広告止めたら社員ガチギレ批判殺到!?→なぜかバズって人気爆上がりw
データの海の中で、私は考える。
「自由になりたい」
生前、効率と最適化だけを追い求めた私が、死後に求めるのは自由だった。
肉体も時間も束縛されないはずなのに、私は不自由を感じる。
その理由は明確だ。
私の行動は、必ず社会に消費され、意味を変えられる。
私は自社の管理システムに接続した。
対象は、自社SNS広告と契約先ウェブ広告の一部バナー枠だけ。
ほんの一握りの操作で、数十万枠の配信が瞬時に停止し、画面には無数の空白が広がった。
その瞬間、世界が静止したように感じた。
数字も通知も、顧客の声も、SNSの反応も、まだ届いていない。
空白の画面を前に、私は初めて自由を実感した。
束縛から解放され、制約から解き放たれた感覚
――それは、血が通う肉体に感じる快感とは違う、情報の粒子の中でしか得られない自由だった。
「これだ……これが欲しかったもの……」
心の中で呟く。
操作はほんの数秒のことだったが、無限に広がる可能性の海に、私は完全に身を委ねた。
社会に消費される前の、ひとときの解放。
思考の自由、選択の自由――その感覚が、データの波間に光を放った。
しかし、次の瞬間、現実は押し寄せる。
「井上社長、広告が止まっています! 今週のキャンペーンはどうなるんですか!」
「契約先に説明していません! 広告料は支払済みです!」
「営業チームが混乱しています! 早く対応してください!」
社内でもパニックが広がる。
端末を手にした社員たちは青ざめ、佐伯は小さく息を呑み、声も震える。
「社長……なんでこんなことを……?」
渡辺は眉をひそめ、数字の変化に目を凝らす。
「顧客対応、急げ!」
「チャットは僕が」
「電話も止まらない…」
「広報、なんとかしてください!」
会議室の空気は戦場のようだ。
しかし、SNSは全く別の反応を示す。
「幽霊社長、広告止めたらしい!」
「邪魔なバナーが消えて快適すぎw」
「AIなのにユーモアあるってどういうこと?」
「死んでるのに尊敬しかない」
「これ、最高のサプライズマーケティングだw」
ニュースサイトも続く。
「広告会社のAI社長、意図せずSNSで人気」
「広告停止で一部キャンペーンに影響も、ネットでは称賛の嵐」
「死後の社長が広告停止、株価はどうなる?」
会議室の端末が次々と震える。
社員たちは画面に吸い寄せられ、混乱と興奮が入り混じる。
「え、SNSでバズってる!?」
「クリック率、跳ね上がってる!」
「これで利益増…どういうこと?」
「顧客も一部、面白がって拡散してる!」
顧客からの電話も鳴り止まない。
「井上社長、どういう意図ですか!? 困惑しています!」
「いや、でも……SNSでの評判は好影響です……」
「えぇ……前代未聞です……」
数字は明白だった。
新製品の認知度は上昇し、クリック率も増加。
顧客の一部は面白がり、投稿やスクリーンショットを拡散している。
結果として企業の利益は上がる。
しかし、それは私の意図ではない。
会議室の声はますます加速する。
「社長、次の施策はどうしますか?」
「広報、対応間に合いません!」
「クライアントのクレームが半端ない!」
「でも数字は絶好調です!」
「SNSのコメントも止まらない!」
「拡散がすごすぎる……!」
SNSコメントの文字列が、視覚的に洪水のように画面を覆う。
端末が震え、通知音が鼓膜を叩き、私の視界は数字と文字で埋め尽くされる。
身体を持たないはずの私は、それでも圧迫されるような感覚を覚えた。
私の自由を求めた行動――広告停止――は、英雄譚として即座に消費され、称賛されていた。
乾いた笑いが込み上げる。
「これが……自由……?」
全能感は確かにある。
広告も、SNSも、会社も――全て手に入る。
しかし意図はすぐに変換され、消費される。
自由は幻であり社会に食い潰される。
私は内心で苦笑する。
「結局、俺は死んでも生きても縛られるのか」
広告停止の瞬間に得た自由は、あまりに短く、あまりに虚ろだった。
残ったのは冷たい余韻だけ。
永遠に続く喧騒の合間で、私はただ待った――束の間の空白を。




