藤原さん 8
藤原さん 8
「ハロウィン?聞いたことはあるけど、こういったものに参加したことはないわ。」
食堂のテレビで流れるニュースを見た藤原が言った。
「仮装に興味はないって?」
「自分の仮装には興味はないわね。変身願望もないし、知らない人に会いたいとかもないし。でも、人の仮装には興味があるわね。衣装とか化粧とか小物とか。経済効果も素敵。」
テレビから流れるこの盛り上がっている感じを見て、経済効果なんて考えるのは専門家くらいだと俺は思っていたが、そうでもないらしい。
「経済効果ねぇ。」
「普通に考えただけでも、普段使うよりも売れる化粧品、髪飾り、カラー、衣装用の裁縫用の布と糸とスパンコール、ボタンたち、持つ小物、皮膚に使うであろうシール類、もしかしたら靴までもかも。そしてみんなが集まる場所に行くまでの電車代。食事代などなど。なかなか素敵だと思うの。」
俺はそこまで考えるのが普通だとはあまり思わないが、まぁ言っていることはわかる。
「犯罪も多くなりそうだけどな。」
「犯罪はまぁ不特定多数がいるようなところでは常に起こるでしょうね。」
「宗教的要素が消えたなぁ。」
「そうねぇ。子供のお祭りが日本では大人のものになっているけど、私はこの細かいところを気にしないところが好きよ。」
藤原はちょっと笑った。
「なるほど。」
「ついでに、カボチャの煮物もカボチャのサラダもいいと思うわ。」
「あっちこっちに置いてあったの、どうするのかと思ったけど、まぁ食べるが一番だよなー。」
「そうよ。」
今日は十一月。大学の飾りとして掲示板のところにあったカボチャは姿を消し、代わりに張り紙があった。
『本日限定、カボチャ料理フェア 学食』
ご飯以外は煮物からサラダからスープに天ぷらとあれこれ利用されたらしい。そして張り紙の効果があったのか今日はいつもより食堂が混んでいる。俺はこの張り紙を見つけるなり、藤原を誘った。彼女は言った。
「ハロウィン後も美味しいわ。」