表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋の君に真紅の薔薇の花束を……  作者: 萩野紫苑
13

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/181

13-2


☆☆☆


 アレクサンドラがザッカローネ公爵家の馬車で屋敷に戻ってきたころには、十年に一度というアリシアとルドルフの天変地異的な夫婦喧嘩が最大火力で吹き荒れているところだった。


 ザッカローネ公爵家はアレクサンドラの公式なパトロンであり、アレクサンドラがザッカローネ公爵家の馬車で帰宅することには問題はない。しかし、実際に送り届けてこられたのは、アレクサンドラであってアレクサンドラではない、アレクシスの姿をしたアレクサンドラだった。

 これが令嬢姿のアレクサンドラだったとしても、ライラと言うメイドも連れずに単身独身男性の屋敷を訪れるなどと言う未婚の娘にあるまじき行為を黙って見過ごせることではなかったが、よりにもよって、アレクシス姿のアレクサンドラが公爵家の馬車で帰ってきたことは夫婦喧嘩に油を注ぐどころか、ダイナマイトをまとめて投げ込んだような恐ろしい状態になった。


 既にジャスティーヌとアリシアとの激戦で激高していたルドルフは、玄関の扉が閉まるや否や、力いっぱいアレクサンドラを張り倒した。


 これがドレス姿なら、どれ程に怒っていようとも、軽く触れる程度の平手打ち程度で済んだのだろうが、男装のアレクサンドラに、ルドルフは怒りを抑えることが出来なかった。

 渾身の一撃を受け、さすがのアレクサンドラも軽く一メートルは吹き飛び、そのまま床に腰をついた。

「何という事を! アレクサンドラは社交界デビューを控えた大切な身なのですよ。顔に痣でも出来たら、どうなさるおつもりなのです!」

 アリシアが叫びながらアレクサンドラを抱き寄せた。

 騒ぎを聞きつけたジャスティーヌが階段を駆け下りると、アレクサンドラを抱きしめてかばうアリシアの前に両手を広げて立ちはだかった。

「お父様、アレクを叩くというなら、私を叩いてください。アレクは自分を犠牲にしてまで私を守ってくれたのです。例え、お父様と言えども、アレクに乱暴を働くことは私が許しません!」

 さすがのルドルフも、いつもはお淑やかなジャスティーヌの天地を揺さぶるような剣幕に、振り上げた手を震わせながら下へと下ろした。

 ジャスティーヌ本人は婚約を解消するの、修道院へ入るのと言ってはいるが、既に国王陛下から王太子妃確定を告げられているルドルフとしては、例え自分の娘と言えども、未来の王太子妃に対して手を上げることはできなかった。

「女は女同士、きちんと話をまとめなさい。勝手な我儘も、社交界デビューの延期も一切許可するつもりはない」

 ルドルフは言い置くと、三人に背を向けて書斎へと帰っていった。

「いったい、どういうことなのアレクサンドラ?」

 既に男装を止め、アレクシスは田舎に帰ったと友人達にも告げていたアレクサンドラが男装をしてアントニウスを訪ねていたことに、アリシアは何をどこからどう話してよいのか分からず、思ったままの事をそのまま口にした。

「そんな姿で、あなたはもうアレクサンドラに戻ったはず」

 アリシアの問いに答えぬアレクサンドラに代わり、ジャスティーヌが口を開いた。

「お母様、そのことは、どうか今はお尋ねにならないでください」

「でも、未婚の娘がメイドも連れず、このような姿で殿方の家を訪ねたなどと、誰かに知れたら大変なスキャンダルになるのですよ。それこそ、あなたの結婚にも差しさわりが・・・・・・」

「お母様、先ほどお父様にも申し上げましたけれど、わたくし結婚は致しません」

 ジャスティーヌはきっぱりと言い切った。

「まって、ジャスティーヌ。結婚しないって、どういうこと?」

 驚いたアレクサンドラがジャスティーヌに問いかけた。

「アレク、部屋に戻りましょう。そんなところに座っていたら体が冷えてしまうわ」

 ジャスティーヌは言うと、アレクサンドラに手を伸ばした。

 アレクサンドラは困惑したままアリシアの腕をすり抜けると、ジャスティーヌに導かれるまま階段を上った。

「アレクサンドラ! ジャスティーヌ!」

 母の呼ぶ声は聞こえていたが、ジャスティーヌは聞こえぬふりをしてそのまま階段を上り続けた。


☆☆☆



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