コナミ
何もすることがなく時だけが過ぎていく。いつの間にか眠りについていた僕はモヤついた気持ちを胸に抱きながら目を覚ました。まだ扉が現れていないから7日は経っていないのは確かだ。
焦りともどかしさに心が支配されていく。いったい、今は何日だ?時間は?考えても計算をしてみても分からない。
「ハジメ。そこのお花、取って」
傍らに居たコナミが僕の手元にあった花に視線を向ける。紫の小さな花だ。この地に生息する花だろうか?見たこともないが、可愛らしくて綺麗な花だ。
「どうぞ」
「ありがとう」
素直に手渡すとコナミは嬉しそうにはにかんだ。どうやらこの花で花冠を作っているらしい。冷めた瞳に少しばかり色が差した気がして僕は嬉しかった。逸る気持ちも落ちつくくらい。
暇すぎるこの世界でコナミの存在は唯一の救いだ。僅かな変化にあり得ないくらいの感激を覚える。
それにしても何もすることがないというのがこんなにも辛いことだったなんて。食事どころかトイレにすら行きたくならないなんて不思議だ。過去の僕はどんな男だったのか?記憶もないし、思い出に浸ることも出来ない。
「コナミは何歳?」
「14億5千万歳」
「冗談言うなよ」
「本当だ。ハジメなんか私の倍は生きてる」
「だとしたら僕達はいったい何者なの?」
そんなの人間じゃない……と、半笑いで尋ねた僕にコナミは表情も変えずに答えた。
「別に何者でもいいじゃない」
「なんで?気になるよ」
「気にしなくていい。身体に何が流れていようと正体が何であろうと、私は私でハジメはハジメだもの。人物自体は変わらない」
珍しくコナミが熱く語る。瞳に熱を灯らせて声も弾んだ感じ。心から自分はそう思っているということだろう。
「コナミは人間?」
「私はハジメの付属品だ」
「付属品?」
「ハジメが居るから私が存在するの」
花冠を作りながらコナミは淡々と答えた。が、意味が分からない。付属品って何だ?まさか僕が作ったロボットだったり?
得も言わぬ不安を感じた僕はコナミの腕に触れた。暖かい。それに柔らかい。ちゃんと生きてる。
「何?」
「ううん。何も」
思いの外、女の子らしい感触に少し照れる。なんだ。ちゃんと人間じゃないか。安心した僕はコナミの膝で眠った。
毎日、毎時間、そんな感じだった。穏やかで暇な時間が過ぎていく。扉が開くのが7日なら、まだそんなに時は経っていないのかも知れない。それでも永遠と言えるほどの暇な時間は長く感じた。
どれくらい時が過ぎただろうか。暇を持て余した僕は空に見える星の観察を始めた。1人じゃ寂しいからコナミと一緒に。
「あの星はどんな星?」
「緑豊かな温かい星よ」
僕が指差した星についてコナミが淡々と答えていく。コナミは物知りで周囲の星について詳しかった。聞けば何でも当たり前のように答えてくれる。実際に行ったことはないが、その星がどんな星かは知っているらしい。
どうやら昔この星に訪れた人に教えてもらったそうだ。とはいえ、聞いたのはもう何百年も前の話らしいが。
「その人はどうなったの?」
「帰った」
「自分の星へ?」
「さぁ……」
「もう来ないのかな?」
「時々、来るよ」
僕の質問にコナミは穏やかに答えた。相手を思い出しているんだろうか?柔らかい目だ。感情のなかった最初の顔からは想像がつかないくらい。