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三人称まだ続きます。
エリオスは自身の執務室でオフェリアの言動を思い返していた。彼女は高慢な態度を良しとする様な人間性ではなかった。エリオスの記憶の中の彼女は寧ろそんな態度を取る者を疎んでいたのだから。
そんなエリオスに対してテオドールは言う。
「エリオス殿下。オフェリア嬢のあの態度では王族の婚約者に相応しいと周囲の者に示すことが出来ません。どんな理由があれ、しっかりと諌めるべきです。」
「テオ…オフェリアは間違ったことは言ってはいなかったよ。脅し文句は酷いことを言っているような口振りだったが、あの様に言わせてしまったのは…彼女を傷付けたのは…私だ…」
低位の者達に付け入る隙を与えてしまったのはエリオス自身だ。彼女を蔑ろにしたつもりはないが、周りからそう見られる行動を取ってしまっていたのはエリオスの過ちだ。
そうエリオスが告げると、ルカーノが言う。
「確かに、オフェリア様を避けていた殿下の非ですね。それに、カリスタ嬢は友人と言うには距離が近過ぎます。大勢といる中と言っても彼女だけがその輪の中に必ずいるのはおかしい。オフェリア様に誤解されるのは当然です。」
「必ず?…そうなのか…気付かなかった…」
エリオスの呟きに側近三人がぎょっとして目を見張る。代表してルカーノが問う。
「まさか…話し掛けてくる令嬢の区別がついてなかったんですか…?」
「………オフェリア以外の御令嬢は皆同じに見えて見分けが…」
ごにょごにょと言葉尻を濁すエリオスに呆れるしかないとばかりにルカーノは大きく溜め息を吐く。
「興味がないにも程があるでしょう?仮にも友人と言うなら名前と顔くらい覚えて下さい…」
「…すまない…」
小さな声で謝罪するエリオスにルカーノは更に追い打ちをかける。
「学園では、オフェリア様との婚約がなくなったら、カリスタ嬢が次の婚約者ではないかと噂になっていますよ。」
エリオスはその言葉に衝撃を受ける。
「ばっ…!何をバカなことを…っ!」
「貴方が令嬢の顔も覚えず、近寄ることを咎めなかったからですよ。殿下。」
テオドールにも追撃されエリオスは撃沈するしかない。うなだれるエリオスを横目にテオドールも溜め息を吐く。
「エリオス殿下が異性関係でポンコツなのはわかっていたが、オフェリアまでがあの様な態度に出るのは解せない。もっとうまく立ち回れるはずだ。」
オフェリアならば、それだけの能力があるとわかっているだけに、テオドールはそれが許せない。エリオスを守るためならば、婚約者として周囲との軋轢を減らす努力をすべきではないのか。
「殿下の婚約者である自覚がないのか…?」
「自覚があっても…肝心の婚約者に避けられて、根拠のない悪評をたてられて平気でいられる程、強くはないと思うよ。」
普通の女の子なんだから、と続けるルカーノ。それに対して、テオドールは吐き捨てる様に言う。
「王族の婚約者である以上、強くなってもらわねば困る。」
二人の会話をエリオスはうなだれたまま聞く。
「私は…オフェリアを傷付けてばかりだな…」
「そう思うなら、ちゃんとオフェリア様と交流を持って下さい。お前はどう思う?クレオン。」
黙って聞いているだけのクレオンに話を振るルカーノ。クレオンは少し考えて口を開く。
「私は…今のオフェリア様がまるで舞台女優に見えます…」
「演技をしてるってこと?」
ルカーノが聞き返すと静かに頷き、言葉を続ける。
「わざわざ周りに聞かせるために声を張って暴言を吐いているように見えます…まるで、殿下の婚約者に自分は相応しくないと示すように…」
「そんな事はない!私はっ…!……私がオフェリアに相応しくないのだ…」
勢い良く立ち上がって反論するも尻すぼみになって、すとんと椅子に戻りうなだれるエリオス。
「では、婚約を解消しますか?」
テオドールが呟く様に言うと、顔を上げて否と答えるエリオス。
「婚約を解消したりしない!絶対に!」
「ならば、しっかりして下さい。オフェリア様を守れるのは殿下しかいないのですから。」
ルカーノの言葉にエリオスは頷くしかなかった。
それから、エリオスはカリスタ達低位貴族との交流を避け、オフェリアと交流を持とうとするも、今度は立場が逆転してオフェリアに避けられるようになった。落ち込むエリオスは、自業自得とルカーノに言われ、クレオンに励まされ、それでも何とかオフェリアと話そうとした。だが、その機会に恵まれなかった。
そして、事件が起きた。
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