9話 ファンタジーこそが異世界だと思ってた。
初投稿の作品の9話目です。
よろしかったら、評価、感想、ブックマーク、助言など、宜しくお願いします。
それはボクが16才になる誕生日だった。
「起きて。起きて。
私のかわいいお兄ちゃん……」
ゆさゆさと揺さぶられて、夢から覚めた。
そう、それは長く苦しい夢だった様な気がする。
けれど、目覚めてしまえば何も思い出せない。
「おはよう、お兄ちゃん。
もう朝だよ」
目を開ければ、女の子がいた。
色白な肌に淡い金色の髪。
え? こんな妹知らないんですけど?
ていうか、金髪の時点でジャパニーズなボクと血縁なくない?
「今日はとても大切な日っ!
お兄ちゃんが初めてお城に行く日だったでしょ。
この日のために、ケイはねぇ〜
お兄ちゃんを勇敢な男の子として育てたつもりだよ!」
きょとんとするボクを置いてけぼりにしたまま、
妹を名乗る女の子は流暢に語った。
そして、ドヤ顔したままボクの様子を伺う。
……
互いに様子を見合う謎の間がうまれた。
「えーと、早く起きてよね!
じゃないと先行っちゃうからね!」
そう言い放つと、ぷいっと身を翻して部屋を出て行ったしまった。
突然のツンデレ。
よくわからないままボクは起き上がった。
そして、ボクは驚いた。
なぜか、冒険者風のマントと胸当てを装備していたのだ。
なぜ、この格好で寝ているのか?
どこの熱狂的コスプレイヤーだよ!
楽しみに過ぎて寝る前に来ちゃった感じ?
いやいや、そうじゃない。
昨日の夜は普通にパジャマに着替えて寝たはずだ。
うーん……
いや、ひょっとしたらボクは異世界転生したのかもしれない。
そしたら、ボクも妹と名乗るあの娘のごとく金髪なんじゃ?
そう思ってボクは見慣れない部屋を見回す。
しかし、鏡のようなものはなかった。
仕方ないので、全力で上目にして前髪を見る。
黒い。
んー、どういうことだろう?
「お兄ちゃん、どうしたの! 早く来てー!」
「あ、今いくよ」
よくわからないが、部屋の外へと出る。
すると、階段の前に妹を名乗る女の子が待っていた。
「さあ、ケイについてきてね」
女の子は階段を降りていって外で出て行ってしまう。
朝ごはんもなしにお出かけ?
ボクは慌ててついて行った。
外には街並みは異なっていた。
きのこ様な建物がならんでいた。
しかも、街行く人は女の人しかない。
おそらく異世界転生というのは間違いない。
しかし、なんかこの展開、どっか見たような。。。
「ここからまっすぐ行くとお城だよ。
女王さまにちゃんとあいさつするんだよ。
さあ、いってらっしゃーい! 」
「いや、女王様に会うのに、身支度とかしないでいいの?」
起き抜けで謁見するってどういうこっちゃ?
「え? え、えーと、女王様はそういうの気にしないんじゃないかなー、あはは」
妹を名乗るケイという女の娘はなぜだか慌てていた。
「いいからいいから、行こう行こう!」
そういって、ボクの背中を押した(物理的に)。
階段を上っていくと王の間。
玉座に幼女がいた。
マントに王冠、局部を隠すだけのヒモの様な革をまとっている。
ど変態だ。
「よくぞ、来たのぅ。
勇敢なるオルテガの息子よ!
ん、オルテガって誰じゃ? 」
棒読みだった。そして、首をかしげる。
そして、女王さまは時折手のひらをちらちら見ながら続ける。
「そなたの父、オルテガ? は、
戦いの末火山に落ちて亡くなったそうじゃの?
