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今年も彼女ができなかった  作者: 落川翔太
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 2.


お昼休みに、司が昼ごはんを食べようとしていると、近くにいた女子社員たちがなにやらお菓子を配り合っていた。見ると、それは手作りのクッキーやチョコレートであったり、市販のマカロンであったりするようだった。

それから、司はその日が二月十四日であったことを思い出す。バレンタインデーであった。

その後、女子社員たちは、近くにいた部長や課長、それから上司などに小さな袋に入ったお菓子を渡していた。

司も自分が貰えるかもしれないと少し期待をしていた。

しかし、司はその日、女子社員たちからチョコレートを貰えなかった。彼女たちは司に興味がないのかもしれない。それか、自分はモテないから、貰えないのではないかと司は思った。

その後、すぐに司は学生時代のバレンタインの日々を思い出した。

小学生の時、司は何人かの女子たちから手作りのチョコを貰っていた。チョコを貰えた時は、とても嬉しかったし、自分はモテるのだろうと思っていた。それから、中学、高校と進学するにつれて、司は女子たちからチョコレートを貰えなくなっていた。その時、どうして司は自分にチョコが貰えないのかを考えるようになった。考えた結果、自分がモテないからだと思うようになった。そして、大学時代になっても、女子とのかかわりもあまりなく、遂には貰えなくなっていた。

唯一、毎年、司にチョコレートをくれる人がいた。それは、自分の母親であった。それから、もう亡くなってしまったのだが、中学生の時までおばあちゃんからもチョコを貰えていた。

もし自分に彼女がいれば、貰えるのかもしれないと司は思った。

夜七時、司は仕事を終えて、帰ることにした。結局、その日は誰からもチョコレートを貰えなかった。司は少し残念に思った。

夜八時頃。司が自宅でくつろいでいる時だった。玄関のチャイムが鳴った。誰だろうと思い出ると、宅配便のお兄さんが段ボールを抱えてやって来た。司はそれにサインをして、そのお兄さんから段ボールを受け取った。

その箱は、実家にいる母親からだった。そこで司はそれが毎月送ってくれる仕送りであることが分かった。

早速、司はその段ボールを開けた。中を開けると、そこには仕送りの品が入っていた。

レトルトカレーや牛丼。パスタとパスタソース、野菜ジュースにパックご飯、そして、インスタントの味噌汁が入っていた。司はそれを見て、とても嬉しい気持ちになった。

それから、一つ一つ中身を取り出していると、中に小さな箱が入っているのに気が付いた。なんだろうと思いその箱を手に取ると、どうやらそれは市販のチョコレートのようであった。

その後、司はすぐに今日がバレンタインデーであったことを思い出した。

今年のバレンタインデーは収穫がゼロだと思っていた。けれど、母親は毎年、司にチョコをくれるのだった。去年もこのようにして送ってくれていたのである。司は少し嬉しい気持ちになった。

それから、司はそのチョコレートの箱を開けて、中のチョコレートを一個食べた。それはとても甘かった。

今年のバレンタインデーの収穫は、母親のチョコレートが一つだった。

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