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今年も彼女ができなかった  作者: 落川翔太
7/8

7.


「小室って、河合さんのこと気になってるだろ?」

十二月の初旬のある日、会社の先輩である神崎さんが司に言い寄って来た。

彼にそう言われて、司は戸惑った。それは図星であったからだ。司は河合朱莉に気があった。

その後、彼は続けて言った。

「そういや、もうすぐクリスマスだろ? お前、クリスマスはなんか予定あるの?」

「いや、ないです」

「そうか。じゃあさ、彼女にクリスマスの予定があるかどうか訊いてみて、もしなければ、小室、お前、彼女にデートしてくださいとか言ってみたら?」

 それから、彼がそう言ってにやりと笑った。

 そう言えば、もうすぐクリスマスだなと司は思った。確か彼女は前の彼氏と別れたばかりのはずだった。それにすぐに司は彼女に彼氏ができたとは思えなかった。もし彼女が今年のクリスマスに何も予定がなければ、デートに誘うのもアリだろうと司は思った。

 お昼休みに、早速、彼女のところへ行った。彼女にクリスマスの日、空いているかどうか訊こうと思っていた。

 その時、彼女はちょうど他の女性社員たちとお昼を食べながらお喋りをしていた。司は邪魔をしては悪いと思い、その時は声を掛けるのを諦めて、その場を後にした。

 お昼を食べ終えた後も、司は仕事をしていた。それを終えた頃には、もう夕方になっていた。気が付けば、彼女はもう退社していた。結局、その日、会社で彼女にその話ができなかった。

 その夜、自宅に帰って司はゆっくりとくつろいでいた。その時、ふと、彼女のことを思い出した。それから、司は彼女に電話をしてみようと思った。

『もしもし? 小室君? どうしたの?』

「あ、河合さん、こんばんは。今、平気?」

『うん。平気だけど』

「良かった。単刀直入に聞くんだけど、河合さん、クリスマスってもうなんか予定ある?」

『クリスマス?』

「そう」

『特にないけど』

「そうなんだ。僕もないんだ。あのさ……。」

『何?』

「良かったら、その日、僕とデートしてくれませんか?」

『え? デート?』

「そう」

『……うん。いいよ』


 そして、クリスマス当日。

 午後二時に司は朱莉と桜木町駅で待ち合わせていた。

 二時になる十分前に司がその駅の改札へ着くと、そこに彼女の姿があった。

「あ、来た!」

「ゴメン、待った?」

「ううん」

「そっか。じゃあ、行こうか」

「うん」

 それから、司たちは早速、そこからワールドポーターズまで歩いた。

 そこで、司は彼女と一緒に色々な服屋や雑貨屋を見て回った。それから、映画館を見つけて、二人で映画を観ることにした。

 映画を観終わると、午後五時半であった。

「そろそろお腹空かない?」

 彼女がそう言った。そろそろ夕飯時であった。

「うん。少し空いたかも」

 司がそう言うと、「じゃあ、夜ご飯にしない?」と、彼女が言った。

「いいよ」

 それから、彼女がそのショッピング内で食べようと言ったので、二人でどの店に入ろうかを色々と見ながら考えた。それから、司はイタリアンの店を見つけて、二人でそこへ入ることにした。

