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3話 復讐なんてやべえだけだと思ってた。

初投稿の作品の3話目です。

よろしかったら、評価、感想、ブックマーク、助言など、宜しくお願いします。


 昔々のことじゃ。

 といってもせいぜい干支(えと)が一回りとちょっとかのぅ。

 人間にとっては十分昔じゃろう。


 よくある中学校のよくあるイジメの話じゃ。

 そのイジメは卒業まで続いたが、その生徒が静かにただ耐えたため、

 その罪は誰も負うことななく、教師もクラスも親も平和を得ておった。

 その平和はその生徒の温情のおかげであって、大いに感謝すべきであったが、

 誰一人として、その生徒に感謝などする者などいなかった。


 それから時は過ぎた。

 各々何事もなかったように次のステージじゃ。

 ある者は他人を蹴落として立派な優良企業へ就職し、

 ある者は要領よくササッと結婚し、立派なお産で親となり、

 ある者は立派に子育てを終えて自立した子供に感謝され、

 ある者は立派な聖職者としてあいかわらず指導を続け、

 そしてある者はイジメられていた時分の頃からの不運が続き、

 悪質な環境で我慢強く労働しておった。


 やがてイジメに耐えた元生徒は静かに死んだ。

 過労死じゃ。

 イジメを行っていた者、イジメを放置していた者、気づかなかった者、

 行き過ぎた労働を要求する経営者、見過ごす社会を形成する者たち、

 皆死んだことにさえ気づかず、のうのうと幸せそうにしておる。


 許せぬ!


 (わらわ)はそう思った。

 これは知恵の神でも、法の神でも、慈愛の神でも、救えぬ、

 所詮学生時分に自殺でもしないと気が付かぬような奴らじゃ。

 これは(わらわ)の復讐をもってしか救われぬじゃと確信したのじゃ。

 

 だから、妾は手を差し伸べたのじゃ、

 こやつ、名前は、えーと、忘れてしまったのぅ。。。


———



 異世界の 空には黒い 翼もつ 

 やべえ幼女か? やべえ幼女だ! 


 やべえ幼女ティシーがニヤッとしていた。時々見せるワルイ顔だ。

 ちらっとオレを見てから、ティシーは叫んだ。


「これが妾の力じゃ!」


 ティシーが手をかざせば、首のない死体が現れた。

 奴隷服を着た女の死体だ。

 オレの処刑を見に来ていた群衆もざわめく。

 それはそうだろう。

 ティシーが見えない奴らにとってはただ死体が浮かんでるだけだ。

 そして、みんな思っているにちがいない。


 あれはきっと前に処刑された女だ、と。

  

「れっつらふくしゅーーーー!」


 ティシーがご機嫌な声で満面の笑みで叫んだ。

 それは楽しげ呪詛(じゅそ)だった。

 まるで国営テレビの教育的なテレビのアレみたいな。


 さて、辺りは光に包まれた。

 首無しの死体が、まるで太陽のように強い光を放っていた。

 目を閉じたくなるのをこらえて、瞬きしながら窺えば、


 パチン。


 ティシーが指を鳴らす。

 すると光る死体から夥しい光の矢が激しく降り注ぐ。

 次の瞬間には、群衆、および兵士たちに突き刺さっていた。 

 それは鋭く、地響きするほどの勢いだった。


「あああああああああ」


 けたたましい断末魔、飛び散る血しぶき、バタバタと折り重なる多種族ども。

 砂埃がもくもくと上がって、視界を奪っていく。

 まもなく視覚も聴覚もぼやけてしまった。

 ただ時が過ぎるのを待つばかりとなってしまった。


 気がつけばオレの拘束が解かれていた。

 光の矢が十字架を破壊していた。

 周囲はシンと静まっている。

 やがて、光も消えて砂埃が落ち着くと、周囲の様子がはっきりと見えてきた。

 生き残っている者はいなかった。

 大きな獣人、小さなドワーフ、綺麗なエルフ、可愛らしい妖精、

 ファンタジーな姿をしていても、みんな醜い死に顔をしていた。

 心臓を貫かれて苦しんだようだった。

 オレを殺そうとしていた奴らだが、理不尽な死には違いなかった。


 そして、見上げれば黒い翼のやべえ幼女——


「え?」


 ではなく、

 8頭身で、

 巨乳な、

 黒い翼の全裸姉さんがいた。


「誰だ、お前えええええっ!?! 

