親は悲しそうな顔をしていた。


 ---話は変わるが今日は僕の17歳の誕生日だ。


 去年は両親が来て、僕にプレゼントをくれた。

 けど、今年は何もいらない。

 ただ両親にきつく当たったことを謝りたい。

 それだけで良かった。

 

 けれど。

 いくら待っても、両親は来なかった。


 時計を何度も見た。

 廊下の音に何度も顔を見上げた。


 看護師さんにも聞いてみたりしたが、どうやら分からないらしい。

 少しだけ寂しかった。

 でも仕方ない。


 そろそろ寝よう。


 僕は、去年の誕生日の思い出しながら。

 両親への申し訳なさを胸に抱えたまま。

 僕は、ゆっくりと目を閉じた。


 ---その時だった、

 

 突然、頭を刺すような痛みが走った。

 想像を絶するほどの胸の動悸や苦しさが寝ていた僕を襲う。

 息が出来ない。


 苦しい。

 苦しい。

 苦しい。


 僕はすぐにナースコールを押した。

 幸い、看護師さんはすぐに駆け付けてくれた。

 周囲が一気に騒がしくなる。


 「意識が朦朧としています」

 「聞こえますか?」

 しっかりと聞こえている。

 聞こえているのに声が出ない。


 そして、さっきからガタガタとベッドが揺れている。どこかに運ばれてるのだろう。


 視界が段々とぼやけていく。


 (....もうだめだ。死ぬ...)


 最悪の考えだけが僕の頭を(よぎ)っている。

 

 死にたくない

 死にたくない

 死にたくない


 まだ両親に謝れていないのに...

 まだ何も返せていないのに。

 死んでたまるか。


 「意識が戻りました」

 誰かが叫んだ。

 

 ---その瞬間、気が抜けた。

 僕の目の輝きが消える。


 やっぱり死ぬ時って目の前が真っ暗になるんだな。


 死に顔は笑っていただろうか。

 結局最後まで親に謝れなかった。

 ああ、夢も結局叶えられなかったな....


 僕は死んだ。

 よりによって誕生日に。

                   享年17歳

 

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