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傭兵団の料理番  作者: 川井 昂
三章・僕とみんな
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五十九、盗賊と南蛮漬け・1

 遠い遠い旅路。延々と歩き続け、いなくなってた二年間の日々がどれだけのものなのかを、自覚していく。

 辿り着く村も町も、どこか寂れた印象を受けた。二年前よりそれ以前、傭兵団として活動していた頃、あの国に向かっていた僕たちが訪れた村は少なくとも元気があったはず。

 戦乱の世の中でも元気はあり、腹を満たすために働いて笑っていた。

 でも違う。明らかに元気がない。活気がない。人がいない。

 このことについてリルさんに聞いてみると、


「……まぁ、各国がかなり無茶苦茶なことをしたからね」


 と、かなり言葉を濁しながら説明をしてくれました。

 テグさんも同じように苦笑いをしつつも、何も答えてくれない。

 ゼロさんたちはこっちに見向きもしないままだ。

 どうやら、よっぽどのことがあったと見るべきでしょうね。

 僕がいない二年間……この空白期間を埋めることに、恐怖を感じてる。






 どうも皆様、シュリです。

 現在僕たちは、クウガさんと再会するべくオリトルへ移動中。

 あそこ、確か兄弟王子とクウガさんがやり合った国だったな……と振り返る今日この頃。

 そろそろオリトルの国境を越えている頃……なのですが。

 なんだか、妙。


「なんか、変じゃないです?」

「何がっスか?」

「いや、こう、なんというか……治安が変に良い……とか?」


 僕は回りを見ながら答えました。七人で荷物を持って移動しているのに、なんというか誰にも止められない。国境を越えてるはずなのに。


「それに、雨が降りそうで……」


 雨雲が近づいてきている街道、空模様は怪しい状態だ。雨宿りを考えないダメかも。


『……シュリ』

『なんでしょうかゼロさん』

『ここ、おかしい。早めの野営を提案する』


 ゼロさんが周囲に目を配りながら僕に言った。顔つきには、油断が全くない。


『おかしいとは?』

『俺から見て、この街道は不気味だ。なんというか……人の気配が変わってる』


 気づいてみれば、レイさんもシファルさんとシューニャさんまでもが、周囲への警戒をしていました。今までもしていたわけですけど、ここまであからさまにしているのは意外だ。

 どういうことかと聞こうとしましたが、先ほどの僕が違和感を覚えたことも踏まえて言葉を変えてみる。


『なんか、国境を越えてるはずなのに平和すぎませんかね。ここ』

『あー、なるほど。ここ、もう国境を越えてたのかー』

『なんか国境を越える時って、空気が“換わる”もんねー。そしたら殺気だのなんだのの量と質も“代わる”って感じ。んで、国境の線を越えたら誰かの目を感じてたもん』

『でもなー。あたしはそういうのない。シファルは?』

『シューニャと同じ、あたしもそういうのないかな?』


 シファルさんとシューニャさんの話からしても、ここはおかしいらしい。

 んで、レイさんに目を向けてみる。レイさんは回りを見渡してから、呆れたように一言だけ。


『なんか。いつもはこっちを狙ってきてた盗賊みたいな目とかない。シュリの言う通りかな。“平和”過ぎる。変な奴が全くいない、という言葉が合うかも。張り合いがない、盗賊の首を折って身包みを剥げば、次の街で美味しいものを食べられるのに』

『そっちの考え方の方が盗賊なんだよなぁ』


 レイさんの感想はともかくとして、この感想は伝えとこう。テグさんとリルさんにも説明をしてみたら、なんか二人して難しい顔を浮かべました。


「……どう思うっスか、リル」

「腕試し」

「そうっスよね~」


 なんだ、なんの話だ。僕は怪訝な表情で聞いた。


「何の話ですか?」

「バカの話。とりあえず、開けて水はけの良いところで野営しとこう」

「そっスね。……体力は維持しとかないと、後々苦労しそうっスから」


 二人は野営する場所への算段を付けようとしていた。

 一応、このことはレイさんたちにも伝えておく。

 ……どことなく、不安な気持ちが拭えない。

2024/03/04

少しずつ定期連載再開のために頑張ります。

宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 待ってましたーー! 更新ありがとうございます!
[一言] 待ってました!ご自分が「書いてて楽しい」と思えるペースで書いて下さいね! でも、続きが気になるゾイ!
[一言] お帰りなさい。 次の更新待ってます。
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