破壊者
彼の名はレイ。
彼の家の家族構成は、父、母、レイの3人家族。
ハルという名の幼なじみもいた。
家は決して裕福とは言えなかったが、いつもの様に学校へ通い、勉学に励み、友達と遊び…充実した毎日を過ごしていた。
ハル「おはよう!レイ!」
レイ「おはよう。」
ハル「今日家庭科の実習あるんだよ~めんどくさーい(笑)」
レイ「めんどくさいとか言うなよ、僕だってやりたくないのに(笑)」
毎日2人はこういうやりとりをする仲だった。
レイが11歳になる頃、ある能力に目覚めつつあった。触れるもの全てを粉々にする力、『破壊』。
目覚め始めた能力ゆえにレイは制御が出来ず、自分が大切にしていたものだけでなく、家族や友達が大切にしているものまで壊してしまうようになった。
次第に家族や友達はレイを避けるようになった。あれだけ平和に過ごしていたのに…あれだけ仲良く遊んでいたのに…
触れるもの全てを破壊してしまうレイの存在を周りのみんなは邪魔者扱いするようになった。ただ1人を除いて…そう、幼なじみのハルだ。
無論ハル自身も自分の持ち物を壊されている。それでもハルはレイから離れようとはしなかった。
レイ「もうほっといてくれよ…ハル…僕はもう、なにも壊したくない…」
ハル「やだよ…そんな理由だけでレイのこと見捨てるなんてできない!」
レイ「父さんも母さんも、『お前は悪魔だ』って言ってくるし、友達もみんな僕をいじめるようになった…」
ハル「そんなのいちいち気にしてちゃダメだよ!みんなが何しても、私は絶対レイのこと見捨てないから!」
1ヶ月が経った頃にはレイの力は国中に広まっていた。
国民全員がレイの力を恐れていた。そう、レイの居場所はもうどこにもなかった。
「この少年の力は危険だ。」
「本格的に我が国に被害が出る前に、この少年を追放せねば…」
「いえ、追放するだけではいつか復讐しにもどってくるかもしれません。今直ぐにでも始末しておくべきです。」
「それもそうだな…逆恨みされて国を滅ぼされてはかなわん。」
「早急に部隊を編成しろ、国の脅威となる力を持った少年を、今すぐ始末してしまうのだ。」
ハル「レイ!聞いて!国が部隊を作って血眼になってレイを探してる!どこかに隠れて!」
レイ「隠れるって…どこに…」
「どこでもいいから、捜索の目をかいくぐれる場所に!」
父親「レイ、部屋に隠れなさい。」
レイ「父さん!?」
父親「能力が危険とはいえ、お前は俺の息子だ…かくまうことくらいはできる…」
母親「何か聞かれても誤魔化しておくから安心しなさい!」
レイ「父さん…母さん…」
ハル「よかったねレイ!ひとまずレイん家に行こう!」
そうしてレイは自分の部屋に隠れることにした。なぜかハルも部屋に入ってきたが()
レイ「なんでいるんだよ」
ハル「わーひどい、幼なじみだもん。レイがこんな時くらいそばにいないと♪」
レイ「………(笑)」
そんなことを話していた時、レイの部屋の前で大きな物音がした。
レイ「!?」ハル「!?」
ハル「あれ!?ドアが開かない!」
レイ「え!?」
どうやらドアの前に何か重いものが置かれたようだ。
レイ「……父さん?母さん?」
父親「レイ、お前がいるとみんなが不幸になる。」
母親「そんな力を持ってるなんて…あなたなんて産まなきゃよかった。」
レイ「そんな…」
父親「お前は、お前の力は、存在してはならない。大人しく捕まるんだ。」
ハル「おじさんもおばさんも…どうして…?」
母親「ハルちゃん、あなたの両親もレイは死ぬべきだと言ってる。どうしてあなたはレイの肩をもつような真似をするの?」
ハル「自分の子を…お二人は…自分の子供が殺されてもいいんですか…?」
父親「それが国を、世界を守るためなら仕方の無いことだ。」
ハル「……レイ!窓から逃げよう!」
母親「待ちなさい!こっちです!早く!」
レイ抹殺部隊「逃げようとしても無駄だ!」
レイ「…………」
レイ「ハル、伏せててくれ。」
レイは力を込めた拳を部屋のドアに向かって思いっきり振りかぶった。
大きな音をたてて自宅は崩壊。両親、抹殺部隊を巻き添えにして…
なんとか自宅から逃れたレイとハルは、レイがほとんどの人に避けられている間も、変わらず接してくれた数少ない、信頼のおける友人のもとを渡り歩いた。
が、その友人と呼べた者達もレイ達を裏切り、部隊に居場所を密告していた。
それでもなんとか町外れの倉庫まで逃れたレイとハル。すっかり日は沈み、辺りは冷え込み始めていた。
レイ「ハル…これ以上僕と一緒にいたら、ハルまで酷い目に合うかもしれない…もう僕のことはいいから…」
ハル「絶対嫌!」
レイ「!?」
