私とデートしない?
海風家。
あの子めちゃくちゃいい子だったなー。ひまちゃんが好きになるわけだ。本人には自覚がないみたいだけど……。
それにしてもさっきの「かわいい」って何?びっくりしちゃって聞いてないふりしちゃったけど。・・・・あんなこと初めて言われたなー。
「お姉ちゃん、なんで顔赤いの?」
渡が聞いた。今、私の顔赤いの?なんだろうこの気持ち。恥ずかしくて鏡なんて見れないよ……。
♢♦︎♢♦︎
海風家から自宅まで帰る頃にはすっかりと遅くなっていた。
「おにぃー、今度こそ不良になったの?」
「なってねぇよ」
「じゃあなんで今日も夜遅くに帰ってくるの」
「なんでって……」
「おにぃーの友達、ひまねぇーともう1人の女の子しかいないじゃん。えっ!もしかしてもう1人の女の子とデートとかしたってこと?」
琴羽が興奮しながら俺に聞いてきた。
「ちげぇよ」
「えっ?じゃあなになにほんとに不良じゃん」
琴羽は煽るように言った。
「海風さんの家でご飯食べてた」
「海風さん?誰それ?」
「友達?学校が同じ人?」
「なんで疑問形なのよ!」
琴羽にツッコまれた。普段は俺がツッコんでいるのに……。正直、俺だってなんて説明したらいいかわからなかった。俺と海風さんの関係ってどういう関係なんだ?マジでわからねぇー。
「で?どんな人なの?」
「すごい料理が上手で、面倒見が良くて、優しい人かな」
「ねぇおにぃーもしかして女の子?」
「うん……。一応……」
「はぁ?おにぃーにはひまねぇーっていう素敵なお嫁さんがいるじゃん。それなのに女の子の家に行ってご飯を食べた!?琴は悲しいよ。おにぃーがそんなふうになっちゃったのが……」
「朝野さんは俺の嫁じゃねぇ!それにそんなふうってどんなふうだよ!」
俺はついツッコんでしまった。朝野さんが俺のことをそういう目で見てるわけないだろ!だって俺のことめちゃくちゃいじってくるし、都合のいい友達程度にしか思ってないだろ……。
「えーなんで?おにぃーとひまねぇーはお似合いだと思うけど……」
「俺なんかと朝野さんがお似合いなわけないだろ。からかうなよ」
俺は朝野さんと出会って少しは成長できて、今では朝野さんは友達だと自信を持って言える。だけど朝野さんは俺のことどう思ってるのかな?
♢♦︎♢♦︎
「鎌っち、おはよう」
「鎌ヶ谷君、おはよう……」
「おはよう」
週末が明けまた1週間が始まった。
♢♦︎♢♦︎
午前中の授業が終わり、昼休みになった。
「鎌っちご飯一緒に食べよ!」
朝野さんがいつもと同じように昼食に誘ってくれた。今日も朝野さんとご飯を食べようとすると、ドアから海風さんが入ってきた。
「やっほー」
「えー、鈴っちなんでここにいるの?」
「鈴花ちゃん、久しぶり……」
「すみちゃん、久しぶり!・・・・今日は悠人くんに用があるの」
「えっ?俺に」
「えっ?鎌っちと鈴っち知り合いだったんだ」
「うん。渡を助けてくれて」
「そうなんだ。鎌っちってそういうとこ優しいからね」
俺はそう言われて少し照れ臭くなった。やっぱり褒められるのってなれないな……。
「そうそう。ちょっと今日放課後、私とデートしない?」
「えーーーーー」
「もしかして鎌っちと鈴っち付き合ってるの?」
「ヒ・ミ・ツ」
海風さんはほんとうのことを言わなかった。俺たち付き合ってるわけじゃないのに……。
♢♦︎♢♦︎
放課後になると海風さんは正門の前で俺を待っていた。正門の横を通る人は海風さんをチラチラ見ている。海風さんってほんとうにきれいな人だよな……。なんで俺なんかとデートなんて……。
「あ!悠人くん」
海風さんは俺を見つけるやいなや大きな声で俺のことを呼んだ。周りにいた人たちはあいつ誰だと言わんばかりの目をしている。
「こんばんわです」
「ふふふ、こんばんわですって何?やっぱ悠人くんって面白い」
「そうですか?」
「うん。今日はね、買い物に付き合って欲しいの」
