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傭兵団の料理番  作者: 川井 昂
三章・僕とみんな
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六十一、ここまで酷いとは思ってなかった

 この地を踏むことを、ずっとずっと望んできた。

 誘拐され、わけもわからないうちに争いに巻き込まれ、爆発に巻き込まれ負傷し、記憶を失い数年間。

 やっと戻ってきたアプラーダ……なのだが。


「正直、ここまで酷いとは思ってなかった」


 率直に出た僕の言葉に、リルさんもクウガさんも、テグさんも顔をしかめる羽目になった。


 眼前に広がっていたのは、あまりにも退廃的な光景だからだ。

 確かに前までいて、記憶の中にあるアプラーダの街と変わりは、表面上は、ない。


 だけど、なんとなくだけど、立ち並ぶ店の雰囲気や、店頭に並ぶ商品、行き交う人々の雰囲気が、悪い。


 例えば八百屋を見よう。普通だったら生鮮食品が並んだり、干し野菜やキノコ類が並ぶところだろう。

 しかし並ぶ野菜はどこか形が不揃い……とかではなく、変わった野菜……野菜? 山菜とかキノコもあるが……しなびてる感じがある。

 そうか、店に並んでる商品の質が悪いし、なんか全体的に寂れてる感じがあるのだ。

 そこで働く老夫婦はどこか疲れた顔をしているし、もう一人働いてる娘? の格好はどこか卑猥というか、扇情的な服を着てるというか。


 次に肉屋を見よう。普通ならば卸したばっかりの新鮮な肉が吊されているか、干し肉、ソーセージやハムに加工された肉類が並ぶことだろう。

 しかし品数が少ない。そして値段がお高め。こんなんニュービストだったら問題になるぞ? と思うような質と料金である。


 最後に食事処を見てみよう。酒と料理を出すオーソドックスなものだ。

 もう普通じゃない。店頭ではほぼ半裸じゃない? と思わなくもない格好で働く女性と、明らかに筋肉を誇示するような服装で客寄せをする男性がいるのだ。キャバクラか、ここは。


『シファル。ここにいたいと思う?』

『シューニャ……そんなの……ねぇ?』


 双子が互いに顔を見合わせて頷く。明らかに嫌そうな表情だ。

 わかる、わかるよ、その感覚。僕だってここにいたくない、と思うくらいに酷い。

 ゼロは顔をしかめてるし、レイは呆れた様子で溜め息を吐いていた。


『はぁ……こんなのが故郷? シュリ……こんなところに帰ってきたかったの?』

『いや、こんなはずじゃなかったんですよ。本来は』


 僕はちょろっとクウガさんたちを見てから再びレイさんの方へ視線を向けた。


『とりあえず歩きましょうか。……ここからどうするか、拠点でも構えて考えないと』

『それは賛成だ。いつまでも、その、こういうところに立っていたくない』


 ゼロさんが同意を示すように、鼻を摘まんで嫌そうな顔をした。


 正直、変な匂いがしてるので気持ちはわかる。

 なんでしょうね、なんというか、こう。


 街全体に変な臭いが立ちこめてる。

 不愉快で、鼻に残るような。

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― 新着の感想 ―
ガングレイブに対する説教案件が、ドンドン増えて増すねw
アーリウスだけではブレーキが足りなかったか…
ガングレイブが暴君になってるのは間違いないとして自暴自棄になって国の統治をしなくなってるのか?
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