3話>>決心
「…で、俺はなんでここにいるんだ?」
「え〜、ボクの話を遮ったくせに〜」
「いいからはよ」
不満そうな自称神のべルがダラダラ浮きながら話し出す。
「ボクがうっかり花瓶を下界に落としちゃって〜、キミに当たって死んじゃったから、申し訳なくって、元いた世界とは違う世界へ転生させてあげようと思って〜!」
「そうか」
「えっ、もうちょっと怒るとこじゃない?ここ」
「別に生きてる意味もないし…」
唯一俺を愛してくれた母も死に、母を置いて他の女と出ていった、父親だった男とも小学校を卒業して以来連絡を取っていない。
親戚からも爪弾きされて一人暮らしをしていた。
クラスでも浮いていた。
…仲良くしようとは思ったことないけどな。
まぁ、人間社会では自らと違うモノを排除しようとするのはよく見られることだ。
特に、俺のような白い髪、女子よりも白い肌、毛細血管の色である赤色の瞳を持つアルビノなんかは。
「どぉせ自分の見た目なんかを悲観してるんでしょ〜?」
人間ってよくわかんない、とべルが呟く。
「…お前にどうこう言われる義理ねぇよ」
ベルを睨みつけながら吐き捨てる。
俺だって好きでこの容姿に生まれたわけじゃない。
生んでくれたことに感謝しろ、と世間一般では言われるが、そいつらみんな五体満足の"普通"の人だ。
「でも〜、ボクが春兎くんを送ろうとしている世界では、キミの容姿は普通だよ〜?カラフルな髪と瞳、人間だけじゃなくて獣人やエルフ、ドワーフの住む世界だよぉ」
「どうしてそこまで俺を転生させたいんだ」
あまりにも親切すぎるのではないか。
自分の容姿については置いておいて、軽い疑いをベルに向ける。
「だから〜、ボクのせいでキミが死んじゃって申し訳ないからぁって言ってるじゃん」
自分の髪の毛を指先で弄りながらベルはそう言う。
まぁ、別にデメリットがある訳じゃなさそうだ。
「ふーん。じゃあ俺をその世界に連れてけよ。何考えてるかわかんねぇが、付き合ってやるぜ」
母さん、俺は新しい世界で生きてみようと思う。
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