Red town
谷底を往く貨客混合列車。鉄鉱石を鉱山から港まで運び、赤錆と夕日を浴びて真っ赤に染まった街を走り抜ける。軌道の接続部を台車が通過するたびに金属音が谷中に反響し、二百両にも及ぶ貨車に積まれた鉄鉱石たちが身を揺らす。そんな長大な編成の最後尾には五両の客車が申し訳程度に連結されている。普段なら仕事を終え疲弊しきった労働者たちの虚ろな空気が漂うはずだが、貨車に負けず劣らずの重い空気をまとっていた。
進行方向に向かって一号車。腰にピストルを下げた男が数名と二人の女が車両を占拠していた。
「ねえ?もう何回言ったか忘れたけどもう一度言うわ。」
女のうちの一人、ジャンヌが男に話しかける。小柄でひ弱そうな体躯をしているが、その紺碧の瞳には強い光を宿している。
「いいえ、結構でございます。お嬢様。我々は貴方様の護衛を任された身。座ってなどいてはいざという時御身をお守りできませぬ。」
男のうちの一人が遮るように拒絶した。そしてジャンヌの向かいの席で目を瞑っている女を蔑むように見下した。