プロローグ
初投稿です。
至らぬ点があると思いますが、どうぞよろしくお願い致します。
「親父!親父ッッ!」
「せ…かい…聖海か……っあっぐ…」
「しゃべんな!傷口が開く…!」
ある冬の日。冷たい冷たい刺すような雨の降る日。
真っ暗な路地裏。聖海は瀕死の父を腕に抱えて叫んだ。
「俺の記憶が戻る前に死ぬのかよ!?約束したじゃねぇか…12歳までの記憶と、今でも飛んでく記憶を取り戻して…こんな奇病治すって!!」
父に空いた無数の細かい穴から、血溜まりが広がる。
聖海についた赤い欠片は滲んで、じわじわと服を染める。
「す…まないなぁ。お前との約束は…果たせそうにねぇ。」
段々かかってくる体重が父に残されたタイムリミットが近いと気付く。
そう考えるともう本当に時間がない。
「ふざけんなよっ親父らしくねぇ!!最後まで諦めないのが親父のモットーだろうが!!!」
「ほんとうに、すまない。最期までお前の父親でいられて良かった…それだけが俺の救いだ。」
ずしり、と一気に腕に体重がかかる。父は既にぐったりとしていた。
「親父!クッソ…!死ぬな!」
父は最後の力を振り絞って、デカい口を開いた。
「最期に、最期にこれだけ胸に刻んどけ。俺が調べて唯一掴んだ手掛かりだ。聖海の奇病は聖海自身の中にある…これで謎を解け…!託したぞ…!」
ぱたり。
「親父!!親父!!!」
あぁ。遂にこの時が来てしまった。意味のわからないヒントを残して。
無機質な時間が流れていく。雨の温度と同じになって行く父の体温はもう血の通ったものじゃない。父には着ていたダウンジャケットを被せた。明日の朝には回収に来る。
いつかこの記憶も落としてしまうのだろうか。不意に記憶が飛ぶこの奇病が治る日が来るのだろうか。
12歳までの記憶を拾えるだろうか。
聖海は歩き出した。
自らが落とし続けてきたた『おのしもの』を探しに。
父が残したヒントを胸に刻み、この奇病に立ち向かう決心をした。
その足は強く、重かった。
「僕を見つけるまで行進をつづけるんだね、ーーーー。」
その日から実光 聖海の『おとしもの』をさがす忘却世界が幕を開けた。
楽しんで頂けましたでしょうか。
少しでも皆さんの記憶に残れば幸いです。
次回更新もよろしくお願い致します。