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失い、繰り返す、けれども違う世界を

タイトルネーミング

うまくいって満足

前とは違い、固く寝心地の悪い椅子にせもたれているような感覚を覚え、

フリスクは目を覚ます。

そこは、大通りから少し外れた路地裏だった。

フリスクは服の汚れを払いながら立ちあがる。

前回と違う場所..

という前はラシウスが善意で家に運び込んでくれたんだった。

今回は..その好意に与かれなかったか、偶然会うことができなかったか、はたまた、目を覚ました場所が以前と異なる

その三つのどちらかだろうか。

所持品は0。しいて言うならば着ていた衣服がそのままで、ガムがたまたまぽっけに入ってたぐらい。

記憶はあるから幸い基本的な文化は理解している。

今思い返せば、さらにラシウスが家に招いてくれたことがありがたく感じる。

もし、なんの前提知識もないままオープンワールドを走り回る羽目になっていたら、

まぁ絶望的な状況といえただろうな。

フリスクは人通りのある大通りに出るが、目的といえる目的がないので、しばし足を止める。

「そうだな。とりあえずラシウスの家に行ってみるか?。」

正確な位置は覚えていないものの、うっすらとした記憶を手繰り寄せ、

ちゃくちゃくと家に近づいて行った。

.....視線が凄いな。

そうだった。

前大通りに出たときがラシウスから譲り受けた服装をしていたんだった。

あれのおかげで即人間だと思われることはまじまじと見つめられでもしない限りなかったが、

今回はあのボロボロの家に来た当時の服装のままだった。

ここの住民は人間がいたとしても、危害を加えられそうにでもならない限り、

あったとたんに切りかかるような性格の持ち主じゃない、とルシウスは言っていたが、

数々の視線は刃のようにフリスクに降り注ぐ。

その視線の中にひとつ、他とは違って殺気を含んだものがあった。

フリスクはそれには気づかず、さっきと変わらない足取りで進む。

今更だが、もし警察にでも見つかったらどうなるんだろうか。

捕虜として捕まえられるのかな。

だとしたらやばい。

フリスクは歩く速度を上げ、できるだけ通りの端を歩き到着を急ぐ。

あの非難がましい視線もあいまって、息が上がってきたころ、

ようやくラシウスの家付近まで来ることができた。

あとはこの道を曲がってしばらく。

方向を変え、歩きながら

どう話始めようかなどを考えていた時、

後ろからこちらに向かってくる物音が聞こえた。

首を曲げ振り返ると、

その時、耳に風を切るなにかの音が入った。

すでにフリスクの背後からそのなにものかはフリスクの視線と入れ替わるように移動していた。

瞬時にフリスクは反応したが、首の向きをただした時、目の前には鋭く輝き今にも頭を貫通しようとしているナイフの先端が。

紙一重、という言葉があるが、実際にそれを体現したような距離感。

しかしフリスクはやってのけた。

その紙一重といっていい距離から、上半身をのけぞらせ、

ナイフの射線から外れた。

その後も油断せず

体を無理やり動かしかがみながら相手と距離をとった。

立ち上がり、ようやく見えた相手の姿は、

赤色の傘をもち、体は橙色。

服は茶色や黒を中心とした落ち着いた服装で容姿は

最も近いものでいったらハラタケ目 テングタケ科 タマゴダケといったら

わかりやすいだろう。

...わかりやすいだろうか

いやそんなことはどうでもいい。

サイズは訳130cmほどと小さいが、目には殺意と復讐心と似た感情がこもっている。

どうする?

助けを呼ぶか?

誰に助けを求める?

これは無理だな。

あとひとつ可能性があるとしたら。

フリスクは今までの警戒態勢をとき、キノコ姿のモンスターにこう語りかけた。

「なぁ、ナイフをしまってくれないか?」

「たぶん何か勘違いしてるよ、俺が人間に見えてるのかな。」

キノコは依然としてナイフを強く握ったままだ。

続けてフリスクは言う。

「けどほら、俺はちゃんと魔法が使えるし..」

ナイフを握ったままフリスクはあの炎竜をキノコに見せる。

「だからそのナイフをしまってくれよ」

「そうすれば警察にだって通報もしないし今回の件は見..」

キノコは地面に視線を落とし、口を振るわせ、フリスクの言葉をさえぎっていった。

「よくもまぁそんなヘラヘラと」

「たかがそんな安っぽい手品で逃げようと思うなよ」

「この...殺人鬼が!」

キノコはナイフを強く握りしめ、地面をけりフリスクめがけて突っ込んだ。

あの魔法を見せ、自分が人間ではないと説得させるという手段は

‘自身が培ってきた知識から構築させた常識は絶対に崩れはしない‘という考えを持っているモンスターにしか通用しないようだった。

しかしどうする。

逃げるか?

いや、マスターは遠距離の魔法を使うことができていた。

あいつが使えないという確証はどこにもない。

動きから察するに相手は戦闘能力自体はあまり高くないようだから、

すこしだけ体力をけずるような攻撃をすれば...

フリスクは相手の攻撃に応じて、

戦闘をはじめた。

殺さない程度に。

自分めがけて突っ込んでくるナイフを素早くよけ、

相手がバランスを崩した間に左半身に力強い蹴りを食らわせる。

相手はかすかにひるんだが、武術の心得があるようで、

自身に生まれたすきをカバーするようにハイスピードで後退し、

ナイフを持ち直し、低い姿勢のまま、足めがけてナイフをふるう。

フリスクはそれを回避しようと足を引っ込めるが、

その行動を想定していた相手は、素早くそれを追うようにナイフをふるった。

ナイフは、フリスクの足の表面の肉をえぐり取り、

大きな苦痛を与え、そのあとも、続けてフリスクの右腕にも大きなダメージを与えた。

傷は深いとはいいがたいが、浅いとは言えず、痛々しい傷口からは、絶えず出血していた。

いっっ!

