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傭兵団の料理番  作者: 川井 昂
二章・僕とリュウファさん
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三十三、目標とおじや

「リュウファさーん。ご飯ですよー」

「……」


 僕は努めて明るく振る舞いながら、リュウファさんに昼ご飯を用意しました。

 しかし、


「どうですか」

「食えなくはない」


 これです。何度目かもわからないけど落ち込みました。





 皆さんどうも、シュリです。誘拐されてさらに数日が経ちました。

 現在の僕の目標は、リュウファさんに料理を美味しいと言ってもらうことになりました。昔のことを話すよりも最高の暇つぶしです。

 なので、日夜リュウファさんがどっからか用意してくる物資を使って日夜、何かできないかと思案しているところです。

 しかし、リュウファさんが用意する物資は数が限られており、というか最低限しかないので、試行錯誤するにも慎重です。食材を無駄にするわけにもいかないしね。


「……起きてるかな」


 リュウファさんが幌馬車に顔を見に来たようです。

 時刻は朝。僕は結構朝早くから起きて朝ご飯の用意をしていました。

 起きたときにはリュウファさんがいなかったからなぁ。どこ行ってたんだ?


「はい、起きてます」

「朝ご飯の支度は?」

「できてますよ」

「なら食べよう」


 僕とリュウファさんの間の会話は本当にこれだけです。少ないのです。

 いつかその口から、美味しいと言わせてみせるからな。待ってろよ。これが今の僕のモチベーションです。

 最近、僕はリュウファさんの顔を見て、心の中で呼び分けています。リュウファさん自体が六人で一人の集合体なので、リュウファというのは総称になりますからね。

 で、今は『私』さんです。美人の女性ですね。


「ではこれをどうぞ」


 僕は鍋から料理をよそうと、『私』さんに差し出しました。


「……米か」


 リュウファさんはそう言うと、匙を手にして料理を食べます。

 朝ご飯はおじやにしました。胃に優しいし栄養満点、朝食にはぴったり。

 材料は米、ニンジン、ニラ、白菜、卵、水、塩、醤油、あと用意した出汁です。あり合わせで取った出汁だよ。

 鍋に野菜とご飯を入れます。白菜、ニラ、ニンジンはざく切りにしておき、ご飯は前日に用意しておいたものですね。

 で、これに水と出汁を入れて良くかき混ぜる。そして鍋で煮て、少し火を止めて蓋をして蒸らします。

 ここに卵を入れて、塩、醤油で味を調整、そしてかき混ぜてもう一度蓋をして蒸らせば完成。

 食べてみると……うーん、出汁がなぁ……。やっぱり、だしの素が欲しい。こっそりと物資の中の野菜とかを使って、だしの素を作っておくか。そうすれば、他の料理にも転用できるし。

 でもまぁ、これはこれで美味しいですね。おじやなんて久しぶりに食べましたが、体がほどよく温まって活力が湧いてくる。これで今日も頑張れそうです。

 人質が頑張る事って何?

 まあいいや。それでリュウファさんを見ると……『私』さんは黙々と食べ続けていました。何か言ってよ。

 そして食べ終わると、皿と匙を置いて去ろうとしました。


「リュウファさん」

「何?」

「どうでしたか? 美味しかったですか?」


 僕がそう聞くと、リュウファさんはこちらを一瞥した後、顔を逸らして言いました。


「食えなくはないわ」


 そう言うと御者席に座り、とっとと馬車を動かし始めました。






 うーむ、まだまだ研究の余地ありか。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 敵が物資を調達してきた時は人殺しとるのに、主人公、自分が大事だから何も指摘せん。 幻滅以外なにものでもない
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