学園生活終了!?
「ごめんなさい、聞き取れなかったかしら」
「いや、そういうわけじゃ……」
今日がほぼ初対面みたいなものだよね。それで結婚!?全くもって意味がわからないんですけど!?
俺は思考がどうしても追いつかなかった。
「理解できていないようね。私がわかりやすく説明してあげる」
「お願いします」
俺は全く理解ができず新山さんの説明を聞くことにした。
「まずね、私は完璧で通してるの。それは分かるわね」
「わかります……」
「そして、あなたは私が雷を怖がる姿を見てしまった」
「はい……見ました……」
「それってつまり私のヒミツを知ってしまったってことじゃない?」
「はい……」
「それってつまり結婚しなきゃいけないじゃない!」
「え!?」
「だって、恥ずかしいヒミツを知りあえるのって結婚してからだってお父様が言っていたわ」
新山さんが興奮して言った。
俺は全く理解できない。恥ずかしいヒミツってそういう意味じゃないだろ!それにお父さん何言ってくれてんだ!
「で!私では不満?」
新山さんがさらに問い詰めてくる。
「不満っていうか……結婚なんて無理ですよ」
「そうよね……あなたのヒミツまだ私は知らないもの……だから、あなたのヒミツを教えてちょうだい!」
新山さんはめちゃくちゃポジティブだった。断ったつもりだったのに逆に元気になってるじゃん!?
「ねぇ!ねぇ!ねぇ!」
さらに新山さんは詰め寄ってくる。
俺は新山さんの圧に押されて家族以外では朝野さんと五十嵐さんだけが知っている、小、中学時代に友達がいなかったことを話した。
「友達がいなかったんですね……それってつまり童貞!?」
「えっ?」
確かに俺は童貞だけども……友達がいないことと童貞は全くもって違くないか!このお嬢様、本当に世間知らずなのでは……
「大丈夫です!私、友達がいない童貞でも愛せますよ」
「全然大丈夫じゃないんだが!?」
俺はついツッコんでしまった。出会って数十分しかたっていない相手に対してツッコんだのは生まれて初めてだった。
「まずはお互いの呼び方を決めなければなりませんね」
俺の話なんて聞く耳を持たず、どんどん話を続けた。
「私のことはぼたんと下の名前でお呼びください!私は旦那様と呼ばせていただきます」
「は!?・・・・旦那様って!?」
「だって私たち結婚するんですよ。お母様はお父様のこと旦那様と呼んでましたし」
新山さんの家族ってなんか常人とは違うのか?それともお金持ちの人たちのスキンシップってこんな感じなのか……。あーーーわからねぇーーー!!!
「新山さん、一旦整理したいから鍵を開けてほしいんだけど……」
「いやです!新山ではなくぼたんですよ旦那様」
新山さんは拗ねるように言った。普段の新山さんとは全くもって違う。
この学園で高嶺の花と呼ばれた新山ぼたんの本性は完璧超人ではなく少し人とは異なる解釈をする乙女なのだ。
俺はこのままではこの部屋から出してくれないと思い言うしかなかった。
「ぼたん」と。
俺はやっと新山さんから解放された。正直色々な意味で殺されるのかと思った。
俺はその場しのぎで「ぼたん」と言ってしまったが、その選択があやまちであったと気づくのは翌日のことであった。
♢♦︎♢♦︎
次の日の朝。
俺はいつものように登校してくると校門で1人の少女が待っていた。新山さんである。
「旦那様ーーー」
新山さんがそう言って俺に向かって走ってきた。それを聞いた人たちが一斉に俺の方を見た。その目は「誰だよお前」や「新山さんに近づくなゴミが」と語っている。俺だってこの状況を理解してねぇーよ。
新山さんは俺に向かってくると腕を俺の腕に通した。
「あの……新山さん」
「旦那様、違いますよ。私のことはぼたんと呼んでいただかなければ」
「いやでも……その……昨日初めて会ったばかりっていうか……」
