83. 王女の笑顔
会議の後には晩餐が用意されていた。
全員が食堂に集まって振る舞われた食前酒を飲みながら談笑をしていると、イブニングドレスに着替えたアリエルが入場した。
体の線が出る濃い緑色のドレスには光沢があり、アリエルが動くたびにオーロラのように緑から紺色にその色を変えた。
首元には大きなアレキサンドライトの首飾りが輝いている。シャンデリアに反射し、赤紫色に煌びやかに光っていた。
「皆様、今日はお集まりいただき、ありがとうございました。ささやかですが、晩餐をご用意しております。楽しんで行ってくださいませ」
アリエルは全員の前に立ち、膝を曲げて挨拶をした。
「おお、アリエル。今日も美しいな。こちらへ」
皇帝はそう言うと、アリエルをそばに呼び寄せた。
皇帝はアリエルの肩を抱き寄せた。
「アリエル。よく調べてくれた。礼を言う」
そして、アリエルをきつく抱きしめると頬にキスをした。
「お父様。皇后陛下と仲直りできて、本当によかったですね。不器用なところがルイ殿下とそっくりですわ」
アリエルが耳元でこっそりと伝えると、皇帝は歯に噛んだ笑顔を向けた。
皇帝の乾杯により、晩餐は始まった。マティスと皇后が晩餐に加わるのは初めてのことだった。
「アリエル、すごく素敵なドレスを着ているわね。それは、アルメリアのものかしら?」
ダイアナはアリエルのドレスを見て尋ねた。
「……これは、ルイ殿下に仕立てていただいたものです。私はそういうことに疎いので……見かねた殿下が全てご用意してくださいました」
アリエルは恥ずかしそうに答えた。
「ルイ。お前、そんなこともできるのか。器用じゃのう」
皇帝はニヤニヤしながらルイの方を見た。
「当然のことです。私の妃となる方に美しくいてもらうことは、夫になる者の努めですから」
ルイは造作ないと言った様子で笑った。
「母上もいつもお綺麗ですよ」
マティスはニコニコしながら言った。
「そうであろう。我が妃は美しいであろう?」
皇帝は得気に言った。
「はい。とても強く、お美しいお方です」
アリエルが満面の笑みでそう言うと、皆も頷いた。
実際、ダイアナは年齢を感じさせない程とても美しかった。これまで張り付いたような笑顔しか見せたことはなかったが、その顔はいつになく綻んでいた。
「母上はもっと今みたいに笑うと素敵ですよ」
「そうだな、マティスの言う通りだな。母上は、本当はとてもチャーミングな方だったのだな」
マティスが屈託のない笑顔で言うと、ルイも深く同意していた。
ダイアナは、久しぶりに悪意のない暖かい言葉に触れていた。この中にダイアナを欺こうと考えている人間はいないと思うだけでも、心が軽くなっていくのを感じた。
離宮からの帰り道、ダイアナは晩餐会のことを思い出していた。晩餐がこれ程楽しいと思えたのも初めてだった。
いつまでも続いて欲しいと思える時間を過ごせたことが、ダイアナの心を温めていのだった。




