No.2 自室を録画
何故か最近、物がなくなる。
金目の物がなくなっている様子はないので、空き巣ではない。
だいたい消耗品や食料がなくなる。
煙草やカップラーメン、ボールペンやティッシュなどの生活で使う物がなくなる。
今日も朝起きたら四個入りで百円のライターが一個無くなっていた。
でも、なくなるだけじゃない。
増えている時もある。
ボールペンやパチンコの景品などが、気がつくと置いてあったりする。
知らない間に入り込んだ同居人でもいるのかと、気になった俺は友人に頼み込んで、小型のビデオカメラを借りてきた。
二十四時間撮影しておけるものだ。
それを鞄の陰などに設置して録画をスタートさせた。
仕事から帰ると俺は、一日の録画分を昨日の夜部分から再生し、早送りをした。
俺が眠るまでは何もなかった。
映像の中の俺は万年床に寝転がったまま昼まで動かない。
頭の中に?が浮かぶ。
窓の外から入る光が部屋を照らしてから起き出し、伸びをして体をほぐした後で湯を沸かし、カップ焼きそばの飯を食うと、TVを点けて眺め始めた。
俺はTVを点けたままスマホを取り出してモバイルゲームをして、それに飽きるとスマホとTVを消して、部屋着から着替え、外へ出かけた。
どういった状況なのか理解できない。
三十分後に戻った俺は、借りてきたらしきDVDをレコーダーに入れ、映画を見始めた。俺は映画を見終わると、立ち上がりトイレに入る。
玄関ドアの鍵が開く音がした後、俺が部屋に入ってきた。
嫌な温さを持った汗が、背中を滑っていく。
俺は立ち上がり、カメラに向かい、再生を止めた。
もう一度、俺が部屋に入ってくる前、トイレのドアを開けた部分から再生する。
今度は早送り無しで。
同じように俺がトイレに入り、それとは別の俺が部屋に入ってくる。
時間が飛んでいたり、映像が加工されたりしている様子は発見できなかった。
立ち上がったまま深く息をして心を落ち着かせる。
自分の部屋を見回す。部屋の中はカメラの映像と同じ状態だ。
だが、俺の覚えている部屋の状態とは違っていた。
床には空のDVDケースが転がっている。
自然と視線はトイレのドアへと向かった。
俺はトイレの前まで移動し、ドアを開けようとして止める。
ノックしようとして……止めて、部屋を出ることにした。
コンビニで時間を潰し、ファミレスで夕飯を済ませ、カラオケ店に入る。
曲を入力せずに考えた。
今いる俺は誰?
家にいるであろう俺が俺であるなら、俺は外から来た俺で……。
今日の出来事を思い出す。
仕事場から帰る時からしか思い出せなかった。
今日以外の事は鮮明に思い出せる。
俺はこの現象をどう受け止めればいいのだろうか?
色とりどりの光が明滅する部屋の中で、俺は途方に暮れた。
本当は気づいていないだけで、あなたもドッペルゲンガーなのかもしれない。