いいえ
その日は突然訪れた。いつものようにコナミと話をした後。アルミ缶のような銀色の建物の中に入ると扉が現れていた。
あぁ、7日が過ぎたのか。時間が分からないから、もっと長い年月を過ごした気がしてた。
「さぁ、行って」
コナミが傍らでニコリとも笑わずに言う。怒ってる?いいや。寂しいのか。暗い表情を浮かべるコナミを見つめる。
「コナミも一緒に行こうよ」
「私は行けない」
「どうして?」
「私はこの地に残らなきゃいけないから」
誘いの言葉を口に出した僕にコナミは睫毛を伏せて首を横に振る。コナミが扉に手を翳すと重厚感のある扉が開き、風が吹いた。キラキラと輝く光の粒子が辺りに舞い、記憶が蘇っていく。
そうだ。僕はハジメ。創造神であり破壊神。この地を生み出し、この地を終わらせ、新たな地を生み出す者。
僕が降り立つと新しい星が生まれ、僕が旅立つと星は命を終える。そしてまた別の新しい星が生まれる。
コナミはこの星の守護神。僕が生み出した、この地の番人。僕の眷属。孤独だった僕の、たった1人の家族。呪われた身の僕に優しく接してくれた唯一の光。
「この星を消滅させますか?」
全知全能の神が無慈悲な声で問う。僕が扉から出れば、この星は消滅する。膨大な闇に飲まれて星諸共コナミも消えるだろう。そうやっていつも星を消してきた。また新たな星を生み出すために。
膨大な広さとはいえ、宇宙にも果てがある。新しく生み出すには古い星を消していかねばならない。それにこの星はもう寿命だ。分かってる。だけど、僕はこの地に降りる予定はなかった。間違えて来てしまった、それが事実だ。
「嫌だと言ったら?」
「記憶を消し、また最初から始めて貰います」
はい
いいえ←
頭上に選択コマンドが現れる。
「ココに降りた時点で未来は変えられないのよ」
僕の傍らでコナミが掠れた声で呟く。
きっと、そうなんだろう。どう足掻いたってこの星は終わりだ。そんなの、分かってる。ただ、壊す選択肢は選べなかった。だって僕は破壊神であると同時に創造神だ。過去に戻ってやり直すことは造作ない。だったら選ぶのは“いいえ”だ。
過去の自分が今の自分と同じだったように、未来の僕もまた同じ道を選ぶだろう。破壊神のくせに壊したくないと願ってしまった僕の我儘。一人の少女を愛してしまった僕への呪いだ。
【BAD END】
静かな闇に終焉を告げる言葉が浮かび上がる。
あぁ、今回もまた……。僕は全てを忘れて最初のあの日に戻るのだろう。タイムリープから永遠に抜け出せないまま。甘美な7日間を君と永遠に過ごすために――。
――★――
記憶を失った男の傍らで少女が掌に赤いペンで文字を書く。
【出るな】
ここから出なければ、降りたことにならず、このタイムリープからも抜け出せるのに。
分かっていながらも少女は口に出すことが出来ず、今日も蓋の前で少年が訪れるのを待っていたのだった。
【完】