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side by side world(スバイス)  作者: 風見緑哉
side by side world へ
12/32

【並世】Day4 はじまりの街へ

 4 日目。


 パーソナルバディの『パバディ』を仲間にした二ジーは、パバディのナビゲーションミスにより、輝鏡花の聖域とは反対方向に進んでいた。


「ここからまた聖域に戻るのは大変そうだから、マップの端沿いに進んでみようか」

 [二ジーに ついていきます]


 二ジーはマップの雲のような図柄で隠れたところが昨日から気になっていたため、そのまま進んでみることにする。数十メートル前方で森の木々は途切れているように見える。


 するとパバディが二ジーの前に回り込み、赤く光った。

 [警告 警告 このさき がけです]

 危険な場所はちゃんと教えてくれるようだ。


「教えてくれてありがとう。どうなってるのかちょっと覗きたいだけ」


 おそるおそる足をすすめて、森の一番端の木の下まできた。

 その先に広がっていた景色に二ジーは言葉を失った。


「ほわあ……何ここ……何ここ!?」


 思わず2回呟いてしまった。

 マップによればここは鏡樹の森の南端、二ジーとパバディは崖の上にいた。

 風は崖のほうに向かって吹いていて、気を抜くと吹き飛ばされてしまいそうだ。


「まさかこんなに高い場所にいたなんて」


 現在立っている場所から数百メートルはあるかと思われる崖下には、まるでその部分だけスプーンでくり抜いたかのような森に囲まれた巨大な街が広がり、街を中心に無数の道が光芒のようにあちこちへと伸びている。

 街の背にも崖があり、岩肌には巨大な太陽のような彫刻が刻まれている。


 街の上空には、十字の模様が入っている時計を中心に埋め込んだかのような小さな島が浮かび、気が遠くなるほど長い階段で地上と繋がっていた。


「もしかしてあそこが『はじまりの街』かな!?」

 少し期待してパバディの方を向くが、淡々とした返事が返ってきた。

 [まちの ゲートをこえれば マップ とうろくできます]


(そうかもね! くらい言ってくれると盛り上がるんだけどなあ)


 二ジーは遥か下に広がる街を眺め、困惑した。

 強い風が下から吹上げ、髪を激しく揺らす。


(……いやそもそもあんな下までどうやって降りるの? まさか飛び降りるってことはないよね……)

 バーチャル上とはいえ高所恐怖症の人だったら直視できないほどの高さだろう。


「あの街に行くにはどうしたらいい?」

 [ここから 西 10分ほどに ヒント あるようです]


(ヒントってなんだろう?)


 パバディを疑うわけではないが一応マップを確認すると、今いる場所から少し西に行った場所が輝鏡花の聖域から繋がっている一本道の終着点のようだ。

 マップには『サバルデのりば』と書かれていた。


(お! 何か乗り物で移動するのかな?意外とすぐに街まで行けちゃいそう)

 予想以上に先に進んでいたことに二ジーは喜ぶと、マップを確認しながら崖沿いに森の中を進んでいった。


 しばらく崖沿いを歩くと大きな道のところに出た。

 他のプレイヤーらしき人々もおり、道の先にある『サバルデのりば』と書かれた看板の前には多くの人が集まっている。

 その先の崖には、崖の下から続くとてつもなく長いまっすぐな太い茎を持った巨大な花が横一列にまるでエレベーターかのようにゆっくりと上下していた。


挿絵(By みてみん)


「ほわー! 何あの茎が長い花!?」

 [サバルデとよばれる 原生しょくぶつです 高いがけのふもとにだけ咲き 光合成と水の吸収のために くきを伸ばしたり縮めたりします]

 パバディが昨日よりも少し流暢になってきたようで二ジーは驚いた。


 乗り場から少し先にあるサバルデを見ると、花の真ん中に10人程が座って乗っている。開いていた大きな花びらが垂直に立ったかと思ったらそのままゆっくり下降して行った。


(花に乗れるのね。途中で止まったりしないのかな……でもよかった。飛び降りるとかジェットコースター系じゃなくて)


 風が強いのが少し気になるが、垂直に上がっている花弁が風よけになっているのが、乗っている人たちが吹き飛ばされる気配はないので安心する。


 サバルデ乗り場と書かれた看板の横には、下のほうが見えないほど急で長い階段が続いている。

 一応階段で降りるという選択肢もあるようだ。ちらほらと階段を下っていく人も見受けられた。


(階段でいく人の気が知れないわ……こんな階段降りてたら途中で失神しそう)


 階段近くの案内人らしき人が大きな声で周りの呼びかけた。

「クルッティコラの街に行かれる方はこちらです! まもなくこちらのサバルデが下降しますので、下まで行かれる方はお早めにご乗花ください。次に戻ってくるのは約1時間後です」


(ナイスタイミング! あの花に乗って下まで降りよう)


 もうすでに8人程度は乗っていて、花まではまだ少し距離がある。

「あと2、3名ご乗花希望の方いらっしゃいませんか!」


(ああー! 待って待って!)

 焦って走り出した。


 ドッ! ……カランカラン

 その時、二ジーは何かにぶつかった。

スバイスの雰囲気を感じていただくために背景の挿絵を入れたかったのですが、あまり時間がなかったのでラフスケッチだけになりました。余裕のある時に背景も描いていければと思います。

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