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81. 茶会への招待

 ルイが帝都に到着した翌日、アリエルの部隊も遅れて帝都に戻った。道中も問題なく進み、概ね予定通りの復路となった。


山道が続く連日の長躯により、アリエルの体は疲労していたが、それでも残されている時間はあまりなかった。


 アリエルが離宮に戻った翌日、再び会議室に主要な面々が集められた。アリエルの部下である、シモン、エミリー、サリー、そしてエド、サイモン、ハラスが集まっている。ルイとオリバーも遅れてやって来た。


 皆が会議室に集まったことを確認したアリエルは言った。

「では、みなさんお集まりいただいたので、早速話を進めたいと思います。先日、ルイ殿下とモンテッサに行って来て、分かったことがいくつかあるの」


そう言うと、アリエルはブルーサファイアのブローチの出所について、前皇后と現皇后との間に何かしらの接点があったことがあったことを説明した。


「なるほど……お二人の間に何かしらの接点があったのですね……」

 とエドは言った。


「ええ。ただ、接点があることはわかったのだけれど、どう言った関係だったのかはまだわかっていないのよ。私の予感だけれど、何となくだけど、悪い関係ではなかったような気がしているの」


「ああ、私もアリエルの意見と同じだ。おそらく、二人の間には何かしらの密約があったように思う。ただ、母上の遺品からはそれらしきものは出てこなかったし、こちら側を探しても出てこないだろう」


 ルイが言うと、アリエルも頷いた。


「これは、私からの提案なのですが、私が茶会を主催して、皇后を直接お呼びしてみるのはいかがでしょうか?」

 アリエルはルイの方を見て言った。


「……ふむ……それなら、父上とマティスも同席させた方が良い気がするな」

 ルイは考え込みながら言った。


「そうしていただけるとありがたいのですが……」


「あいわかった。秘密裏にこちらの予定を合わせることにしよう。表向きには我々が集うことは内密にし、誰にも知られず顔を合わせられるように計らおう。アリエルの言う通り、表向きには離宮での茶会が好ましいかもしれないな」


「はい。私もそう思います。対外的には病床の王女を見舞うということにして、離宮にお越しいただくのが、よろしいかと」


「ふむ。その日に合わせ、我々も秘密裏に離宮に集まろう。エド、父上とマティスの予定を確認し、四人が顔を合わせられる日程を調整してくれ」


「承知いたしました」

 


一週間後の日曜日には内密のお茶会が開催できる、という通知がアリエルの元に届いたのだった。





 皇后であるダイアナの元に、皇帝の使いとしてエドがやって来た。皇帝の側近の者であると言うこと以外、ダイアナはエドのことは時々城で見かけることがあっても、あまり深くは知らなかった。


「皇后陛下にご挨拶申し上げます」

 ダイアナの応接室に通されたエドはそう言うと深く頭を下げた。


「皇帝が、私に使いを送るとは、何かあったと言うことですか?」

 ダイアナは訝しげな目をしてエドを見ていた。


「突然のことで申し訳ございません。恐縮ではございますが、人払いをお願いできますでしょうか?」

エドはにっこりと笑った。


ダイアナは周囲に目配せをして、側にいた侍女や付き人を全て部屋の外に出させた。その部屋に二人以外に誰もいなくなったことを確認して、エドは口を開いた。


「皇太子殿下のご婚約者様である、アリエル王女殿下よりお預かりしております品がございます」


 そう言うとエドはテーブルの上に宝石箱と鍵を置いた。一瞬、ダイアナの表情に激しい動揺が浮かんだのが見てとれた。しかし、ダイアナは再びいつもの冷静な微笑を浮かべた。


「美しい宝石箱ね」そう言うと、ダイアナは鍵を差し込みその宝石箱を開けた。


 中にはブルーサファイアのブローチと手紙が一通入っていた。


手紙に触れるダイアナの手が震えている。ダイアナは静かに手紙を開封し、隅々まで目を凝らした。


ダイアナはしばらくの間、目を瞑って考えていた。


そっと目を開けると、

「……茶会に参加する、とお伝えいただけるかしら」

と答えた。


「承知いたしました。そのようにお伝えいたします」


エドはそう言うと静かに立ち上がった。そしてダイアナに一礼すると、静かに扉を開けて王室室を出て行った。


ダイアナはしばらくの間、ブルーサファイアのブローチを手にして考え込んでいたが、やがて手紙と共にそれを宝石箱にしまい、鍵をかけた。


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