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side by side world(スバイス)  作者: 風見緑哉
仲間との出会い
26/32

【並世】Day7 アバター街 前編

(いやでもペアルックって同じ服を着るってことよね……? この人と私が合わせられる服なんてある??)

 ニジーは前を歩くモクレンのアバターをじっくり眺めながら後を追いかける。


 ウェーブのかかった紫と白の長髪に、筋骨隆々の長い四肢、豊満な巨乳、がっちりとした左腕には大剣を出した金色のバングルがはめられている。軍服のような白いコートを羽織り、ハイヒールの音を響かせながら堂々と歩くその姿は、さながら戦の女神のようだ。


 ニジーは今、モクレンと一緒にアバター街に向かっていた。


 イベント広場でコルク海賊団団長のベルデルに挑発されて『ペアルックコーデコンテスト』で勝負することになったモクレンに巻き込まれる形で、ニジーもコンテストに参加することになった。


「そういえばなんであのベルデルって人に絡まれてたんですか?」

 ニジーはモクレンの横に並んで見上げながら問いかける。


「んー? あいつのやり方が気に食わなくて反乱起こしてコルク海賊団を抜けた俺への当て付けだろーな」

「元々は仲間だったんですか!?」

「そ、コルク海賊団は元々俺の古巣なんだ。つってもベルデルの前にグラウプってやつがギルドマスターやってた時代だけどな」

 アバターの雰囲気からして元海賊と言われるとなんとなく納得してしまう。


「グラウプって確かsbis図書館から伝記盗まれた人ですよね」

「おっ、あの弱虫船長そんな有名になってんのか!」

 モクレンは驚いたようにニジーの方を振り返る。どこか嬉しそうだ。


「あいつの伝記が盗まれたのには驚いたが、まだ犯人も盗んだ目的すらわからねぇ。俺はそれを調べるためにわざわざ大図書館オルパイアに来たんだ。ったくベルデルの野郎邪魔しやがって……」


 ブツブツと文句を言いながら歩き続ける。

 言葉遣いは乱暴だが、悪い人ではなさそうだ。


 大きなシルクハットを被ったタキシードの紳士の像の前までくると、モクレンは足を止めた。


「着いたぞ。ここがアバター街だ」

「おおー、なんかオシャレな街って感じ!」


 イベント広場から中央通り沿いに奥に行ったエリアには、アパレルショップのような店舗が立ち並んでいた。

 どのお店もショーウィンドウの中にアバターがコーデされた状態で陳列されている。


「今のアバターに装着したり着せ替えたりするファッションアバター系はこの辺、素体自体を変更するボディアバター系は向こうだ」

「こんなにいっぱいお店があると迷っちゃいますね〜」


 ニジーは興味深そうに辺りをキョロキョロと見渡す。

 アバターにもハイブランドからローブランドまであるようで、それぞれのお店が特色のあるアバターを取り扱っているようだ。


「ベルデルさんが今日のコーデテーマは『夏』って言ってました」

「『夏』かー。夏っつったら水着しかねーだろ!」


(水着……ファフィアウルの水着姿ってどんな……??)

 ニジーは自分のアバターを眺める。全身を羽毛で覆われているため水着の必要性があるのかどうかすらわからない。人間アバターと同じような水着を着用してコーデとして成り立つのかもわからない。

 架空の種族のファッションコーデをするためには予想以上に想像力が試される。


(モクレンさんみたいに人間アバターだったらまだコーデしやすかったかもなあ。でも今から変えるのも時間なさそうだし……)


 数あるショップの中から、モクレンは特に迷うことなくひとつのお店に入っていった。

 黒と金を基調としたクラシックモダンな外観で高級感の漂うショップだ。雰囲気からしてハイブランドのショップに違いない。


(ひゃ、ひゃあ、なんか高級そうなお店……! 初見でこのお店は選ばないわよね。御用達なのかしら)


 ニジーもモクレンの後に続いておそるおそる中に入る。

 内装は淡い金色で、さまざまなファッションを纏った真っ白なアバターが壁一面に並んでいる。


「いらっしゃいませ。ごゆっくり……ってモクレン様じゃないのっ♡ お久しぶり。今でもうちのアバター着てくださってるのねぇ」


 ピンク色の髪を刈り上げたショップの店員らしき男性がクネクネと近づいてきた。この店員もNPCなのだろうか。


「前に来た時からかえてねーよ。このアバターだと強いヤツから絡まれる率が高くて面白いぜ」

「それは何よりですわぁ♡ 本日はどのようなアバターをお探しですかぁ?」

「この店にある『夏』っぽいアバターを全部出してくれ。こいつとのペアルックコーデを考えなきゃならねーんだ」

 モクレンは後ろに隠れるようにして立っているニジーを指差す。

「あッら! かわいい小鳥さんねえっ♡ ニジー様いらっしゃいませ。モクレン様とのペアルックなんて妬いちゃうわぁ。ゆっくり見ていってくださいねぇ」

「は、はい」

 内装も店員も眩しいほどキラキラしていてニジーはたじろぐ。


(こういうお店慣れてないな……今世でもファッションとかあまり興味ないし。コーデはモクレンさんに任せよっと)


