幸先の良い旅路
この物語、お気づきの方もいると思いますが、
リゼロとアンダーテールに強く影響を受けています。
しかし、物語自体は完全オリジナル。
タイムリープとキャラクターの心境の変化や成長や堕落はリゼロから。
平和的で個性的なモンスターはアンダーテールから。
そんな物語になる予定です。
三人称視点で自分が見える。
フリスクの意思とは関係なしに動いているようだ。
なにかを取り出している。ナイフ?
近くに人がいる。
その人に向かってナイフを突きつけている。
夢か..?
違う。
妙にリアルだ。
その人は寝転がっている?
そこはどこか?
なにかで囲まれている。
テント。。?
違う!
フリスクは飛び跳ねるように起き、枕もとのナイフを手に取り、前に突き出す。
ナイフの先には夢通り。だれかがいる。
モンスターだ。
体全身が炎のように揺らいでおり、服は、黒と白を基調にした独特な姿だ。
目も口もあるように見えるが、人間と同じように機能するかは謎だ。
彼はこちらに銃口を向けている。
モンスターも無差別に人間を殺そうとはしないと今まで考えていたが、
よく考えればここにも前線で身内を殺され恨みを持っているものがいるはずだ。
目の前に自身の命を狙う凶器がある、緊迫した状況が続く。
先に口を開いたのはフリスクだった。
「こっち戦う意思はないんだ。お願いだ。刃を納めてくれ」
モンスターもフリスクもお互い刃を納めずに会話を続ける。
「。。自国に戦争を仕掛け、同族を理不尽に殺害した憎き相手が目の前にいて、殺さない理由があるとでも?]
フリスクの発言は火に油を注ぐものだったようで、モンスターは少しづつ引き金を引く。
今ここで反撃することも不可能ではない。
しかし、できるだけ命を奪う真似はしたくない。
現在できる最善の行動をフリスクは考えていた。
殺さず、殺されず、命乞いも言い訳も使えそうにない状況。
相手の指が引き金を引きそうになった時、フリスクはとっさに口を開いた。
「私は人間じゃない。」
相手はその言葉にあきれるように返事をした。
「いくらか考え出てきた言葉がそれか、では証明して見せてくれよ。」
「同族なんだろ?」
フリスクはここぞとばかりに相手の言葉にかぶせながら言った。
「魔法が使える」
モンスターは、フリスクのその自信にあふれた表情に戸惑いを見せる。
「最も早く証明する方法はそれくらいだ」
フリスクはナイフを納め、もとの位置に戻す。
「その拳銃をおけとは言わない」
「けどもう少しスペースが欲しい。」
「外に出てもらってもいい?」
モンスターはなにも答えず、銃口をこちらに向けたまま、外に向かってじりじりと後ずさりする。
フリスクもそれに続いた。
外にでると、
モンスターはフリスクに言った。
「要望には応えた。見せてみろ」
言われなくとも。
フリスクは手の平に小さな炎の竜を出現させる。
竜は手のひらの上で旋回する。
まるで意思を持ったように。
どうだ?
フリスクはモンスターのほうを見つめる。
モンスターは自身の直感と、目の前の光景とのズレに相当驚いているようだった。
銃口はこちらに依然としてこちらを向いているが、
様子から察するに今なら銃をたたき落とすこともできる。
フリスクはしばし様子をうかがう。
やがてモンスターは銃を下ろし、申し訳なさそうに言った。
「すまない。眠りを妨げ、命を危険にさらしてしまった」
「心から謝罪する、どうか許してほしい」
さっきは憎むべき敵を前にして頭に血が上っていたのだろう。
根は紳士的なはずだ。
できれば次の町までついてきてもらいたい。
実際私は人間なのだから謝られるのは気が引けるが、
利用しない手立てはない。
そうだ、記憶喪失っていることにすればいろいろな矛盾点が解消されるだろう。
嘘は好きではないが、誰も傷つけない嘘なら問題じゃあない。
「謝罪を受け入れるよ。そのかわり、次の町までついてきてもらえるかな」
「僕にはちょっとした記憶障害があるんだ。」
「。。わかった。まだ4時だが、出発するか?」
モンスターは提案を受け入れた。
そして、モンスターの問いにフリスクはうなずき、
ふたで協力してテントをたたむ。
夜道をランプで照らしながら、
二人並んで歩く。
いや、まぁ彼のほうがランプより明るいんだけど。
フリスクがモンスターに名前を尋ねる
モンスターはこう答えた。
「名前か、役所に正式に届出を出しているわけじゃないから、確定しているわけじゃないんだけど、みんなは私をマスターって呼ぶよ」
役所に届けを出していないということは、戦争孤児か。
生まれはしたものの、そこは戦争の前線。
両親は死に、運よく誰かに拾われた。
そりゃあ、人間を見かけたら殺したくなるよな。
「そうなんだ。じゃあマスターって名前から想像すると、もしかしてバーテーンダー?」
マスターはどうこたえるのが適切か迷っているように、指先をまるめ、唇に手を当てている。
「あー。そうなんだけど。そんな格好いい名前にはならないかな。合法じゃないから」
え?
フリスクは思わず口に驚きを口に出してしまった。
マスターは、口を滑らしてそれを言ってしまったようで、あわてて訂正しようとする。
「あぁ、待って違うんだ。非合法って言っても、人に迷惑をかけたりしてるわけじゃない。」
マスターは険しい顔をしながら続ける。
「今の王政は、製造・提供・飲酒に関する厳しい規制を設けている。絶望に陥った国民が酒に依存するのを避けるためらしいけど。」
「かえって国民は苦しんでいる。」
「だからそんな人たちを救済しようと、私は、酒の製造・提供を行っている。」
「もちろん、客の命を危険にさらしたくはないからね。製造資格も取っているし、提供も一定の限度を持って行っている。」
これがよいことなのか悪いことなのか、私には判断することができないし、そんな権利もないだろう。
しかし、個人的なマスターへの印象は、自身で強い信念を持ち、仲間思いな尊敬に値する人物だ。
。。。
人物ではないか。
いやそんなことはどうでもいいんだ。
「素晴らしい行いですね。」
「ぜひ連れてってくれませんか?」
マスターはうなづく。
そんな風に会話を重ねながら歩いていると。
時間は流れるように過ぎていく。
日が昇り始めるころ、二人は目的の町にたどり着いた。
ここまで読んでくださっているのならもしかして気に入ってくれたんですか!!