そう言って俺たちは荒川ショッピングモールに向かった。
それを追いかける二つの影がある。
「こちら偵察部隊A、偵察部隊B応答してください」
「何してるのひまわりちゃん、それにその服装」
ひまわりは黒いサングラスに黒スーツで電柱の横に隠れていた。すみれはひまわりに付き合わされたのか渋々着いてきたようだ。
「えー、すみっちノリ悪いよ。偵察するんでしょ!形から入らないと形から」
「着いて行くなんて良くないよ……」
「だってー明らかにあの2人何かあるよ」
「鎌ヶ谷君だって男の子だよ。1つくらいなんかあっても良いと思うけど……」
「ヤダヤダヤダ。私は鎌っちの友達だよ。全部知りたいの!」
ひまわりは駄々を捏ねていた。そしてすみれはそれを見て確信した。やっぱりひまわりちゃんは鎌ヶ谷君が好きなんだということを。
ショッピングモールに着くと俺と海風さんは洋服店に向かった。
「悠人くんはどんな服が私に似合うと思う?」
「なんでも似合うと思うよ」
「あーー、それブッブーだよ。女の子はちゃんと真剣に考えて欲しいの。だから私は君が似合うと思う服を教えてほしいな」
そう言われたので俺はつい
「白っぽいロングスカート」
と答えてしまった。
すると海風さんは白のロングスカートを持ってきて試着室に入った。
「見ちゃだめだからね」
見れるわけないじゃん。俺は一生徒だぞ。学園のヒロインである海風さんの着替え姿なんて見た暁には学校の男子全員が家に押しかけて、服を脱がされて「俺は海風さんの生着替えを見たクズです」っていう紙を背中に貼られて校内を歩かされるんだ。そんなこと絶対にしたくない。
「鎌っち、絶対今、変な妄想してるよね?」
「うん。あの顔はいつも変な妄想しているときにしかしません……」
「だよね。鎌っちのこと理解しているのは私たちだけだよね」
「そうだね……」
朝野さんと五十嵐さんがこそこそしているのが聞こえた。えっ?何その変装?であったり、なんでいるの?であったりなど聞きたいことはたくさんあるが今は気づかないふりをしておこう。
「悠人くん、お待たせ」
海風さんが試着を終えて、出てきた。やっぱさっき言った通りだけどなんでも似合うな。初めて会ったときといい、この人に似合わない服はないんじゃないかと思ってしまった。
「どう?かわいい?」
「はい。似合ってます」
「えーー、私はかわいいって言ってほしいな」
「かわいい……です」
「ふふふ、悠人くん照れてるかわいい」
「からかったんですか?」
「そんなことないよ」
海風さんは俺の頬を軽く人差し指で触った。
それを見ていたひまわりとすみれは
「ねぇー、すみっちー、鎌っちがイチャイチャしてるよ」
「鎌ヶ谷君……鈴花ちゃんみたいな人がタイプなのかな……」
「もう許せない。私の鎌っちが鈴っちに取られちゃうのはイヤ」
ひまわりが悠人と鈴花の前に出ようとしていたが、それをすみれが止めた。
「だめだよ。つけていたってバレちゃう」
「でも……鎌っちが取られちゃうよー」
「それは……私もイヤ……だけど、相手は鈴花ちゃんだよ。そんなことしないよ。信じよ」
すみれの手は震えていた。それがひまわりに伝わったのか
「そうだよね。鈴っちのことは小さい頃から知ってるし、すみっちがそう言うなら信じるようにする」
「うん。私も信じてるから……」
2人はこそこそとしているつもりだったけど俺は気づいてるんだよな。海風さんは気づいていないみたいだけど。
俺が海風さんに取られたら困るんだろうか?もしかして2人は俺のこと……。ないないない、からかう相手がいなくなるのがイヤなだけだよな。
「じゃあこれ買おうかな。悠人くんが選んでくれたし」
「似合ってますもんね」
俺たちは服を買った後洋服店を出た。
その後鈴花がぼそっと呟いた。
「好きだよ。10年前からずっと」
「えっ?」
「ごめん。なんでもない」
俺は聞き取れなくて聞き返した。だって「好きだよ」なんて俺の聞き間違いに決まってるし……。