「お探しのアバターは『夏』でしたねぇ。今一覧をお出ししますのでその場でお待ちくださいねぇ」


 店員はニジーとモクレンの2人の周りを指でぐるりと囲み、「コーデ『夏』」と声高らかに言うと、壁一面に並んだアバターの着用しているファッションが全て変わった。

 水着や浴衣、タンクトップシャツなど夏らしいファッションがずらりと並んでいる。


「わっ! アバターが全部変わった!? 他のお客さんもいるのに!」

 ニジーは驚いて辺りを見渡す。

「変なところ気にするんだな? この検索結果は俺たちにしか見えてねーから大丈夫だ」

「ではごゆっくり〜♡」

 店員は丁寧におじぎをすると他の客の元へ接客しにいった。


 モクレンはちょうど目の前に出現したスミレ色の浴衣を着たアバターに触る。

 すると次の瞬間には、モクレンが目の前のアバターと同じ浴衣を着ていた。


「モクレンさん浴衣! かわ……カッコいい……です、ね?」

 肩幅が広くマッチョな上、巨乳すぎるためどことなく女性ものの浴衣が似合っていないが、そんなことは口が裂けても言えない。


「こーやってファッションアバターに触るだけで試着ができるぜ。パーツごとの試着も可能だ。ニジーも試してみな」

 ニジーも同じ浴衣に触れると、次の瞬間にはスミレ色の浴衣を着ていた。目の前にカラーパレットが表示され、色も複数から自由に選べるようだ。


「ほわー、面白い! 浴衣のファフィアウル超可愛い!」

「自分で言うか?」


 いたるところに配置されている鏡の前でくるくると回りながら試着した姿を確認する。ファフィアウルに人間もののファッションを着させても意外と違和感はなさそうだ。

 同じ浴衣を着てモクレンと並んでみるが、全身のバランスが違いすぎてペアルックどころか違うファッションに見える。


「こいつはちっとダメだな。そういえば全身セットのコーデは得点が低いって聞いたことあんな」

「上下別々にコーデしなきゃいけないってことですか? 難しそう……」

「そうだ。だがコーデなら俺に任せろ!」

「おー!」

 ニジーは尊敬の眼差しでモクレンを見つめる。

「俺のコーデ(りょく)を見せてやるぜ。少し待ってろ」


 そう言うと店の奥にあるアバターのところまで歩いていった。


(モクレンさん頼もしい〜! 今のアバターもカッコいいし、コーデのお手本にさせてもらおっと)


 ニジーは付近にあるアバターを1着ずつ試着しながらモクレンが戻ってくるのを待つ。


(ほわー! このはっぴ可愛いかも! 模様も色もたくさんあって迷うなあ……って買わないけど)

 浴衣も可愛かったが、ファフィアウルの等身だとはっぴも意外と似合う。

 はっぴの色と模様の組み合わせを試すのに夢中になっていた時だった。


「おーいニジー! これなんかどうだ!」


 カツ カツ カツ


 モクレンは自信満々そうにヒールの音を響かせながらモデルウォークで近づいてくる。

 ニジーは声のする方を一瞬見て、反射的に顔を背けてしまった。


(ひゃあ! ビキニ!?)


 アバターだと頭でわかっていても水着姿のダイナマイトボディを見せつけられるとどこか気恥ずかしい。


「どうだこのコーデ。完璧に『夏』だろ!」

 モクレンはニジーの横までくると腰に手を当ててポーズをとった。


 露出度が高い! と少し照れながらモクレンのアバターを下から見上げる。


 真っ赤なヒールに真紅のビキニ、そして青のボックスタイプスイムウェア。


(うわあ……とんでもないプロポーショ……)


「ん?」


 一瞬見ただけでは気付かなかったが、よく見たときの違和感にニジーはスッと冷静になった。


 ニジーはモクレンが上半身に着用しているビキニをじーっとながめる。

 そして下半身に着用しているボックスタイプの水着もじーっとながめる。


 ぐるぐるとモクレンの周りを回りながら違和感の正体を探す。


「ん? あれ?」

「どした?」


 目をゴシゴシしながら少し離れてモクレンの全身を見た。

(ずっと女性アバターだと思ってたけど……)


 モクレンが元々着ていたコーデでは前垂れのついたコルセールパンツをはいていたため違和感に気付かなかった。


「だ、……男性?」

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