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47. 新しい戦略

 マティスが離宮を訪れた翌日、アリエル達はブルスト教会に出向いた。


 サリーがブルスト教会に潜入してちょうど一週間が過ぎていた。サリーは地方に住む伯爵の夫をなくした未亡人だと装って入会させた。


 伯爵の遺産という名目で多額の献金を行うと、教会側は何の疑問も持たずサリーの入信を歓迎し、それ相応の個室と自由を与えた。サリーの主な業務は礼拝と、司祭への給仕だった。


 それ以外の時間については自由が与えられている。


 サリーとの面会のため、アリエルは灰色のカツラを被り身分の低い使用人に変装し、同じように変装したエルとシモンを連れ護衛と共に教会へ出向いた。


 帝都にある豪奢な造りの教会は平日の昼間だと言うのに多くの人が訪れていた。


 伯爵夫人の後見人として遠縁の伯爵を名乗るエルが面会の訪いを入れると、司祭が出てきて速やかに応接室に通された。応接室の壁には金箔で縁取られ、派手な壁絵が施されていた。


「相変わらず金の匂いに敏感な国ね、ここは」

 アリエルは呟いた。


「ユーリ様。使用人はお静かになさってください」

「……かしこまりました」


 面談には司祭と聖職者の二人が同席していた。アリエルも使用人として、サリーとの面会に同席を許されていた。アリエルは面会の間、壁の近くに立ち、終始黙って周囲を見ていた。


「サリー様、その後いかがでございますか?」

 とエルは聞いた。


「閣下、お目にかかれて光栄でございます。こちらは何とか変わらずやっております。これは今は亡き主人に宛て思いをしたためた手紙にございます。どうか私の代わりに墓前にお備えくださいませ」

 そう言うとサリーは日記帳を差し出した。


「お預かりいたします。ではこちら、サリー様に代わり墓前にお供えいたします」


「よろしくお願いします」


「お困りのことはございませんか?」


「ええ。皆さんによくしていただいております」

 とサリーは特に問題なさそうに答えた。


「そうですか。それを聞いて安心しました。今日も献金をして帰ることにいたしましょう」

 とエルは言った。


「ありがとうございます。私も一層修行に励むことにいたします」


「お困りのことがございましたら、いつでも使いを送ってください。また、こちらに面会に伺います」

 そう言うとエルとサリーは頷き、席を立った。


 エルは面会を終えると、あらかじめ細工をしていた金貨20枚程を再び献金として司祭に渡した。金貨の裏面の縁に5カ所ほど切れ込みで傷をつけている。


 司祭は満面の笑みで受け取り、エルに向かい深く頭を下げ「神の御加護を」と付け加えた。


「全くこの国はどこまでも金ね」


 教会から戻り、執務室に入ると、エルと共にすぐにサリーの報告書に目を通した。

 これと言って怪しい人物が協会に出入りしている報告はなかった。


「さすがに一週間じゃあまだなにも掴めないわね」


「そうですね。まだしばらく様子を見られた方が賢明かと」


「また来週、行くことにするわ」


「その際には、くれぐれも使用人であるということをお忘れなきよう」


「わかっているわよ」

 そう言うと改めて報告書を再びめくり始めた。


 その時、執務室のドアがノックされた。

「アリエル様、マリーです。今、お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

 久しぶりに聞くマリーの声だった。


「入ってちょうだい!」

 アリエルは快くマリーを招き入れた。


「久しぶりね、マリー! 外のことはあなたに任せてしまっていたけれど変わりないかしら?」


「はい。自由にやらせていただいており、感謝しております」


「いいのよ。あなたの力を十分に発揮してもらっているようでよかったわ」


「アリエル様、密輸のルートと、それに関わっている者をおおかた割り出しました」


「ありがとう。思ったより早かったわね」


「はい。最初は慎重に物事を進めているようでしたが、摘発されないことをいいことに最近では大胆に動いております。そのため、割り出すことができたのではないかと」


「泳がせているってことに気づかなかったのかしらね……」


「こちらが売人の似顔絵と、分かる限り詳細を記した書類です。協会や闇宝石商と関連がありそうな宝石店もまとめております」


「助かるわ」


「何人かはハンプシャー家へも出入りしている宝石商とつながっているようです」


「ふうん。ハンブグル家とは絡んでいるの?」


「ハンブルグ家は密輸に関しては関与していないようです。ただ、宝石協会では重役に就いているため、そちらを取り仕切っているのではないかと」


「なるほど……よく調べたわね、マリー、ありがとう」


「いえ、業務ですから」


「……ねえ、マリー、エル。私は、このまま裏でこそこそ調べているのも、ここまでが限界じゃないかとって思っているの」


「確かに、このまま公にできない証拠ばかりが集まっても断罪まで繋げることは難しいかもしれないですね……」


「そろそろ、こちらからも仕掛けたいわ」


「……仕掛ける、と言われますと?」


「うーん、調略?」


「……あまり無理はされない程度に」


「それはわかっているわ。エル、皆を集めて相談しましょう」


「承知いたしました」


「城からエド達三人とハラスを呼んでもらえるかしら? それから陛下とルイ殿下に謁見願いの通知を送って頂戴。殿下には私からの手紙も添えるわ。マティス殿下にもご協力いただきたいの」


「かしこまりました。では、早速手配を」


「頼んだわね。では早速準備にかかりましょう」


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