襲撃者
「襲撃!?」
フリスクは事態をいち早く察知し、リュックからナイフだけを取り出し、階段を降りた。
そこには事態に築いていないマスターが接客をしており、フリスクに謎の爆発音について尋ねる。
答えている暇がなかったので、「襲撃!!」とだけ言い、勢いよく扉を開け、現場に駆け付ける。
別に騎士団でも警察でもないが、なんとなく、そこに行ってみたくなる、
フリスクはそういうやつだったのだ。
路地裏を抜け出し、大通りに向かうと、
モンスターたちはずいぶん遠くまで逃げていたが、
数人の襲撃者が後を追い、刃で体を貫いている、
予想していなかったわけではないが、さすがに血を見るのに慣れていないフリスクは、
正義感や好奇心故に交代することはなかったが、その凄惨な光景からは目を背けた、
しかし、悲鳴はいやでも聞こえてくる。
だが、どうしようもないことだ。
フリスクは残った数名の方向を向く。
襲撃者のうちの一人は、指揮官のように残る数名の指揮をとっている、
見た目は、鎧のようなもので体を覆っていたわからなかったが、鎧は人間が着るそれの形状そのものだった。
数名のうちひとりがフリスクの視線に気づき、こちらを向く。
そのひとりはフリスクをしばし見つめた後、指揮官らしき人物にそれを伝える。
フリスクは持っていたナイフを服の中に隠し、相手の反応をうかがう。
すると、その指揮官は、フリスクに近づき、こう尋ねる。
「お前は人間か?いや、姿からしてそうなのだろうが、なぜここにいる。今回のメンバーにはいなかっただろう。」
相手はフリスクを敵と認識していないようだ。
絶好のチャンスかもしれない。
戦争に出ているものの大半は、人の命を奪いたいと思ってはいない。
だから、できるだけ傷を負わせずに無力化できたらいい。
しかしこの考えには欠点があるな。
そもそも自分は彼ら襲撃者の一人にすらかなわなそうなのだ。
それを傷つけず無力化。
それは不可能か。
ここはできるだけ友好的に行くべきか。
「すいません。自分、モンスターに家族を殺されて。。今回のメンバーには入れなかったんですけど、どうしても思い知らしめたくて。」
フリスクは起こってもいなく思ってもいないことを口に出す。
指揮官らしき人物はフリスクを疑っているようで、しばし沈黙が生まれる。
しばらく考えて、指揮官は口を開いた、
「そうか...なるほどな。わかった。けれど先頭に出すわけにはいかない。」
「後ろに数名いるだろう?そいつらについていけ。
フリスクは言うとおりに、後ろに下がる、
...!指揮官はフリスクのほうを向かず、背中を向けている。
フリスクは服の裏に隠したナイフを手に持つ。
指揮官がこちらを向かぬうちにフリスクは踏み出した。
助走をつけナイフを突き出す。
あと5cm。
4cm
3cm
2cm
あと1センチメートルのところで、フリスクは横で銃を構え、今引き金を引こうとする襲撃者に気づいた。
体勢を立て直すのには時間が足りない。
死を無意識に直観したフリスクは強く目を閉じた。
世界が遅く感じる。
しかし,発砲音が鳴り響くと同時に、フリスクの視界は、灰色と赤色に奪われた。
「血だ。」
そう思ったが、そうではなかった。
その色に視界が奪われた直後、爆発音がけたたましく響き、爆風と共にフリスクは宙に投げ出された。
「な」
指揮官やほかの従事者も同じく突然のことに対応できず、爆風と炎に巻き込まれていた。
ッつ!
うまく受け身を取り、多少の痛みを感じる程度にダメージは収まった。
周りを見渡すと、マスターが前かがみで息を切らしながら立っている。
本当にベストタイミング!
心の中でフリスクはガッツポーズをきめる。
けど、やっぱりばれてたのか。
けどあんな瞬時に銃口を向けてくるとは思わなかった。
正々堂々戦って勝てるようには見えないし、
マスターはあの一発でもうばててる。
協力を仰ぐにしても誰に、、
フリスクが起き上がりながらそう考えていると、
一人の従事者が立ち上がりフリスクに向かって歩き出す。
従事者は剣を構え、すきを見せない。
フリスクはナイフを取り出し、カウンターを狙う。
従事者が足を踏み出しフリスクめがけて剣振りかざす。
「あっぶなっ!」
フリスクはタイミングを合わせ剣をはじき返した。
相手の剣は宙を舞い、従事者の手から離れる。
今。
それに便乗し、体制を立て直し反撃しようとするが、
突然、顎あたりに強い痛みを感じた。
それと同時にフリスクは後ろにのけぞる。
やばい。
危機を直感した。
なにかが顎にいきおいよくぶつかったのだ。
この体制では隙がありすぎる。
ありもしない打開策をフリスクが詮索していると、もうひとちの襲撃者であるものが振り下ろした
一振りの剣が大きな金属音をたて跳ね返された。
剣を跳ね返したのは、鋼色の鎧をまとった、「犬」だった。
見覚えがある。
そうだ。
昨日町であったあのバンド(?)のファンじゃないか。
昨日は‘なにも考えていない顔‘のお手本みたいな顔つきだったのに。
フリスクは相手の隙を見逃さず右側から後ろ側に回り込み、
心臓めがけてナイフをつきさす。
やはり`モンスターを刺した時の感覚`じゃない。
フリスクはナイフを相手の体内から抜きだす。
刺傷部分から大量の血液が流れだし、
口から血を吐いている。
相手はかがみ、刺傷部分を抑えている。
「もうしばらくすれば出血により死ぬだろう」
犬騎士は言った。
しかしフリスクはハッとする、あの指揮官は?
そう思い背後を振り返ろうとしたとき、時すでに遅く
真後ろに剣を構え、今にも命を奪わんとする指揮官の姿があった。
「しまっ」
剣にあたる直前、少し体をそらし、
心臓への直撃は避けることができたが、
フリスクの右腕はくれないに染まり、
大きな痛みが体中を駆け巡った。
「ぐっ、あぁっ」
フリスクは左腕で出血箇所をおさえ。もがき苦しんだが、
指揮官らしきあの男は、そんなことお構いなしに再度攻撃しようと体制を立て直している。
しかし、やっと歩けるようになったマスターが横からフリスクをつかみ、
後ろにかついだ。
「大丈夫なのか..マスター」
マスターは大通りを進んだところにある病院に向かって、全速力で走り出す。
「ばかかお前。こっちのセリフだ」
「あとしゃべるな。傷が開く」
フリスクは自身の情けなさと痛みでそれ以上しゃべることはできなかった。
また、自身の覚悟のたいなさを痛いほど痛感していた。
この世界に迷い込んだ時、
ゲームのような感覚だった。
それはそこには未知のものが多くあり、
また、これまであったもののすべてが善人だったからだ。
けれど、ここは過去の世界という名の現実だった。
マスターに担がれながら、フリスクは治療所へ向かうのだった。