てるてるの神様
最近、台風ばかりで雨続き。
湿気だらけでなんか憂鬱。
なんで雨ばっかりなの?
これはいったい誰のせい?
雨で憂鬱な作者が唐突に思いついた小説です。
『てるてる坊主』と
『雨女』の少女と
『神様』の話。
昔々、あるところに少女がいました。
少女は、ひとりぼっちでした。
生まれてすぐに母親は死に、
父親は知らぬうちにいなくなっていました。
彼女は『呪われた子』でした。
親戚に引き取られ、学校に通い始めた少女。
初めての運動会。
クラスの皆でてるてる坊主を作りました。
『運動会の日晴れますように。』
願いを込めて作りました。
でも、運動会当日、雨が降りました。
その後も、遠足、修学旅行などなど、
行事があるごとにクラスでてるてる坊主を作りましたが、
晴れる日は一度もありませんでした。
ある時、一人のクラスメイトが言いました。
『誰かがてるてる坊主に間違った願い事をしている。』
『誰か雨を降らすようにって言ってるんだ!』と。
そこで、そのクラスで一日一人だけ作らない人を決め、
残りの皆で毎日、てるてる坊主を作りました。
てるてる坊主を作り始めた、次の日。
雨が降りました。
その次の日も、そのまた次の日も。
雨の日が続きました。
ところが、ある日、ぴたりと雨がやみました。
その日、てるてる坊主を作らなかったのは、
『彼女』でした。
『お前が雨を降らせていたのか!』
クラスの皆は大激怒。
彼女は泣きながら言います。
『そういうつもりはなかったの。』
でも、彼女のてるてる坊主が雨を降らせていたのは事実。
クラスの皆は聞く耳を持ちません。
『もう、お前はてるてる坊主を作るな!』
彼女は泣きながらうなずきました。
その事件からというものの、
クラスの皆は彼女を仲間はずれにしだしました。
挙句の果てに、靴を隠したり、教科書を破いたり。
さらには暴力まで振るうようになってしまいました。
たった一つの『てるてる坊主』のせいで。
『・・・私は、何も悪いことしてないのに・・・。』
ある日のことです。今まで以上の雨が降りました。
まるで台風が来たような、大粒の雨と暴風。
かろうじて学校はなくなりませんでしたが、
早く帰してもらうことになりました。
クラスメイトが一人、彼女の元にやってきました。
『お前、てるてる坊主作ったな?』
クラスの皆が一斉に彼女の方を向きます。
『・・・作ってない。』
彼女はいいました。
『じゃあ、何でこんなに雨が降ってるんだ?』
クラスメイトがいいます。
彼女はすこし躊躇しながらいいます。
『・・・あなたが怒らせたの。』
クラスメイトが笑い出します。
『ばっかじゃないの?お前は怒るだけでこんな天気に出来るのかよ?』
『雨女でもさすがにそんなことできないだろ?』
『ついに嘘までつくようになったのかよ?』
彼女は泣き出しました。
それを見たクラスメイトが彼女を蹴ります。
『ならやってみろよ!もっとすごいのをさ!』
はははとクラスメイトたちが笑います。
そのときでした。
てるてるぼうず、てるぼうず♪
歌が聞こえました。
有名な『てるてる坊主』の歌が。
しかし、そのあとの歌詞が違いました。
今すぐ、あーめにしておくれ♪
ふとクラスメイトの一人が下を向きました。
歌っているのは『彼女』でした。
てるてる かみさま てる かみさま
歌に合わせて、まるで呪文のようにつぶやいていく。
がっこう うめつくす くらいの あめを ふらせてください
まど を わるくらいの つよい かぜを ふかせてください
するとばりんと、窓が割れました。
そこから、雨が滝のように入ってきました。
クラスメイトたちはあわてて逃げます。
『彼女』は窓の方を見ていました。
・・・正確には、窓の外。
空には、台風のような渦巻く雲がありました。
その中心に、『なにか』の影が見えました。
『それ』はこの世のものとは思えない風貌でした。
てるてる坊主のようなマントを羽織っている『それ』。
でも、中身は人ではありませんでした。
人ではないぎょろりとした眼が輝き、
手足は触手のようにうねうねしている。
暗いからそうなのか、もともとその色なのか分からない漆黒の触手。
いや、触手とも判断しがたい無形の『それ』は、
どんどん学校を覆っていく。
雨風を校内に送りながら。
『・・・神様。』
少女が小さくつぶやきました。
ちらりと、『それ』が彼女の方を向きます。
『やっぱり、私は人と仲良くなれないみたい。』
悲しげな顔で少女はいいます。
『それ』がうーんと悩むしぐさをして、触手(?)の一本を彼女に差し出します。
彼女はその触手らしきものを掴みます。
『・・・皆、私のこと・・・愛してなんかくれない。』
泣きそうな彼女に『それ』の顔が擦り寄ってきます。
まるで、子犬が飼い主を慰めるかのように。
『・・・ありがとう。やっぱり神様はやさしいね。』
彼女は一度も見せたことのない満面の笑みで『それ』に笑いかけました。
そのまま、彼女は『それ』に抱かれて、渦巻く雲の中心に消えていきました。
『・・・さて、次のニュースです。
昨日、○○小学校周辺に謎のゲリラ豪雨が発生。
それにより、建物が半壊。
中にいた教師と生徒が重軽傷を負いました。
警察の調べによりますと、生徒の一人が
行方不明になった生徒を犯人といっていますが、
