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side by side world(スバイス)  作者: 風見緑哉
仲間との出会い
29/32

【並世】Day7 ペアルックコーデコンテスト中編

 [さぁて! みなさんお待ちかねですよねん! ただいまよりスバイス公式ペアルックコーデコンテストを開催しますん! 司会はコーデコンテストと言ったらワッタクシ、オリゾンデがお送りしますよおおん!]


 シルクハットを被りタキシードを着た黒い猫のようなアバターが、金色の栗のような瞳を輝かせながらステージのマイクを掴んで声高に叫んでいる。

 首につけた赤い蝶ネクタイと揺れるたびにコロンコロンと音がする大きな鈴がチャームポイントのようだ。


挿絵(By みてみん)


 [今回はいつものコーデコンテストとは一味違いますん! 今日は2人で挑むペアルックコーデコンテスト! ペアとのピッタリお似合いコーデはもちろん、息の合わせ方、エンターテイメント性も重要でごっざいますん! さぁて、今日はどんなペアが登場してくれるんでしょーか! 早速いってみましょおおん!!]


 オオオオオオオオオ!!!!


 クルッティコラの街のイベント広場に設置されたステージには、先ほどよりも多くの観客が集まり熱気に包まれていた。


(こんな注目が集まる場所に出るなんて聞いてないよ〜……。うー、胃が痛い)


 ニジーとモクレンは今、ステージ脇に設置された個室の控え室からステージ上と会場の様子が映し出された映像を見ていた。

 黒いステージには大きな横断幕がかけられ、今日のコーデコンテストのテーマである『祭』という文字が大きく書かれている。ステージの目の前には審査員席が設けられ、いかにもコーデに詳しそうなオシャレな審査員たちが5人座っていた。


「もっと小規模なイベントだと勝手に思ってたけど、予想以上に大きいイベントなんですね……」


 ニジーは緊張しすぎてひとり気分が悪くなっていた。アバターを通してとはいえ注目の集まる場に立つことには変わりなく、人見知りにとっては恐怖に近い。


「コーデコンテストは人気イベントだって言ったろ。これのために他の街からわざわざ戻ってくるプレイヤーもいるくらいだぜ。まー、毎週定期的に開催されてるけどな」


 足を組んで座るモクレンは白と紫の長い髪をかきあげながら涼しい顔で映像を見ている。まるで緊張などしていないようだ。そんな度胸が欲しいとニジーは横目でチラリと見た。


 受付後、AI による1次審査とスタッフによる2次審査を何故かスムーズに通過し、ステージ上で行われる最終審査まで進んでいた。最終審査では特別審査員と観客の投票の合計点によって順位が決まるらしい。


 すでにステージでは1組目のペアが登場したようで、観客席から歓声が聞こえた。

 ニジーたちのチームは最後から2番目なので登場までまだ時間がある。


「すっごい今更なんですがステージ上では何をすれば?」

「コンテストは俺も出たことねーからよく知らんが、真ん中で司会者からの質問に答えてりゃいいんじゃねーか? ほら、1組目もそうだろ」


 1組目の様子を見ていると、確かにステージの真ん中に2人並んで司会者からの質問に答えているようだ。

 コーデについてこだわりを熱く語ったあと華麗なダンスを披露していた。


(語れるほどのコーデでもないんだけどなあ……コレ。いや最初のコーデでも語れないけど)


 ニジーは安全ヘルメットを手でくるくるともてあそびながら、自分のアバターを眺める。

 ベルデルに吹き込まれた『夏』というテーマを信じて夏のコーデを用意したところ、直前で本当のテーマは『祭』ということを知らされて大至急手持ちのアイテムだけで変更したコーデだ。


 1組目がステージから降りると、2組目、3組目と続々とステージ上に登場しパフォーマンスを行なっている。

 それを見てニジーはどんどん不安になってきた。


「わわ……それにしてもみんな派手なコーデだしパフォーマンスが凄すぎ……プロですかって感じですけど!?」

 アバター自体にギラギラとした派手なエフェクトがついていたり、パーツが動くといったギミックがあったりと、今世では着用が難しそうなファッションアバターが続々登場している。


「まー、今回はテーマが『祭』だからな。余計に派手なんだろ。だが光ればいいってもんじゃないぜ」

「最後になんかパフォーマンスしないといけないんですかね?」

「強制ではないとは思うがパフォーマンスしたほうが観客からの得点は高いだろうな」

「うむむ……どうすれば。私たち特に何も……」


 ニジーが考え込んでいると、突如控室の扉がバァン!と大きな音を立てて開いた。


「よぉ! お前らもここまで残ったんだなあ!!」

 背が大きすぎるのか頭まで見えていない。

「見切れてんぞ」


 その言葉に律儀にも屈みながら大きなガイコツが控室に入って来た。

 後ろに小さなガイコツもくっついてくる。


「1次審査で落ちるかと思ってたが意外とやるじゃねえか。だがこの最終審査が勝負だぜえ。合計得点の高い方が勝ちだからな!」


 顔全体に濃いスカルメイクをし、頭には赤いリボンのついた黒のシルクハット、黒いタキシードを身に纏ったベルデルがモクレンを指差す。

 天井の低い控室に無理矢理入ってきたため空気椅子のような体勢だ。挑発というにはどうも迫力がない。


「わかったわかった。それでいいから早く行けよ」


 モクレンは面倒くさそうにシッシと手を振りながら言う。

 その態度が気に入らないのかベルデルたちは変な体勢のまま一向に出て行こうとしない。


 今度はしゃがみ込んでニジーに耳打ちする。

((嬢ちゃん、ステージ上ではパフォーマンスをした方がいいぜえ。ただ突っ立ってるだけだと逆に減点されるからなあ))