ハル「なんで気づかないかなー(笑)私ね…」
ハル「…………」
レイ「?」
ハル「レイのこと好きなんだよ。」
レイ「!!」
ハル「も、もっと早く言いたかったけど…恥ずかしくて…さ(笑)」
レイ「ぼ、僕も…レイのこと、好きだよ…!」
ハル「…え?」
レイ「僕も…なかなか言えなくて…伝えて、ハルに嫌われたらとか考えちゃって…」
ハル「…嫌いになるわけないじゃん(笑)」
レイ「……ありがとう……ほんとにありがとう……」
ハル「泣いてる?」
レイ「…………」
ハル「朝になったらさ、頑張ってこの国から出よう!」
ハル「そうしたら、レイの居場所も見つかるかもしれないし!」
レイ「うん…」
2人は寒空の下身を寄せあって眠りについた…
日が昇ろうとしていた頃、先にハルが近付いてくる足音に気づいて目を覚ました。レイは精神的な疲労もあってか、すぐに目が覚める様子はなかった。ハルが周囲を警戒していると、
「君はなぜそこまでしてその少年を守ろうとする?」
声の主はこの国の大臣だった。
大臣「その少年の力は恐ろしい。その拳一振で国を滅ぼすことだってできる。そんな力を秘めてると知っておきながら、その少年を守るとは…これは、謀反とみてよろしいかな?」
ハル「レイは…まだ力の制御が出来てないだけですし、国を滅ぼそうなんて考えていません!それなのに一方的な決めつけで殺そうとするなんて、納得出来ません!」
大臣「君はその少年の心でも読めるのかね?」
ハル「…………」
大臣「目に見えている脅威の芽を、摘み取らない理由はないでしょう?さぁ、そこを退きなさい。」
ハル「…嫌です…」
大臣「そのままそうやってその少年の前に立つのなら、私達は君も殺すことになるよ?」
ハル「レイは…優しい人なんです…親戚の子の面倒も見るし、困ってる人がいれば手を差し伸べるし…ご両親の結婚記念日にプレゼントを選んだり、」
大臣「これが最後の警告だ…そこを、どきなさい。」
ハル「…………」
レイ「……ハル?」
ハル「レイ!」
大臣「チッ!起きやがったか、構わん!まとめて撃て!」
【鳴り響く何十発もの銃声】
この時ハルはレイに被さり、無数の銃弾からレイを…守っていた…
レイ抹殺部隊「撃ちかたやめ!弾を補充しろ!」
レイ「………ハル……?」
力なく倒れるハル。だがレイもまた数発、弾丸を受けており、膝から崩れ落ちる。
レイ「…ハル…なんで…」
ハル「…………」
レイ「ハル……ハル……!」
ハル「……きて……」
レイ「?!」
ハル「ぜったい……いきて……」
そう言い残して脱力するハル。
大臣「余計なことをしたな、小娘。その少年の肩を持たなければこんな死に方をすることもなく、真っ当に生きられただろうに。」
レイ抹殺部隊「大臣、弾の補充が完了しました、仕留めますか?」
大臣「世界の平和のためだ。あの少年には、ここで死んでもらうしかない、やれ。」
レイ抹殺部隊「総員、構え!」
レイの中であらゆる感情が入り乱れる。
怒り…悲しみ…嘆き…憎しみ…
動かなくったハルの体を抱きしめ絶叫し始めるレイ。
レイ「ああああああああぁぁぁ!!!!」
気がつくと、周りの景色は更地に変わり、先程まで銃口を向けていた部隊と大臣が地面に転がっていた。
そして腕の中には動かない血まみれのハル。
これまでに何が起きて、自分が何をしたのかを悟るには十分すぎた…
レイ「そうか…僕は、ハルを守ることも出来ず、憎しみに任せてこの人たちを全員…」
自分のしたことに後悔を覚えるかと思いきや、レイの中では
レイ「…因果応報だ…ざまぁみろ…」
としか考えられなくなっていた。
ハルの遺体を埋葬したレイは心に決めた。
レイ「もう誰も信じない。僕を迫害し、一方的に攻撃を仕掛けてきた人間達に復讐を始める。そしてこの世界を破壊し尽くしてやる…!」
そこへ1人の老人がやってきた。
????「強い復讐心を持っているな…」
レイ「誰だ。」
????「俺の名はモルディア。どうだ、この世界を破壊したいか?」
レイ「あぁ、そのつもりだ。僕は、この世界を破壊し尽くしてやる。」
モルディア「その心意気、気に入った…俺と共にこの世界を壊してみないか?」
レイ「…とてもあなたを信用する気にはなれませんが?」
モルディア「確かに。だが信用するか否かはお前に任せよう。ただ、俺の世界に対する恨みは、確かだ。」
レイ「……いいでしょう。僕が、あなたが世界を滅ぼしたいと思っている、と判断すれば信用しましょう。」
モルディア「いい根性をしているな…ではお前はこれから『デストロイ』(破壊者)を名乗れ。」
レイ「デストロイ…」
モルディア「その復讐心は必ず…世界をひっくり返すだろう…」