二、創意工夫のハンバーグ・前編
どうも、シュリです。こんにちわ。
買い物帰りに光に包まれ、気づけば異国の地で傭兵団の料理番をすることになりました。世の中何があるか分からないね。
あれからリーダーさんことガングレイブさんに、今のご時世について教えてもらいました。
なんと、ここは異世界です。サブラユ大陸なんて聞いたことありません。
魔法が実在してますので、地球ではないことに拍車をかけました。普通なら僕にも魔法の才能があって無双だシャッハー! でしょうがそんなことありませんでした。ちょっと泣きました。
さて、こちらに来て一週間です。今回の戦に勝ったみたいです。犠牲者も団にはいないそうです。
ガングレイブさんは、
「お前の飯のおかげだ。あれが、俺達に力をくれた」
なぁーんて言ってますが、結局前線で戦う人の勇気と執念でしょうに。
さて、今回の報奨ですが金はもちろん、僕は調味料と食材をお願いしました。
さすがに塩だけでは辛いですね。香辛料と酢と魚醤を手にいれました。領主とやらはゴネましたが知ったことありません。食料事情はどこも厳しいので甘いことなど言えません。
料理のレパートリーも増えてガングレイブさんに感謝されてますが、実際、私がシチューとスープに飽きただけです。同じ料理は精神的にダメージが来る。
そして問題も浮上したので、何とかしようと思います。
コンロです。
つまり火力調整です。煮るしか出来ないのでシチューばかりです。
焼き魚の事情を聞いたときには絶句しました。丸焦げで食ってたそうで、何時癌病になるかヒヤヒヤする内容でした。
あれは迷信だったかな? ドラム缶一杯分食わないといけないとか、確か諸説いろいろありました。滅多になるわけではないのは事実ですし、嘘かもしれませんけど、さすがに健康に良くないのは事実です。
その事を伝えると、ガングレイブさん絶句。他の隊長さんもショックを受けてました。
ガングレイブさんとも相談して、ある隊長さんを紹介されました。
魔工隊隊長、リルさんです。
「ということでリルさん、協力してください」
「ん」
魔工隊のテントで相談することになりました。
魔工隊というのは魔法を使って道具の作成したり、魔法を道具に込めたりと、工作を主として活動してるそうです。所謂魔道具ってやつですね。それと魔法で土木をしたりとかもだそうです。陣地の設営に彼女が力を発揮するそうです。
「で、要望、詰めて」
リルさんは言葉が少ないです。
背丈が低く、ロリ美少女ってやつですね。白衣に藍色のチュニックとズボンの簡単な服装です。ジト目で青い髪を後ろでまとめた子です。
これは僕の世界に来ればモテモテ、大きいお兄さんにちやほやでしょう。
「まず、こんな感じです」
簡単な絵で説明します。カセットコンロですね。
「ここでこんな感じに火力を調整できるようにして、この金具の上に鍋を乗せて火を当てます」
「?」
「それで、ここで火力の調節とかを出来るようにしてほしいのです」
「なるほど」
ふと横を見ると、ごちゃごちゃした道具があります。
「なんですか、これ?」
「発火材。マナを込めると燃える紙」
「これを応用してください」
「?」
つまり、紙でいいのです。ちょうど濡れない紙も作れるそうなので、応用と組み合わせをしてもらいましょう。
要望を紙にしました。
まず、丸めても直ぐに真っ直ぐ広げられるもの、大きな丸二つで鍋を魔法とやらで浮かしつつ炎を出します。そして小さい丸で火力の調節をします。一定時間が経つと自然と消える機能も付けてもらいましょう。火事が怖いので。
これを伝えると、驚いた顔をしたリルさんは、やる気を出したみたいです。
あっという間に出来ました。
魔法陣型手持ちコンロです。要望通りです。
「すごいですリルさん!」
「当然」
ふんすー、と胸を張るリルさんにちょっと萌えた。
「では、新作料理を一番に味わってもらいましょう」
「おー」
さっそく料理です。
今回はハンバーグ。ソースは魚醤と大根モドキでさっぱりいきましょう。魚醤はそのまま使うと魚臭いので、魚醤にネギを浸けて臭いをとっておきました。とは言っても完全には取れませんがマシにはなるでしょう。ナンプラーは手強い!
牛肉も手に入ってるので、小麦粉と混ぜて形を作って出来上がり。
「お待ちどうさま」
「ん!」
喜んでるリルさんにちょっと萌えた。
リルさんはフォークで切り分けて口に運びました。
その行為にちょっと萌えた。
「んー! ん、ん!」
よかった、美味しいらしいです。
無表情なリルさんに笑顔が。次々とハンバーグを口に運んで、あっという間に食べ終わりました。
僕も手軽で持ち運び可能な高性能コンロが手に入ってよかったです。
この後、再び戦に行きましたが、リルさんの道具が大活躍して勝てたそうです、
さすがリルさん、パないです。