五十九、盗賊と南蛮漬け・5
「お前、やってることがマジで邪悪なことだって自覚、あるんかいな?」
「はい」
「そんで? ワイの罪悪感につけ込んで何がしたかったんや?」
「その……盗賊まがいのことをしているクウガさんを止めるために……」
「他にえぇ方法があったと思うんやけど?」
「はい……はい……全くもってその通りでございまして……」
クウガさんに殺されかけた数時間後、ようやく落ち着いたところで、僕はクウガさんによって正座させられていました。
焚き火の側……! 地べたの上……! 熱気で僅かに腕がチリチリと熱くなり……! 膝は地面の硬い感触と石のゴツゴツで……! ずっと痛い……! 地獄の苦しみ……!
僕が反省している様子を見て、ようやく溜飲が下がったらしいクウガさんが大きな溜め息をひとつ。
「はぁ……まぁ、もうええわ……ひとしきり怒り狂ったら、もう落ち着いたし」
「マジですみませんでした」
土下座の態勢のまま、僕は深々と地面に額をこすりつけるようにして謝った。
ちらっと視線をクウガさんに向けても、ずっと疑わしい目をこちらに向けるばかり。どうやら僕の謝罪が心から出たものなのかどうか、観察してるってことか。
さすがに反省するわぃ。
「それで……その……」
僕は顔を上げて足を崩した。
「正座のまま」
「え」
「正座のままや。早くせぇ」
くそ、クウガさんからの圧が強ぇ。目線が冷たいっ。仕方ないので正座に戻る。膝は痛ぇ、焚き火の熱で腕が痛ぇ。
「えっと、それで、彼らは誰ですか?」
「それはこっちの台詞や。あいつら何もんやねん?」
クウガさんの言うところあいつら、というのがゼロさんたちのことなのは間違いない。
これは、僕の方を先に説明した方が話が早いかもしれないな。僕はそう判断し、ゼロさんたちへ顔を向けた。
彼らは今、僕たちと戦った黒塗りの装備を身に付けた人たちの装備を見たり、リルさんとテグさんが会話をしていたりする。
「それについてなんですけど……何故僕が無事なんだ、というところと合わせて話します」
「……聞こうやないかい」
どうやらクウガさんにも僕が話そうとしていること……僕が無事な理由と彼らと一緒にいる理由が重なっていることを察してくれたらしい。僕の前で足を崩した状態で腰を下ろし、真っ直ぐに目を合わせてきた。
正直「僕も足を崩していいっスか?」と言おうと思ったが止めた。さすがに空気は読む。
崖から落ち、僕は記憶を無くした。
そこでヴァルヴァの人たちに拾われ、なんとか生きてきた。
リルさんと再会し、唐突に記憶が戻った。
一連の話を聞いたクウガさんが、顎の手を添えて考えていた。
「そうか」
その手で、目の辺りを覆った。
「そういうことやったか」
クウガさんは肩を振るわせ、
「そうやって……生き残っててくれたんやな……!」
指の間から、涙を溢れるほどに泣いていた。




