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前の話の最後、少し変更しています。変更前の話終わりからだと話が繋がらないかもしれません。申し訳ありません。
三人称語りです。
学園の廊下に女子生徒の悲鳴が響き渡った。驚いた生徒達が悲鳴の聞こえた場所へ向かうと、階段の下に倒れているカリスタがいた。
そして、その階段の上にいたのは倒れたカリスタを見下ろすオフェリアだった。
その場に駆け付けたエリオスは、倒れたカリスタの無事を確認しに行く。
「カリスタ嬢。大丈夫か?」
エリオスに声をかけられると、カリスタはヨロヨロと上体を起こす。足を痛めたのか、一瞬顔をしかめてから左足首を押さえるカリスタ。
「足首を痛めたようです…階段の上から誰かに押されて…」
そう言いながら階段の上を見たカリスタ。オフェリアは彼女と目が合うと笑い出す。
「ふふっ…嫌だ。階段を転げ落ちるなんて、どんな歩き方をしていたのかしら?床に這いつくばって無様だこと。」
さも面白いことの様に笑うオフェリアにエリオスは愕然とする。
「オフェリア…?何を笑っているんだ…?カリスタ嬢が怪我をしたというのに…」
「オフェリア様が…私を突き落としたのですか…?」
カリスタの問いにオフェリアは答える。
「さあ?どうかしら?私にはそんな覚えはないけれど。」
目を見開き芝居がかった口調で驚いてみせるオフェリア。そんな彼女をカリスタは責め立てる。
「あなた以外の誰もそこにいないじゃないですか!人を突き落としておいて嘲笑うだなんて…酷すぎる…まるで悪魔だわ!」
「あら?悪女の次は悪魔?」
「大勢の男性を誑かしたり、人に危害を加えたり…悪女や悪魔でなくてなんだと言うのですか!」
カリスタは更にオフェリアを非難する。オフェリアは投げ付けられる言葉を明確に否定せず、肯定もせず、ただ笑っている。
「オフェリア。何故その様な言い方をするのだ?何故きちんと否定しない?」
信じられないものを見る様な表情でエリオスはオフェリアに問う。何故オフェリアは否定しないのか?…出来ないのか?疑念がエリオスの脳裏を掠める。そんなエリオスの胸中を知ってか知らずか、オフェリアはにっこりと笑いながら答える。
「殿下。人は物事を見たいように見るものですし、見たいものしか見ることが出来ません。ロゼレーヌ伯爵令嬢や皆様にはそう見えているのであれば、それが彼女達の真実です。私の言葉など無意味でしょう。」
オフェリアの言葉を聞き、カリスタはエリオスに訴えかける。
「エリオス様!お聞きになったでしょう?噂は真実なのです!あの方は傲慢で、他者を虐げ、男遊びに興じ、周りを不幸にする!いつだって自分の事しか考えていないのです!弱者を虫けらの様に思っているから、今も嗤っているんだわ!」
ひどい、と嘆いてみせるカリスタを集まった生徒の誰もが同情的な目で見ている。カリスタは更に捲し立てる。
「身分の低い者を見下すあなたの様な方が王子の婚約者だなんて許されるはずがないわ!あなたはエリオス様に相応しくない!」
その言葉にオフェリアはくすくすと笑う。
「貴女なら相応しいと言うのかしら?ロゼレーヌ伯爵令嬢。確かに貴女はエリオス殿下と仲がよろしいですものね。」
オフェリアはカリスタにそう言うと、今度はエリオスに目線を移す。
「王家からのお話があればエリオス殿下との婚約の破棄でも解消でも、こちらはいつでも応じますわ。」
嫣然と微笑むオフェリアを茫然と見つめるエリオスが絞り出せたのは一言。
「それが…君の望みか…?」
そのエリオスの問いに答えることなく、オフェリアは優雅に礼をしてその場を立ち去る。エリオスは動けなかった。
その後、カリスタはクレオンに医務室に運ばれた。かすり傷をいくつか負い、足首を捻っていた様だが数日後には足を引きずることもなく一人で歩けていた。
「あれだけの人間の前で婚約について言及するとは…オフェリアは本当にとち狂ったのか?」
執務室で仕事に身の入らないエリオスを視界に入れながらテオドールは憤る。
「あれだけの人の前で伯爵令嬢に侮辱されてかばってもらえなかったら、殿下に愛想を尽かしても仕方ないんじゃない?」
ルカーノが溜め息を吐きながらエリオスを見る。エリオスはうなだれ動かない。
「…オフェリア様のあの言い方では、カリスタ嬢が次の婚約者になることをエリオス様も望んでいる様に周りの者に思われてしまいます。」
クレオンが眉を寄せて呟く。
「これではカリスタ嬢達の思うつぼだな…」
側近三人は頭を抱えた。
エリオスはオフェリアとの仲をどうすることも出来ないまま、あの舞踏会の日になっていた。エリオスはオフェリアにドレスを贈り、舞踏会で会って、オフェリアとの婚約を解消することなどないと改めて伝える予定だった。
そこへ、オフェリアが階段から落ちて怪我をしたと伝えられた。