証拠がないことから自然災害による事故だと処理しています。
なお、現場近くには大量の「てるてる坊主」が落ちていて、
調べによりますと、その頭の中に文字の書いた紙が入っていたそうです。』
彼女がてるてる坊主に込めたのは
『あしたは てんきに してほしい』
『あめばっかりだと みんな くらいかおを するの』
『きょうこそ はれますように』
雨を『降らす』ことしかできない『てるてる坊主』しか作れない、
『なんで みんな こわいかおを するの?』
彼女の、はかない思いでした。
『かみさま わたし「くらすめいと」いらない』
『てるてるのこ かえってきた』
『おかえり おかえり』
たくさんの『てるてる坊主』たちが迎えてくれた。
やっぱり、こっちの方が落ち着く。
『てるてるのこ また「くびおち」いるの』
『「ぬれぬれ」もいるの』
『分かった。今「直す」からね。』
そう言って、彼女はそちらへ向かった。
てるてるぼうず てるぼうず
あした てんきに しておくれ
いつかの ゆめの そらの よに
はれたら きんの すず あげよ
リンリンと『鈴』を鳴らしながら、
行進していく『少女』と『てるてる坊主』
彼らの首には、『鉛の鈴』がついていた。
てるてるぼうず てるぼうず
あした てんきに しておくれ
わたしの ねがいを きいたなら
あまい おさけを たんと のましょ
『こっちこっち』
『あんまり急かさないで。ゆっくりで大丈夫だからね。』
『てるてるのこ おわったら おかし たべる』
『いっぱい あるよ』
『いいね!そうしようか!』
てるてるぼうず てるぼうず
あした てんきに しておくれ
それでも くもって ないたなら
そなたの くびを ちょんと きるぞ
そこにいたのは『頭がなかったり』『原型をとどめていない』てるてる坊主。
一般的に『願いをかなえなかった』てるてる坊主である。
『待ってて。今、「新しいからだ」作ってあげるからね。』
そう言って彼女はかばんから裁縫道具を取り出す。
てるてる坊主で『あった』それを綿と一緒に布に包み、
輪ゴムで縛り、首を作る。
多種多様なビーズから好きなビーズを二つ・・・眼を付け、
首にこれまた多種多様なリボンから好きな色を付ける。
『はい、完成!』
こうして出来る彼女の『てるてる坊主』。
『よし、これで全員かな?』
『・・・なおってる』
『ありがと』
『やっぱり すごい てるてるのこ』
きゃっきゃと喜ぶてるてる坊主たち。
私は『てるてるの子』。
生まれた時から『雨女』で、
いろいろ試して雨を止まそうとしたけど、
どうしても止まなくて、
皆、怖い顔をして、
私を怒鳴る。
『お前なんか生まれてこなければよかったのに。』
誰からも愛されなくて、
悲しかった。
寂しかった。
そんなある日、夢の中で『神様』に出会った。
神様はひとつの『てるてる坊主』を差し出した。
首がちょん切れた、かわいそうな『てるてる坊主』
チリ紙でできてた『彼』に布の身体を与えたのは私。
そしたら次々願いを『叶えられなかった』てるてる坊主がやってきた。
紙で出来た子たちは、布の身体になりたいとよってきた。
私は『必要』とされていた。
私は『てるてるの子』。
でも、『神様』は私を『人間』にしたいみたい。
だからきっと、また『人間の場所』に連れていってくれるのだろう。
こんな私を愛してくれる『人間』なんていないのに。
もしいたとしても・・・私は『神様』のそばにいたい。
ふと、背後に大きな影が出来る。
『 』
私は、振り向き『彼』の『名前』を呼ぶ。
『名無し』だった『彼』に・・・『神様』に名前を付けたのは私。
だから、責任をとらなければならない。
雨を『降らすことしか出来ない』この『てるてる坊主』に『命』を与えたのは私だ。
『彼』を『神様』にしてしまったのは私だ。
だから、私は今日も『てるてる坊主』を作り続ける。
それが、『彼』への『信仰』の証だから。
彼の『家族』を作るのが私の『役目』だから。
『・・・ずっとそばにいてね。私の「神様」。』
『てるてるの神様』
雨を『降らす』ことしか出来ない狂った『神様』と
『それ』に好かれてしまった、『人』に愛されることを知らない哀れな少女の話。
END
いかがでしたか?
最近クトゥルフのリプレイ動画にはまっておりましてwww
さらに珍しく僕の地域に台風さんがいらっしゃったということもありましてwww
影響されてこんな小説書いてみました。
半分作り話、半分実話だったりしますwww
小学校の行事の時、ことごとく雨に降られましたwww
(僕も立派な雨女www)
『彼女』のモデルは、実は作者自身だったりします。
ちなみに、小説内の布の『てるてる坊主』さんも実際に家にいます。
(もちろん、自作のものです。市販のもいますが。)
かばんにも二匹ついてます。お守り代わりにね。
でも、雨に濡れるんですよね?『神様』に好かれてるのかな?
もしほんとにその『神様』がいたら、
とりあえず、通勤時間に豪雨降らせるのはやめていただきたいwww
わざとなのかな?
大雨が降っていた通勤時に妄想した産物ですが、よかったら感想を聞かせてくれると嬉しいです。
まぁ、突発的に書いたのでおかしい文章多々あると思いますがwww
そういうのも含めてご指摘いただければと思います。
以上、雨と雪に好かれている作者でしたwww