その父の跡をつき、旅に出たいというそなたの願い、
しかと聞き届けたぞ」
「知らないぞ。そんな願い、いつ言ったよ?」
「え? ん? んー。。。」
女王さまが眉間にしわを寄せて困り始めたぞ。
やっぱりこいつなんか胡散臭いな。
「言うたのじゃああああ!」
「お兄ちゃん、言ったでしょ!」
女王さまがだたをこねるように絶叫すると、妹が叱りつけるように続く。
「言いました」
ボクは押し切られるように認める。
自白の強要だった。
言っておくがボクは押しに弱いジャパンの高校生だ。
仕方ない。
「うむ、敵は魔王バラモスじゃ
世界の人々は未だ魔王バラモスの名前すら知らぬ。
だが、このままではやがて世界は魔王に滅ぼされよう。
魔王バラモスを倒しに参ろう!
街の酒場で飲み明か、じゃなくて、仲間を見つけて、
金で装備を整えるがよかろう。
では、参ろうぞ」
なんか、前にこんなようなゲームをやったことがある気がした。
でも、微妙に何かが違っているような気もしていた。
ところで、未成年が酒場っていってもいいのかな?
・・・・・・
そんなわけで言われた通り、街の西のはずれの酒場へ。
なぜか妹と女王さまと一緒に。
女王さまがいるんだから、未成年を咎められることはなさそうだ。
「ここは冴子の店。
旅人たちが仲間を求めて集まる出会いと別れの酒場でしてよ。
何をお望みでして?」
店舗はなかった。
空き地にポツンとボロい屋台だった。
なんか、釘がちゃんと刺さってなかったり、
塗ってある色にムラがあったり、作りはかなり雑だった。
急いで作ったっぽいな。
「いや、ここに客、誰もいないじゃないっすか?」
「あ」
びっくりするほど周りには何もいなかった。
ついでに朝っぱらから開店していることにも驚きだった。
そして、ぽろっと冴子さんの首が落ちた。
「ぎゃああああ、首がああああああ!」
思わず叫んでしまう。
「お兄ちゃん何を驚いているの?」
「冴子の嬢はデュラハンなんだから同然じゃろう?」
妹と女王さまは落ち着いていた。
え? この世界そういうもんなの?
ボクは空気を読むジャパンの高校生。
わかったふりして、黙っておく。
で、生首ポロりはやべえだろ!
「ただいま、冒険者がおりませんで、
仕方ないので私がお供いたしましてよ」
そういって、なぜか酒場の女店主が仲間になった。
でも、よく見れば、黒髪の大和撫子な美少女だった。
首もとれる東洋人は、この世界でも相当レアなんじゃなかろうか。
・・・・・・
街を出ると、そこには荒野が広がっていた。
急展開すぎて心が追いつかなかったが、ここから世界を救う旅が始まるらしい。
乾いた一陣の風が吹き抜けて、ボクはふと思う。
「ボクには荷が重くないですかね?」
「大丈夫だよ! お兄ちゃんならできるよ!」
「そうかなー?」
「そうじゃ、妾が見込んだ男じゃぞ! いける!」
「私たちがおりましてよ!」
なぜかボクは仲間たちに全力で励まされた。
ボクはジャパンの高校生。
仲間の友情とか信じる心とかには軽く流される。
「世界はお兄ちゃんを必要としているんだよ!」
世界はボクを必要としている!
ぐっと心を掴まれた!
考えてみれば、もう学校なんか行かなくていいんだ。
あんなつまらない強制収容所によく通ってたな。
どうせつらいなら、世界を救う旅の方が良いに決まってるし、どうせならかわいい娘と一緒の方がいい。
当たり前のことだった。
「なら、頑張らないとだな!」
「うれしい! 頑張って旅を続けようね。お兄ちゃん!」
天真爛漫にケイはハグしてきた。
ボクは堂々とそれに答える。
「こ、こちらこそ、よろ、よろしく、ケイ」
女の子慣れしていないボクは思わずどもってしまう。
そんなボクらを、女王さまと冴子さんはやたらニヤニヤしていたのだった。
続く。
この前、DQ3のRTAを見てたんですけど、
世界救うって言う割には、アリアハン以外の国が非協力的だなーって思いましたね。




