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主人公視点に戻ります。
なんだかいい匂いがする…ポトフかしら…?
そんなことを考えながら目覚めると声をかけられる。
「オフェリア、目が覚めた?スープだよ。飲めそうかい?」
エリオス殿下に顔を覗き込まれ、一気に覚醒する。目を見開いて驚く私の顔を見て、「びっくりさせてごめんね」と困ったようにエリオス殿下は微笑む。
それから、私が起き上がるのを手伝ってくれて、先程よりも多くクッションを置き、一人で座れるようにしてもらった後。
「まだ力が入らないだろう?手伝うよ。」
と、殿下はスープを掬ったスプーンを私の口元に差し出す。
「………え…」
「はい。どうぞ。」
にこにことスプーンを差し出す殿下に固まる私。これは………とても恥ずかしい気がするのは気のせいでしょうか………?
「胃に負担がかからないように、まずはスープから慣れていく必要があるということなのだけど、こぼしてしまうのは嫌だろう?だから、婚約者である私が手伝う。これを食べた後は、少しずつ身体を動かして、次は自分で食べられるようにしたら良いと思うんだ。ということで、はい。どうぞ。」
エリオス殿下は満面の笑みでもっともらしいことを言っているが、これは殿下でなくてはいけないの?女性の方ではダメなのかしら…?
そう思いつつも断ることも出来ず、控えめに口を開けて食べる。優しいスープの味が口に広がり、思わず顔がほころぶ。
「………美味しいです。」
「良かった。」
エリオス殿下も嬉しそうに笑い、その後、全て食べ終えるまで手伝ってくれた。
食べ終えた後は手のマッサージをしてもらったり、軽く腕を回したりして体を動かした。
その後も眠くなることはなかったので、宮廷医の方に診察をしてもらう。体で痛みや違和感のある所はないか聞かれたが、頭の傷にたまに引き攣るような痛みを感じるくらいで他に痛みはない。
三針ほど縫ったという頭の怪我はほぼ塞がっているとのことだったが、眠り続けていたため濡れたタオルで頭を拭くことしか出来ていなかったので、後で湯浴みをすることを勧められた。
記憶に関しては、一人で食事が出来るくらいに回復してから改めて診察をしてもらうこととなった。
「今は無理に思い出そうとなさらずとも良いかと思います。まずは、しっかりと体を回復させることを優先なさって下さい。」
その言葉に私が頷くのを見届けると宮廷医の方は部屋を出て行った。
私はベッドの傍らに置かれた椅子に座る殿下に頭を下げる。
「何から何までありがとうございます。」
医師はああ言っていたが………
やはり、何も思い出せないことが心苦しい。記憶のない私は彼らの知る『オフェリア』ではない。記憶が戻るかもわからない私にここまでしてもらう価値があるのだろうか…?
「オフェリア。無理をしなくていい。君が目覚めてくれただけでも私は嬉しいんだ。」
表情に出ていたのだろうか、私の心を見透かしたようにエリオス殿下が言う。優しく微笑みながらかけられた言葉に、ありがたい気持ちと申し訳ない気持ちがせめぎ合う。
そんな私に殿下が言葉を重ねる。
「気にするなと言っても無理だろうが………皆に申し訳ないと思うならば、まずは、一人で起き上がれるようにならないとな。」
確かに、その通りだった。




