5話 力づくで開けちゃいけないって思ってた。
初投稿の作品の5話目です。
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「ふわああああああああああ!!!」
冴子が突然絶叫した。
そして、へなへなと床に崩れてそのまま虚空をみつめる。
その身はワナワナと震わせていた。
快適馬車生活三日めの朝こと。
「どうした? おい。ついに頭がおかしくなったか?
やべえか? イカれちまったか?」
騒がしい目覚めだった。
ディーテ産ソファーの寝心地は現代人には普通だった。
が、明治生まれ大正育ちの冴子には感動的だったらしい。
昨晩、 その前と冴子はだいぶはしゃいでいた。
そして、今、精神を病んだようだ。
(因果関係不明)
「マスター、どうぞでしてよ」
そういう冴子は真剣な顔して、自分の首をオレに渡した。
「ん?」
オレは思わず受け取ってしまうが、きょとんとしてしまう。
そして、オレの手の中で冴子の首は語る。
「冴子、恥じ入るばかりでして!
馬道家長女として、将来の嫁入りに備えて、
門外不出の夜の四十八手を学んでおきながら、
この3日マスターに禁欲を強いてしまして」
そう言って、胴体は身悶えていた。
「さあ、その苦しそうなマスターのご子息に、
たった今閃いた私の四十九手目、
切断首による口淫ご奉仕存分になさいまして!
マスターための冴子の首、お好きになさってよ!
さあ! さあ!」
「生首オ○ニーは、さすがにやべえだろ!」
思わず朝っぱらから元気に冴子の首を胴体にダンクする。
朝から元気な男の生理現象を目撃したご令嬢が混乱した。
そう思うことにした。
「うーん、首だけの方が便利だと思いましてよ」
冴子がまだやべえこと言ってるのはきっと気のせいだ。
傾げた首が床を転がるけれども、気のせいだ。
全裸幼女ティシーは、空中プカプカ浮きながらグースカ寝ていた。
まあ、それもきっと気のせいだろ。
あははは。寝ぼけてるな。
・・・・・・
この日、オレたちはゲートにたどり着いた。
ゲートとは各階層をつなぐ魔法の門らしい。
それは、不思議な文様が刻まれた大きな大きな扉だった。
平均日本人男性なオレの身長と比べても、4、5倍くらいあった。
にもかかわらず、厚さはない。
ハリボテのようにそびえ立つが、どうして立っているのかは不明。
元の世界の物理法則からしたら説明がつかない。
絶妙なバランスを保ってたとしても風で倒れるだろう。
「で、これ、どうやって開くんだ?」
荒野の小高い丘に堂々と存在するゲート。
まさか公共施設のように誰でもウェルカムというわけではあるまい。
開くには特殊の鍵とか神の力とか必要なのかもしれない。
「任せてくださいまして!」
冴子が自分の首を放り投げて、嬉々として駆け出していった。
「うおい? 行っちゃったぞ。。。」
「行ってしまったの。。。」
道端に転がる首。馬車脇に残されたオレとティシー。
電光石火だった。
「ぐおおおおおおおおおおおお!」
押す。そして押す。
冴子は必死に扉をただ押す。
そして、ティシーが口を開いた。
「のう」
「ん? なんだ?」
「いや、この扉は魔力であけるもんじゃが?」
「マジかよ」
ゴゴゴゴゴ……と、低い音がする。
扉は少しずつ開いていく。
オレとティシーがぽかんとしているうちに。
「ふうー、爽、快☆」
こじ開けられた扉の前、一仕事終えて冴子は首の汗を拭う。
でも、ポ○リスエットのCMみたいな爽やかさはなかった。
(首がないからな)
前々からちょっと思ってたんだけど、
冴子って、
ひでえ脳筋?
・・・・・・
「うひゃああ、異世界だな、異世界してるな!
おい! 冴子! な、ティシー!」
オレはテンションがあがっていた。
我ながら、わけのわからない同意を求めていた。
ゲートの中では、紫色した空間がぐにゃぐにゃ波打っていた。
元いた世界の物理法則が完全に通用していない。
「異空間ひゃっはーーーー!!」
「これ、はしゃぐでない」
ティシーの言葉はスルー。
オレは馬車を飛び出して紫のぐにゃぐにゃの中で小躍りする。
オレが待っていたい世界はこういうのだ!
血生臭いのとか、もういいよ。
「ティシー姉様、良いのではなくて?
マスターがお気に召したのなら、何よりでしてよ」
「じゃがな、この先はのぅ」
「おい、何してんだよ、さっさと先行くぜー!」
この空間の先に何があるのか。
オレは期待に胸を膨らませて走り出した。
そう、懐かしい青春のときめきような高揚感。
オレが今足を踏み入れた新世界、
そこは——
ピンク。
網タイツ。
強めの柑橘系の香り。
そして、無理やり出したような高めの男の声。
「まああああ、怪しい奴だわ!
引っ捕えてガバガバに掘っちゃいましょう!」
「そうね、そうしましょう! うふふふふ」
舌舐めずりしながら、槍を突きつけてきた。
ピンクの甲冑を身に付けた屈強な狼型の獣人の兵士。
おそらく玄人すぎる趣味な方々だった。
「ま、じ、か、よ?」
冷や汗が大量にドバドバと滴る。
オレの閉ざされたゲートまで力づくで解放されそうなピンチ。
ゲートの周りは有刺鉄線が張り巡らせていた。
なぜかピンクや緑の蛍光色のカラフルポップだった。
夜になればイリュミネーションとなって光りだしそうだった。
それは、ファンタジックといえばファンダジックだった。
だが、なぜか不気味さの方が際立っていた。
そして、柵のまにまに建てられた風に棚引く旗。
なぜか、
日本語で。
こう書いてあった。
男の娘の国、と。
「野獣の間違いじゃねえか!」
続く。