 げふぉっげほっ」


 思わずオレは叫んだ。

 そして、むせた。

 

「ん? どうしたのじゃ?

 ハトがマメ鉄砲くらったような顔しおって」


 そう言いながら、全裸姉さんが目の前に降りてくる。

 羽ばたく翼でゆられるお胸に思わず目がいってしまう。


「えーと、多分、ティシー、だよな?」

「あ? おお、力を取り戻して元の姿に戻れたのじゃな?

 ククク、パーフェクトボデーにじゃろ、アハハハハ」


 ティシーは存分にある胸を、のけぞるほどに張る。

 性格は変わらないようだった。


「これが妾の本来の姿じゃあああああ、

 この力、この美貌(びぼう)があれば世界は妾のものじゃああああ!

 そなたと(わらわ)で新世界の支配者となろうぞ!」


 ティシーが完全調子にのっていた。

 そして、堂々と死亡フラグを立ててしまっていた。

 しかも、オレまで巻き込まれている。

 いや、すでに一回死んでるんだけどね。


「あほくさ」


 今日はとりあえず疲れた。

 寝よう。

 願わくば、すべてが夢オチでありますように。


「これ! かような場所で寝るでない!」



———



 夜、事件が起きた。

 とある学校の同窓会で謎の集団ヒステリーが発生。


 現場は狂気に満ちていた。

 互いが互いの心臓を喰らいあうようにして皆死んでいた。

 それは現場になれた警官さえ吐き気を催すほどの陰惨なものだった。


 助かった級友はただ一人。


 同窓会に招待されなかったイジメられっ子だけだった。

 後日、記者がこの元イジメられっ子の下に取材へ訪れた。

 が、そこで彼らは驚くこととなった。

 元イジメられっ子もまた死んでいた。


 ただ、

 ただ一人、

 安らかな顔をして。



———



 変な夢から目覚めるとベッドの上だった。


「なーんだ夢オチかーハハハ」


 オレ、元気いっぱい!

 飛び上がってカーテンを開けて朝日を浴びる。

 いい天気だ。爽やかな朝だ。

 うん、欧州(ヨーロッパ)の朝も悪くないなー。

 

「これ、強引に夢オチにするでない!

 また現実逃避か!!!」

「ぎゃーーー」


 ぬっと現れた。

 ティシーが窓の上の方から逆さ首のように。

 しかも、やべえ幼女だった。もはや悪夢だった。

 

「ごきげんよう、マスター、私の出立の準備は完了いたしましてよ」

「誰だよ、おまえ!」


 知らないセーラー服の女の子が部屋の入り口に立っていた。

 上品な立ち姿だったが、ぽろっと綺麗な顔した首が落ちた。

 艶やかな黒髪をふわりと踊らせながら、陶器のように。


「ぎゃあああああ!」

「ごめんあそばせ、首はそえるだけ、なのでしてよ」


 クールにそう言いながら、セーラー服は首を胸元でキャッチする。

 間違いない、こいつは、昨日の首なし死体だ。

 どこのス●ムダンクだよ!


「気になるのじゃったら、縫えば良いのじゃ」


 いつの間にかティシーが横にいた。

 そして、ドヤ顔で親指を立てる。


「マスター、その場合、私の個性がデュラハン的魅惑(みわく)の美少女から、

 首に縫い目のあるだけの痛い美少女となりましてよ、

 よろしいのでして?」

「美少女は譲る気なしだな!」

「なお、日本人形、首のとれた日本人形というだけはNGでして」

「そのこだわりはなんなんだよ」


 こちらの方も十分やべえ奴だった。

 やっぱりやべえから処刑されたんだろうか。

 育ちは良さそうなのにどうしたらこうなるんだ。

 やべえ奴がやべえ奴を引き寄せるのだろうか?

 いや、オレはやばくねえ!

 

「そういえば、ティシーはなんでまた小さくなってんだ? 

 なんで、この娘もオレをマスターとかいってんだ? なあ?」

「さあ、勇者よ、冒険の支度をして旅立つのじゃ!」

「盛大に話をそらしたな!」


 ティシーに聞きたいことはいろいろあった。

 しかし、「そんなものはあとでよいじゃろ」と一蹴された。

 こうして、やべえ奴らと異世界を旅に出るはめになったのだった。


続く。

今後の展開に対する要望などございましたら、お寄せくださいませ。

(できるだけ反映したいと思います)


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