26. 皇太子離宮へ
ルイは夕方会議室から戻ると、オリバーからアリエルから皇后との接触を持ちたいから協力して欲しいという相談を受けたことを聞かされた。
「なぜ、お前が相談を受けているのだ?」
「アリエル殿下より離宮に来るようにとの使いがあり、離宮をお訪ねしましたので」
「離宮に行ったのか?」
「……ええ、まあ、はい」
「なぜ私に伝えない?」
「……殿下は会議に出席されており、ご不在でしたので」
「……アリエルに会ったのか?」
「ええ、ああ、はい。アリエル殿下からのお呼び出しでしたので」
「お前だけ呼ばれたのか? どうして私に一声かけなかった?」
「……ですから、殿下は要人との会議に出席されておられましたので……」
「……離宮に出向くのは明日でも良かったであろう」
「……アリエル殿下が至急来るようにと……」
「……」
ルイの機嫌はすこぶる悪かった。
「まあよい。で、アリエルは何と?」
「殿下に、皇后陛下とご一緒できるお席を設けて欲しいというご相談でございました」
「そうか。わかった。では今から私が離宮に出向こう」
「今からですか?」
「そうだ。何だ? 問題があるか?」
「この時間から女性をお訪ねになるのはいささか憚られるかと……」
「婚約者なのだから、構わないだろう」
そう言うとルイはそそくさと執務室を出た。
「馬で行くぞ」
「……はい……」
しぶしぶとオリバーはルイに続いた。
警護を連れ、離宮についた頃にはすっかりと日が落ち、月が高く登っていた。
離宮の入り口まで歩きながらオリバー言った。
「やはり、また日を改めた方がよろしいかと」
「なぜだ?アリエルは私に相談があるのだろう?」
とルイは譲らなかった。
「そうですが、この時間になって女性を訪れるのはやはりあまり得策とは言えないかと……」
しかしルイはオリバーの制止など聞く耳は持たなかった。
離宮の入り口で取り次ぎを頼むと、執事のエルは慌てて、
「ただいまアリエル様に確認して参ります」
と言って、奥へ消えて行った。
しばらく待たされた後、
「申し訳ございません。アリエル様はただいま来客中であるため、お待たせするのも非常に心苦しいとのことで、再度使いを送るとおっしゃっております」
と、エルは申し訳なさそうに伝えた。
「そうでしたか。こちらこそ、突然の訪問申し訳ありませんでした」
とオリバーは項垂れるルイの代わりにそう答えた。
「……帰りましょう、殿下」
「……そうだな……」
そういうと二人は馬所まで歩き始めた。
ルイが馬に手をかけようとした時だった。
「殿下!」
とルイを呼ぶアリエルの声が聞こえた。
振り返ると、嬉しそうにこちら向かってくるアリエルがいた。
「アリエル!」
ルイは思わず駆け寄っていた。
「殿下、突然のご相談、申し訳ございませんでした」
「いや、いいんだ。私こそ、突然押しかけてしまって、すまなかったな」
そう言うとルイは嬉しそうな顔を見せた。
「ふふ。殿下、わざわざ来てくださったのでしょう?」
とアリエルはルイの手を取った。
アリエルはオリバーに目配せをしながら、そっと笑った。
オリバーはアリエルが稀代の策略家であることを、改めて知った。




