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傭兵団の料理番  作者: 川井 昂
三章・僕と我が儘姫さん
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第二部エピローグ

5/24更新 3/4

『兄者、こっちだ』

『レイ、何があると?』


 とある森の中で、二人の人間が歩いていた。

 褐色の肌に、特別な染料で染められた民族文様を体に描いている。

 服装も似ており、黒字に銀糸で文様を入れている。動きやすさを重視しており、同じく反射光を抑えるための染料が塗られた軽装の革鎧を身につけていた。

 二人とも背が高く、金色の髪の毛をしていた。

 一人は女性で、垂れ目にスレンダーな体型をしている。胸が小さい。どこか緩い印象を覚える美女だ。

 もう一人は男性で、こちらは鋭い目つきに鍛えた肉体をしていた。腰には短刀を二本に投げナイフを太股に装着していた。

 その二人が、森の中を歩いて川へ向かっているのだ。


『こっちに、人がいる』

『なに? ヴァルヴァの隠れ里に侵入者がいると?』

『いや、おそらく迷っていたんだ』


 慣れた歩きで森を抜け、川へ出た女性が指を指した。


『というより、流れついたが正しい』

『ほぅ』


 その先に、一人の青年が川岸に流れ付いて失神していた。

 見たことのない白いチュニックに変わった生地のズボンを身につけている。

 男性が警戒しながら近づき、気を失っていることを確認する。


『うん? ……こいつ運がいいな』


 男性は川から青年を引きずり出して仰向けにすると、感心したように言った。


『何がだ、兄者』

『こいつの腹を見ろ』


 男性は女性に、青年の腹を示すように言った。


『何か刺されたんだろうな。刃物傷だ。幸いそんなに深くはなかったようだが、それでもほっとけば死ぬ傷だ』

『うん』

『だけど、その上に間髪入れずに火傷がある。服が煤けてることを考えると、魔法か魔工兵器で爆発を受けたんだろ。服がはだけたところに爆発を受けて、計らずも傷を焼いて止血出来てたんだろうな』

『なるほど』

『それと、川に落ちて流れていたようだけど傷は打撲痕だけだ。考えるに、川の深いところに落ちたんだろうな。だから川底に体を叩きつけられてないから、骨折もない。

 まあ、そんな状況に巻き込まれること自体、運が悪いんだろうけどな』


 ケラケラと男性が笑う。


『まあ、ヴァルヴァの隠れ里を知られるわけにいかなんだけどな』

『暗殺種族ヴァルヴァの民……それがワタシたちだからな』


 女性は真剣な顔で青年の顔を覗き込んだ。


『このまま死なすには、惜しいぞ』

『何故だレイ』

『ちょうど、うちの一家に奴隷がいない。親父殿も嘆いていた』

『なるほど。確かにな』


 男性は納得した顔をしている。


『母も父も、仕事で忙しくて家の掃除やらができなくて困っているからな』

『だから、こいつをこき使えばいい』

『そうするか』


 女性と男性の相談が終わり、男性が青年の頬を軽く叩く。

 ペチペチと叩き、声を掛ける。


『起きろ、こら』


 青年は呻きながら、目を開いた。


『起きたか?』

『う、うーん……あ、あれ? あなたたちは』


 女性と男性は驚く。自分たちの部族だけで使われる言語を、この青年が自然と口にしたからだ。

 だが、驚くのはそれだけではなかった。

 青年の片目が白濁し、どうやらそれでも見えているようだ。

 黒髪という珍しさも相まって、二人とも驚いたのだ。

 さらに、青年は言った。


『あれ? あれ……ボくは、誰ですか?』


 どうやら、記憶喪失らしかった。






 ――彼らの再会まで、あと三年。

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― 新着の感想 ―
記憶喪失設定…。ベタだけど良い。料理系の物語は人や環境変えてこそ面白い
[一言] これは波乱万丈過ぎる! 次、次だっ!
[一言] 面白い物語と思ったのですが... どんどん魅力がなくなって行く感じでここでギブアップです 書籍は17巻も出てるのですね この展開であるなら読む気にはなれませんが
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