 その店に入って、司はミートスパゲッティーを注文した。彼女はナスとトマトのパスタを注文した。

「この後、どうする?」

 司がそう訊くと、「行きたい所があるんだよね」と、彼女が言った。

「行きたい所って?」

「赤レンガ倉庫」

「赤レンガ倉庫?」

「そう。実はね、今の時期、クリスマスマーケットがやっているんだよ」

 ご飯を食べ終えてから、司たちはそのショッピングモールを出て、赤レンガ倉庫まで歩いた。

 しばらく歩くと、二人は赤レンガ倉庫に到着した。

 そこにはたくさんの人たちがいて、賑わっていた。そこは前に綾花さんと一緒に来た時とは違い、クリスマスムードが漂っていた。

 早速、彼女が何か屋台を見つけたらしかった。

「ホットワインがあるよ。飲まない?」

 それから、彼女がそう言った。

 ホットワインか。寒いので、温まるのにちょうどいいだろうと司は思った。

「飲もうかな」

 司はそう言うと、「あ、ホットチョコレートもある!」と、彼女が嬉しそうに言った。

「私はそっちにしようかな」

 それから、彼女がそう言うので、司は「いいんじゃない?」と返した。

「小室君はホットワインでいい?」

「うん」

「分かった。じゃあ、私買ってくるね!」

「え? 自分で買うよ」

司がそう言うと、「ここは私が奢るよ」と、彼女が言った。

 それから、彼女はホットワインとホットチョコレートを一つずつ買った。彼女はホットワインを奢ってくれた。司は少し嬉しかった。

「はい」と言って、彼女がホットワインを司に手渡した。「ありがとう」と、司はそれを受け取った。

その後、彼女が「乾杯」と、紙コップを寄せた。

 それから、すぐに彼女はホットチョコレートを一口飲んだ。

「はあ、あったかい」と、彼女は声を漏らした。

「どう? 美味しい?」

 司がそう訊くと、「うん。甘くておいしい」と、彼女は笑顔で言った。

「そっか」

 その後、司もホットワインを飲んでみた。それは温かかった。ワインの芳醇な香りとフルーツの甘味が上品に香り、とても美味しかった。

「ホットワインはどう? おいしい?」

 それから、彼女がそう訊いた。

「おいしい。あったまるね」

「一口ちょうだい」

 その後、彼女がそう言った。

「いいよ」と、司はそれを渡そうと思ったが、その後すぐにあることを思い出した。彼女がこれを飲むということは、間接キスにあたるのではないか。

 司がそれを渡すのをためらっていると、「どうしたの?」と、彼女が訊いた。

「あ、いや、その……。」

 それから、「あー、分かった」と、彼女がにやりと笑った。「間接キスになるだろ! って思ったんでしょ?」

「うん……。」

 司がそう白状すると、「私、別にそう言うの気にしないから」と、彼女が言った。それから、彼女は司のホットワインを一口啜った。

「うん。おいしい」と、彼女は言った。

彼女が口を付けたのは、司が口を付けていない所だった。間一髪セーフだった。

それから、司たちはそのクリスマスマーケットのきらびやかな雰囲気やそこにあった大きなクリスマスツリーの前で写真を撮った。

その後、彼女が「近くに公園があるから」と言って、二人で山下公園まで歩いた。

十分ほど歩いて、その公園に到着した。そこには、まばらだが何人かの人がいた。カップルも何組かいた。

しばらく歩いた所に、ベンチを見つけたので、二人でそこへ座った。

「うわー、きれい!」

彼女が驚いたように言った。そこから横浜の夜景が一望できた。

「本当だね」

「でも、もっと綺麗に見える場所があるんだけど、どこか分かる?」

 それから、彼女がそう訊いた。

「ランドマークタワーとか?」

司がそう答えると、「まあ、それもあるけど……。ほら、あそこ!」と言って、指さした。遠くの方に大観覧車があるのが司には分かった。

「あの観覧車?」

司がそう訊くと、「そう。あそこから見る景色も綺麗なんだよ」と、彼女は言った。

「へー」

司が感心したように言うと、「ねえ、あの大観覧車、乗らない?」と、彼女が笑顔で言った。

「いいね」

 それから、今度、司たちは大観覧車がある横浜コスモワールドまで歩いた。

 コスモワールドに着き、二人で早速、大観覧車に乗った。

「どう? よくない?」

「うん、いい」

 その観覧車から見る景色は、先程彼女が言っていた通り、綺麗に見えた。

「あ、花火!」

 ふと、彼女がそう言った。外を見ると、夜空に花火が打ち上がっていた。

「わー、きれい!」

「本当だね」

 そこから、横浜の景色がさらに一望でき、花火が上がったことで、その景色をより一層際立たせていた。とても綺麗であった。

「河合さん」

 デート終盤、司が口を開いた。

「何?」

「僕、河合さんのことが好きなんです! 僕と付き合ってください!」

 司がそう言うと、彼女は驚いているようだった。まさか司から告白されるとは思っていなかったのだろう。

 その後、彼女が口を開いた。

「ゴメンナサイ」

 それから、彼女がそう言った。司は振られたなと思った。

 その後、再び彼女が口を開いた。

「小室君、私ね、すぐに付き合うとか考えられなくて……。」

 それから、彼女がそう言った。

「そっか……。」

「だから、その……。まずは友達からで」

その後、彼女がそう言った。

「友達から?」

「そう。友達から」

 どうやら司は振られたわけではなかった。司は少しほっとした。

「分かった。じゃあ……。」

「友達からよろしくお願いします」

 それから、彼女はそう言って、笑顔を見せた。

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