表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傭兵団の料理番  作者: 川井 昂
一章・ボくと暗殺一家
98/140

第三部プロローグ

5/24更新 4/4

 自分が誰だかわからない。自分が何者なのかわからない。

 だけど、生きているだけマシだし、日々の糧を得られることは良いことだ。

 


『ヌル。早く飯の支度をしろ』

『すみません旦那』


 ボくは家の掃除をしている最中に、家の主人である旦那にそう言われました。

 慌てて掃除を終わらせ、僕は家の厨房に立つ。

 壺から火種を取りだし、囲炉裏に積んだ木の間に入れて(ふいご)で風を送る。

 徐々に火の勢いが増し、炎となった。


『腹が減ったよ。父、ヌル、おはよう』

『おはよう』


 そこに出てきたのは、この家の人たちだ。


『おはようございます奥方、レイ様、ゼロ様』


 ボくはそう挨拶すると、三人とも囲炉裏の周りに集まりました。

 この家は藁葺き屋根に囲炉裏があり、床は木で出来ています。靴を脱いで上がる家の様式をしています。

 夏は涼しく冬は暖かく作られてる木造の家。

 ボくはこの家で、使用人として働いています。

 旦那であるノーリ様、奥方であるスィフィル様、長男のゼロ様、妹のレイ様。

 そして僕こと使用人のヌル。

 この五人で、この家に住んでいるのです。


『おはようヌル。ここの生活にすっかり馴染んだわね』


 奥方がボくに、コロコロと笑いながら言う。

 奥方は背が低く、レイ様の妹と言われても勘違いしそうな幼さをしています。


『皆様のおかげです。ボくを拾ってくれて、この家に置いてくれているので』

『そうだな。感謝しろ』

『もちろんです、旦那』


 旦那は背が高く、髭と髪の毛で毛むくじゃらです。筋骨隆々で歴戦の戦士を思わせる風体、鋭い目つきに刻まれた傷跡から威圧感も半端ない。

 最初、ボくがこの家に来たときも厳しかったけど、どこか優しかった。

 どうやらこの人は、人に優しくするときは不器用らしい。


『自分が誰かもわからないボくを置いてくれてることに、本当に感謝してます』

『まあ、拾って得はしたよ』

『そうだね』


 ゼロ様とレイ様が囲炉裏に掛けた鍋を見て、舌舐めずりをしました。


『家事は完璧だし、料理は旨い』

『記憶喪失前は、どこかの貴族の料理人をしてたのかもな』

『記憶を取り戻すきっかけになれば良いんですけどね』


 ボくは二人を見て苦笑しました。

 この家に来て、料理の包丁を見て衝動的に料理を作っていました。

 記憶にないはずなのに、体が覚えている。その体の本能に従っていると、旨い料理ができる。

 記憶の手がかりなのかもと思っているんだけど、今のボくにはわからない。


『記憶が戻ろうが関係ない。お前はこの家のものだ。ちゃんと家事と料理の仕事をしろ』

『はい、旦那』


 ボくは温めたスープを器に移し、みんなに渡していきます。






 これは、ボくことヌルの話の始まりだ。

 ――再会まで、あと一年。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] さらっと2年たってるぞおい
[一言] 僕は、ここで退場だ まさか本当に退場して謎の料理の得意な新キャラクター!彼はいったいに誰なんだ! きっと彼がガングレイブと再会して 影武者徳川家康みたいにシュリを継ぐんだ!w
[一言] 待ってました!引き続き楽しみに待ちます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