24. 恋する婚約者(1章最終話 )
茶会が終わると、晩餐が用意されていた。
通された晩餐の会場はこじんまりとしていたが、暖かい雰囲気だった。ルイはアルメリアの城を思い出していた。
皆が席についた頃、イブニングドレスに着替えたアリエルが入室した。
先ほどとは違い、胸元が開き、体の線がくっきりと見えるドレスを着ている。結い上げた髪にはルイが贈った髪飾りが飾られていた。そして胸元には豪奢な赤い宝石が光っていた。ルイはいつまでもアリエルを目で追っていた。
「本日はようこそおいでくださいました。ささやかではございますが、晩餐の用意をしております。よろしければゆっくりと楽しんでいってくださいませ」と言って女主人のアリエルは頭を下げた。
父の乾杯の合図で晩餐は始まった。
今日はルイが知っている、いつもの他人行儀な晩餐の席とは違った。それに父の飾り気のない笑顔をルイは久しぶりに見た。
「アリエル、そのネックレスはもしかして?」
と祖母君が尋ねた。
「はい。前皇后陛下がご愛用されていたものでございます。おばあ様からいただいたので、今日の場につけて参りました」
「よく似合っている」と祖父君が言った。
「私が贈ったものだ」と父が言うと
「私が選んだものです」とエドが言った。
「まあ、皇后陛下は愛されていたのですね」とアリエルは笑った。
皆、腹心などなく、心からの言葉で話をしているのがわかった。
ルイは、これほど気兼ねない時を過ごすのはいつぶりだろうと感じていた。
晩餐が終わり、アリエルは庭先まで出て、皆を見送っていた。
皆アリエルとの別れを惜しみ、馬車に乗り込んでいった。
ルイとオリバーだけが最後まで残っていた。ルイが目配せをすると、オリバーも先に馬車に消えた。
「アリエル。またあなたに会える日が来るとは思わなかった」
「はい、殿下」
「ずっとあなたに会いたかった」
「私もです。殿下」
ルイはそっとアリエルを抱きしめた。
「ああ、あなたは本当に私の手の中にいるのだな」
「はい。私はもう、殿下と、トルアシアのものになりましたから」
そう言うとアリエルは腕をルイの背中にまわした。
「ずっと、あなたのことを想わない日はなかった」
ルイはそっとアリエルに口づけをし、体を離した。
「もう行こう。別れが惜しくなってしまう前に」
アリエルを見つめると、そう言って馬車に乗り込んだ。
アリエルは、馬車が暗闇に消えてもずっと手を振っていた。
ルイは、馬車が走り出すと、車窓からいつまでも離宮を見つめていた。
「この国は、変わることができるかもしれないな」
「私は陛下と殿下のお二人が楽しそうに笑っておられるのを、久しぶりに見ました」
「オリバー、お前も力を貸してくれるか?」
「はい。私はいつも殿下とともにあります。殿下、ご婚約おめでとうございます」
オリバーはそう言うと笑顔を見せた。
これまで最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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