「まぁ無理もありません、そうですよね……」
「わかってくれたんですか!」
「結婚式がまだでしたね」
「へっ?」
俺は驚きのあまり変な声が出た。新山さんは1人でにさらに話を続けた。
「結婚式の会場はどこがいいですか?ハワイ?それともグアム?あげたい場所がいっぱいありますわ」
「あの……結婚するって決めたわけじゃ……」
「しますわよ!だってお互いの大事なヒミツを知りあってしまったんだもの」
「はい……」
俺はもう新山さんのすごい圧に肯定するしかなかった。
それにしても恥ずかしいのだが、めちゃくちゃ見られてる。そりゃあ学園のヒロインである、新山さんがどこぞの馬の骨と手(?)を繋いでいるんだぞ。殺意のこもった目で見られるに決まってる。
「あの……新……ぼたん、恥ずかしいから離してくれない?」
「なぜですか?恥ずかしがることありませんよ」
「いや、みんなに見られてるから……」
「確かに視線がありますね」
おーー!!新山さん、わかってくれたのか!これまでずっと話が少し通じなかったけどやっと理解してくれ……
「みなさんが、私たちの結婚を祝福してくださってるのね」
「えっ?」
いやいや、違うと思うけど!明らかに俺に向けられた殺意の目だけど!
「いや、あの……新山さん……絶対に違うと思い……」
俺がそう言いかけたとき後ろから誰かにぶつかってこられた。
「ねぇーー、誰か知らないけどぼたんに近づかないでほしいんだけど」
「つばき」
俺はこの名前を知っている。高瀬つばき。彼女もまた『玉城山学園の六花女子』の1人だ。彼女は赤色の髪のツインテールに、整った顔立ちが特徴的な美少女だ。でも周りにはツンツンしているらしい。そういう性格も一定数に人気があるとか……。俺にはその良さがわからないけど……。
「あんたねぇ、ぼたんのことナンパして無理やり連れて行こうとしてたけど、私が許さないから」
「つばき……そういうことじゃなくて……」
「大丈夫よ、ぼたん。私が守ってあげるから」
「いや、無理やり連れてかれてるのは俺の方っていうか……」
俺も困ってるんだよなーーー。だってこんなのが毎日続いたら周りに絶対に殺されるよ。物理的にも精神的にもね……。
「はぁ!?!?嘘つくならもっとマシな嘘つきなさいよ!!!あなたみたいな、カッコよくもなくて、スポーツも勉強も出来なさそうなあなたにぼたんから近づくわけないじゃん!!!」
俺めちゃくちゃディスられてるんですけど……。確かに俺はカッコよくなくて、スポーツできないかもしれないけど、勉強はできるからな!!!っとツッコミたくなったが、言えるわけがなかった。
「つばき、聞いて、私たちヒミツの関係なの。だからもう結婚するって決まったのよ」
「待ってください新山さん……」
その変な言い方絶対俺が終わるでしょ。ヒミツな関係ってもう変な解釈しかされないじゃん。終わった……。あーーー俺の学園生活今日で終わりかーー。
楽しかったことといえば……。友達が初めてできて……。
(俺は朝野さんにいじられたこと、五十嵐さんとのショッピング、海風さんとのデート、そして新山さんが壁ドンしてきたシーンを思い出す)
えっ!?これが俺の学園生活。思ってた学園生活と全然違うんだけど……。
もっとみんなでカラオケとか行ったり、コンビニでアイスを買って「お前当たった?」「うわー外れたわ」みたいな何気ない会話で笑えるのが、青春じゃないのか!?
「はぁ!?あんた、ぼたんと何をしたの?」
すごい形相で問い詰めてくる。
「いや、何もしてないよ……」
「色々しましたよ。ねえ、旦那様」
新山さん!?それ以上言ったら俺の体、骨も残らないって。もうやめてくれーーー!!!
「旦那様ーーー!!??」
俺、鎌ヶ谷悠人の短い学園生活は今日で終わります……。