フリスクはダメージを追っていない動かせる右足を使い、

後退し、ダメージのない左腕で自身の服のそでを破り、出血箇所にあてた。


今だけは元の世界の季節が小暑でよかったと思える。

で、さっきは自分はなんて言った?

‘戦闘能力自体はあまり高くないようだから‘だ?

全然そんなことなかった。

最初の動きは素人のそれだったのに。

それに加減して攻撃しようとしたせいで、

こんな傷も負った。

もう俊敏な動きはできない。

それに加え、近づかれてもこの苦痛のせいで生易しい斬撃しか放てないだろう。

できるとすれば..


足を自由に動かせないフリスクの状態を見てか、

まるで運命を弄ぶかのように、相手はじわじわと距離を詰めていく。

相手との距離が縮まり、約150㎝離れたところにモンスターが立ち、

ナイフを突き刺さんとしたとき、フリスクの指先から青白い色をまとった炎が放たれる。


炎は着弾する寸前、猛り狂う炎がうねり形を変え、青く燃え盛る炎の翼と迫力のある表情が特徴的の一匹の竜へと変化した。

「はっ?」

その距離、そして炎の速さ秒速250cm、さらに突然で予想しえない攻撃だった故に相手は反応できず、

その竜が徐々に近づくにすれ、モンスターの瞳に地獄から這い上がったような一匹の竜がより鮮明に映るようになった。

着弾すると同時に、約2000度の炎の竜は広がり、キノコの体の着弾地点は黒く焼き焦げ、悲鳴をあげる間もなく、意識を失い、後方にバタッと倒れた。

命の危機を回避したが、フリスクの足に残る痛みはまだフリスクの精神をむさぼり、体から命のしずくを奪っていた。

「はぁ、痛みはあるし、動いたらダメなんだろうが、」

「どこか人目のつかないとこに隠れないと」

そう思い、思い腕をぶら下げながら立ち上がり、人目のつかない方角へ進もうとしたとき、

後ろから機械的な悲鳴が聞こえてきた。

声の持ち主の方向を向くと、そこには人の形に似た歯車と鎖等で構成された機械的な体を持つ、

ロボットのようなモンスターが、こちら側を指さし、その体から煙を吹きだしていた。

「ナカマガ、、ニンゲン イル アッチ キテ!ダレカ!」

「トッテモ、ショック!」

そう言い切ると、声は段々と低く、そしてスローになり、やがて体を構成する歯車や部品の一つ一つが外れ落ち、

煙をあげ、後方に倒れた。

ばらばらに分解されたそのモンスターはその後もなおも、

小さく、「ショック、ナカマガショック」と壊れた機械のようにつぶやき続けている。

急に訪れた危機的状況にしばし硬直していると、

後ろから、重い扉の開く音がした。

音の距離感と、その扉のきしむ音から、

フリスクは、振り向かずとも誰なのか、直感した。

「ラシウス?」

凄惨な現場を目撃したラシウスの表情は凍り、その後すぐ、怒りがわいてきたように顔が険しくなった。

直後、声を荒げ、腕を強く握りしめながら、フリスクにじりじりと近づき始めた。

「おい!お前...お前か?ファンガスとプラチナを殺したのは?」

その迫力のある声は、以前、自分の面倒を見てくれたラシウスからは想像のつかないものであり、

そのギャップと、覇気にフリスクは怖気づいた。

体がないのだからわかるわけではないのだが、

なぜか、ラシウスの表情は怒りと悲しみと憎しみと、

また、自身を否定されたようなもののように思える。

言い逃れはできない。

...できないな。

あぁ,数日間でもさっきまでは親しい友人だったはずなんだがな...

フリスクは力の入らない拳をできる限り強く握りしめる。

突然知らないところに投げ飛ばされて、そこの住民はこっちに攻撃してくるけど、やり返してはいけない。

なにもしていないのにだ.

正義のの天秤が傾いているように。

こちらに非はない。

怒りは胸の奥で燃え上がり、それと同時に、特定の仲間ができず、またそれを簡単に失った事実に冷たい孤独がそれを包み込む。

口先だけは一丁前、感情表現や、それらしい自己分析、状況分析を行うことすべては、

フリスクの父へのあこがれからくるものであった。

しかし、もし世界が常に合理的ならばともかく、理不尽あるこの世の中ならば、

どこかで他人に見せる自身の歯車が狂うもので、

また、フリスクはそれに対処する方法を知らなった。

フリスクはラシウスに目を向けず、

顔を見せぬよう隠すように、視線を地に落とした。

重厚感のある革靴の底が生み出す音が、いつもの数十倍重く感じた。

----リセット

そう心の中でつぶやいた瞬間、自身のまだあたたかい血で染まるあの地の光景を思い出した。

生存本能からか、感じるはずもない痛みが、心臓をつらぬくよに走った。

フリスクはつぶやいた。

---被害者は,俺なんだよ!

そういうと、

フリスクは前触れもなくその傷ついた足を酷使し、走り出した。

「おい!まて!」

後ろから発砲音が響いたが、

運がいいのか悪いのか、

フリスクにはかすりさえしなかった。

複雑で難解な路地に飛びこみ、

今にももげるような感覚の足を必死に動かし、

左へ右へ、人目のつかないところまで逃げた。

通る道には家々が構えていたが、

誰一人にも遭遇しなかった。

意識がもうろうとしていたから、

そこから今までの記憶は飛んでいた。

気づくと、自分は息を荒げ、暗い人目のつかない路地の、ひとつのごみ箱に寄りかかっていた。

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