1話 幼女なら全て正義だと思ってた。
初投稿の作品の1話目です。
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* プロローグから分割しました。
「ククク、妾は復讐の女神エリニュスが一つ、ティシー
哀れなる運命に滅しものよ、
並々ならぬ怨念に報い、その復讐の機会を与えてやっても良いぞ」
ポカンとした。
気がつけば耳元で幼女がドヤ顔が厨二くさいことを口走っていた。
ちんまいその幼女は、褐色の肌に、白く腰まである長いボサボサ髪、
そして、背中には黒い翼までつける気合の入れようだった。
なにより、なぜか全裸である。
「いや、服とか着てくれないと、こっちがつかまるんだが?」
オレは思わず注意する。
「気にするでない、妾のような神なれば、
服などなくても寒さなどしのげるのじゃ!
ハーハハハ……へくちゅ」
ゆれた。
クシャミともにペンダントのドクロが。
(何を間違っても、この幼女の胸はゆらぐことはない)
全裸ドクロ。幼女は前衛的すぎるやべえファッションだった。
「おい、ファッションは我慢だってきくが、
さすがに全裸は風邪ひくぞ?」
こんなオレでも、これにはいろんな意味で心配してしまう。
「妾は風邪などひかぬわ! へくちゅ」
と、やはり寒そうな幼女。
「しかたない」
オレはジャージでも貸してやろうと思った。
幼女の首根っこをつかんで、オレは立ちあがる。
「放せー! 放すのじゃ! 妾をなんと心得る?」
幼女はジタバタを暴れる。予想通り聞き分けは悪そうだ。
オレはそれを無視して、クローゼットへ向か——えなかった。
「ん? ここはどこだ?」
そこは真っ黒な世界だった。真っ暗ではなく真っ黒。
見回しても、あるはずだったPCも美少女も何もなかった。
これは一体……
「ふ、あわれなる亡者よのぅ、
どうやら自らの置かれた状況も理解できないようとは」
首根っこをつかまれたまま幼女は、なぜかドヤ顔だった。
「は?」オレはちょっとだけイラッとした。
「ぷ、おのれの境遇も判断できず、身の程をわきまえぬとは、
愚の骨頂じゃの」
幼女はさらに調子にのる。
なぜに見知らぬ幼女にバカにされなければならないのか?
コイツハ キョウイクガ ヒツヨウダ。
教育的指導。
つかんだ首根っこをそのままグルングルン回してやった。
「うああああああ、やめるのじゃあーああああ」
反省の色は見られない。
教育的指導はしばらく続いた。
・・・・・・
この幼女、自称復讐の女神ティシーが言うにはこうだ。
オレは死んだ(うそだろ?)。
過労死らしい(まさか、まだ20代だぜ?)。
日々の残業、そして日々の深夜アニメ。
癒しのはずのアニメをリアルタイムにこだわった結果、
寝不足と過労がたたり、今夜ひっそりと限界に達した。
(気づけよ、自分の限界とか気づくだろ、ふつう!)
(気づかぬのじゃ、過労死ってそういうもんじゃぞ?byティシー)
「さあ、復讐じゃーーー!
そなたを酷使した会社、蠱惑的なアニメを制作した会社、
リアルタイムにこだわるアニオタの風習、
その他、すべてに復讐しかあるまい!」
ティシーは立ちあがって握りこぶしで熱弁する。
ちなみに、オレのジャケットを着せたが他は全裸ドクロのままだ。
すわって話を聞いていたオレの目の前には自主規制なアレだった。
「いや、しないから」
「へ?」
きょとんしたあんぐりな口。
ティシーはアホアホな顔だった。
「復讐とか別に何も産まないし」
オレも鼻ホジでベタな回答をする。
「なぜじゃ! 今ごろ、二次元の嫁が親バレじゃぞ?
これは激怒ものの、恥ずかしさじゃろうに!」
「それは恥ずかしいけど、復讐って。
一部のやべえやつらじゃないんだから」
「やられたら、しかるべき報復、これが世の摂理じゃろ!
ゆとりなのか? さとりなのか?
これじゃから、最近の若いもんはパッションが足りぬのじゃ!
ジャパンの景気もよくならんのじゃ!」
ロリが老害のようなことを言い出した。
かと思えば、
「復讐復讐復讐、ふくしゅーしてほしいのじゃあああ」
なみだ目で駄々をこね始めた。
こいつ、ほんとうに復讐の女神とやらなんだろうか?
・・・・・・
それから時が流れた。
どのくらいかはわからない。
体感では1日くらいは過ぎている。
何しろこの黒いだけの空間では、時間を知る術がない。
その間、さわがしい駄々っ子と一対一。
ただの拷問だった。
「おお、やってくれるか! やっぱり復讐よのぅ
ハハハハハ!」
ただの根負けだった。
しかし、ティシーは嬉々として、のけぞるほどに、ない胸をはる。
そして、ちょっとワルい顔をした。
「ククク、これで宿願がかなうわい」
独り言にしては大きな声だった。
どうやら何かたくらんでいるらしい。
が、ここで拒否しても話が進みそうもなかった。
『はい』というまで同じが選択肢がつづく、
ドラ●エの主人公の気持ちが今ならわかるような気がした。
ただ、このオレもこの手の理不尽には慣れている。
ドラ●エとブラック企業のおかげでな!
「では、早速、転生の儀を行うぞぃ!
がんにゃらはーらーぱらみったーてんだらわんだら……」
あやしい呪文だった。
ティシーが真剣な顔すればするほど、きょとんだった。
しかし、ティシーのドクロが光り始める。
その光は蒼白くかがやき、波打ち、冷たくも美しい印象だった。
「えええ!? なんかすげえ女神っぽい!」
これにはオレも驚きを隠せなかった。
そしてまもなくその光が辺りをつつみこんだ。
そんなオレをみて、ティシーはキリッとした顔で言った。
「れっつらふくしゅーーー!」
「最後にしまらねえ幼女だな!」
言い切るか言い切らないかで、光に飲まれ何もみえなくなった。
最後のツッコミが届いた届かないかは、わからない。
・・・・・・
気がつけば、中世ヨーロッパのような街並みが広がっていた。
石造りの道、家、そして広場の噴水。
ざわざわと街行く人は、耳の尖ったお姉さん 、
背の低い髭面のおっさん、羽の生えた小さな女の子……
これはエルフ、ドワーフ、妖精ってやつだ。
「異世界じゃねえか!」
「いだっ」
思わずどついていた。
なぜか(ドヤ顔で)いっしょにいたティシーの頭を。
縁もゆかりもない異世界でれっつら復讐、となるわけもない。
アホアホな話だった。
とその時、「うおおーー」という歓声が響くとともに、
少女の首が、
足元にころがってきた。
それは、
綺麗な顔した、
人間の、首だった。
続く
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(できるだけ反映したいと思います)