((ベルデルさん……敵に塩を送ってくれてるのかまた妨害しようとしてるのかどっちですか……))

((普段のオレは紳士だからなあ。巻き込まれただけの嬢ちゃんにはステージ上で恥かいて欲しくないと思ってるんだぜ。なんせあのダサ着のモクレンとのペアルックだからなあ。かわいそうに))

((うー、わかりましたよ!頭の片隅に入れときます))


 実は意外といい人なのかもしれない。


「おい、ニジーに絡むんじゃねえよ。困ってんだろ」

 モクレンは呆れたようにニジーとベルデルの間に割って入った。

「ハッ! 巻き込んだ張本人が何言ってんだ。嬢ちゃんを一番困らせてんのはてめえだろモクレン」

「なんだと? 楽しんでるよなニジー!」

「そりゃ『楽しいって言え』って脅してるようなもんじゃねえかあ? なあ嬢ちゃん?」


 アクの強い2人にずいと迫られ固まるニジー。

「まあまあここまで来たら……楽しみましょー……」

 苦笑いしながらブンブンと手を振る。

(楽しむどころか緊張で口から心臓が出そうだけど……)


「親分親分、もうすぐ出番ですぜ!」

 小さい方のガイコツがベルデルをつつく。声からしてどうやらモクレンが最初に声をかけた小柄な団員のようだ。


「おお、いくかあ。さっきの決闘の雪辱をはらしてやるぜ。俺たちの最強ペアルックをその目に焼き付けるんだなあ、モクレン!」

 そう言って2人は控室を後にした。控えめにドアを閉めていったあたり丁寧さを感じる。


(もしかしてベルデルさんってもっとモクレンさんに構ってほしいんじゃ……)

 彼の様子を見てるとどうもそんな気がしてしまう。

 そんなことはお構いなしにモクレンは腕を組みながら気だるそうに画面を眺めていた。


 [さぁて! 続いては前回のペアルックコーデコンテスト優勝者の『チームコルク海賊団』! 観客席にいる団員の皆様もお揃いのスカルメイクで気合い入ってますねええん!]


(前回の優勝者!?)

 司会の言葉を聞いてニジーは驚いて振り返る。


 巨大なベルデルと、その隣に並ぶと子供のように見える子分がステージに登場すると観客席に向かって手を振っている。コルク海賊団と思わしき一団から歓声が上がった。


「今宵、皆様をメキシコの祝祭『死者の日』にご招待いたしましょう」


 2人はステージ真ん中までくると姿勢を正し、同時にシルクハットをとり優雅に挨拶をする。

 シルクハットの中からオレンジ色のマリーゴールドのような花のエフェクトがステージ一面に広がった。


 ニジーはその様子をみてステージ上を映す画面に釘付けになっていた。


「勝負を挑んでくるくらいだから出場経験はあるのかと思ってたけど、まさかベルデルさんたちが前回の優勝者だったなんて……知ってました!?」

「いんや、ここ半年ぐらい俺もスバイスに来てねーから知らん」


 絡んできている時は厄介そうな性格ばかりが目立って特別なコーデには見えなかった。

 先入観なくコーデだけ見ると、全身黒で統一されているところに差し色が散りばめられ上品な中に華やかさがあるコーデだ。


 いつの間にかカラベラを模したユニークな人形を2人同時に息ぴったりに操っている。


 ベルデルたちのパフォーマンスが終わると、会場は拍手喝采に包まれた。

 観客たちの盛り上がり方からして今まで出てきたどのペアよりも評価が高そうだ。


 だがそれを眺めるモクレンに焦りは見えない。ただ単に興味がないだけだろうか。


「えええ……なんかベルデルさんたちのパフォーマンスすごい盛り上がってましたよ……さすが前回優勝者って感じ」


(あのパフォーマンスに勝とうとするなんて、さっき即席でチーム組んだばかりの私たちには無謀じゃない!?)


 そもそもパフォーマンスする予定は最初からなかった。

 だが、このままただステージに上がるだけではベルデル達に勝てるとは到底思えない。


 そんな時、ニジーはあることを思いついた。


「あのっ、モクレンさん! 剣に炎がぶわあってなるやつステージ上でできませんか?」

「剣に炎……紫炎華(しえんが)のことか? ありゃ剣が一定のダメージを食らわないと発動できねーよ」

 モクレンは左腕につけているバングルに右手を添え、何かを引き抜くような動作をした次の瞬間には紫色の大剣が右手に握られている。

「私が思いっきり叩いたくらいじゃ無理?」

 モクレンは軽く笑い、剣をトントンと指で叩く

「無理無理。何時間かけても発動できないだろうな。せめてベルデルくらいの攻撃力がねーと」

「ベルデルさんの一撃があれば……」

「何を企んでんだ?」


 ニジーはアイデアを耳打ちする。

 それを聞いてモクレンは驚いたかように目を見開き大きく笑った。


「ははっ、面白れーじゃねーか!成功するかは分からねーが試してみるか。っとそれをやるには仕込みが必要だな。ニジー、使いを頼めるか?」

「わかりました!」


 こうして慌ただしく準備をしているうちにニジーたちの番が近づいてきていたのだった。

いつもside by side worldをお読みいただきありがとうございます。

20日土曜日の更新予定でしたが、予約投稿がうまくいっていなかったようで再投稿しました。

Day7は後で再編集する可能性がありますのでご了承ください。

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