五十八、ニュービストへの入国と麻婆茄子・中編
街道をずっと歩いていると、分かれ道が多くなってくる。流通の交差点とかそういうのかもしれません。
そうしてくると、往来する行商人や商隊、馬車も増えてくるわけです。
「こうして人が増えると安心感を覚えますよ」
「そうだね……シュリはここ二年以上、ヴァルヴァの人以外だったらあいつらしか見てないし」
隣を一緒に歩いていたリルさんが同情するように返答してくれる。
「まぁ……最初がニュービストってのもリルとしては複雑。あの姫様がシュリが生きてることを知って余計なことをしないかと心配する。それにクウガとガングレイブのことを考えると、シュリがいない間に外も相当な早さで変わってると思う」
「……僕がいない間、ですか」
ガングレイブさんの暴走。クウガさんの出奔。リルさんとテグさんの放浪。
僕は顔をしかめて呟きました。
「僕が、あのとき」
「止めて」
みんなの前から居なくなってしまったから。
そう言葉を続けようとした瞬間、隣にいるリルさんが僕の服の裾を摘まむ。
力強く、だけど弱々しく震えていました。
リルさんの顔を見ると、こっちを見ないままに前を向いていましたが、少し目を伏せて悲しそうにしています。
……ああ、と僕は反省する。僕がリルさんたちと離れて記憶を失っている間に、リルさんたちは僕の喪失を苦しんで、悲しんでくれていたのだ。
それだけこの人の心に自分がいることに昏い喜びが湧き上がりそうになるが、リルさんの目を見るとそんな喜びも吹き飛ぶ。
好きな人の悲しい顔で喜ぶほど、僕は腐ってないのです。
「言わないで」
「わかりました」
僕はゆっくりとリルさんの指を掴む。
「もう言いません」
「そうして」
そのまま指を解こうとして――解けねぇ。握力が違いすぎる! 何これ解けないし離せないんですけど! リルさんの顔は恋人を心配する乙女の顔なんだけど、力はもう乙女のそれじゃねぇんだよ。やべぇよ、これ。
おかしいな。ここは恋愛シーンで甘酸っぱい雰囲気になるはずなのに、蓋を開けてみれば超強力腕力持ちの彼女に束縛される男の図だよ。
僕の人生、どこで間違えたんだろう? と空を仰ぐ。答えなどどこにもないのだが。
「さて、そろそろニュービストに入るっスよ」
テグさんが緊張した面持ちで呟く。
目の前には、神聖な木々が生い茂る森。豊かな土壌を持ち、数多くの資源が眠る国の入り口が。
ここから、ニュービストに入る。
かつてテビス姫と出会った、あの森の国へと。
「オイラたちの目的はあくまでも、これからの旅に必要な物資を手に入れることっス。無駄な行動はしない。テビス姫にも会わない。ウーティンにも見つからない。必要なものを揃えたら全力で逃げて、クウガのもとへ向かう。いいっスか?」
「テビス姫に会わない理由は?」
僕がなんとなく聞いてみると、テグさんとリルさんはあからさまに嫌そうな顔をして僕を見る。なんだ、その顔は。僕が何を聞いたって言うんだ。
「面倒くさいから」
僕が聞いたのは、ただ単に面倒くさいってだけのことらしい。
「面倒くさいっス。絶対になんかやらかしてくる。目に見えてるっス」
「リルだって、今は会いたくない。テビス姫の勧誘を断ってるのに、今更ニュービストにいますとか気まずい。しかもシュリが一緒だとさらに気まずい。囲ってくる、絶対に」
「……それは困りますね。ここで足止めされてはいかん」
みんなの元から離れていた二年間、何があったかは詳しくわかりませんが、死んだと思われていた僕が生きていてニュービストにいると知られれば、テビス姫は何らかのアクションを取ってくる。
その時間がもったいないです。早くクウガさんに会いに行かねばいけませんから。
「さっさと入ってさっさと出ましょう」
「それがいいっス。リル、金はあるっスか? オイラ、一応金だけは持ち出せてるっス」
「リルも。物資は……ほとんどヴァルヴァの里に置いてきちゃったけど、幸い金だけはある」
「じゃあなんとかなるっスね」
テグさんとリルさんが互いの持ち金を確認し合い、買うものの選定を始めている。
それを見ていた僕の肩を、ゼロさんが掴んだ。
『シュリ。お前たちは何を決めた?』
『ニュービストには長居せず、必要な物資を買い集めたらすぐに出るってことです』
僕は振り向きざまに、ヴァルヴァ勢のみんなに説明をする。僕とテビス姫の関係、リルさんとテグさんを含めた関係性、そして見付かったら面倒くさいことになることも。
全てを説明し終えた。
『反対! 美味しい物を食べたい!』
『反対! 柔らかい寝床で寝たい!』
『観光!』
『食事!』
『娯楽!』
『宿泊!』
『あんたら本当に仇討ちをする気なんだよね???』
あまりのシファルさんとシューニャさんの荒ぶりように、僕はジト目でゼロさんを見る。
ゼロさんを視線を逸らすだけで、何も答えなかった。
答えられないだろうよ、そら。
騒ぐ二人を宥め、僕たちは森の中を進む。
かつて僕は、ガングレイブさんたちとこの森を進み、ニュービストへ入った。
そこでテビス姫と出会い、様々な旅を経てきた。
……まさかまたこんな形で来ることになるとは、思わなかったな。
「はぁ……気が重い」
「何が?」
「テビス姫に僕が死んだままだと思われてるのが、です」
面倒くさいとか足止めは嫌だとか思っていても、世話になった人が僕のことを死んだままだと勘違いしてるままなのはちょっと嫌だな、と思うのも事実なのです。
というか誰だって嫌だろうがね。
どうにかして生きてますと伝えて、なおかつ会わずに済む方法はないものだろうか。
そんなことを考えながら悩んでみる僕。
「シュリ」
「なんでしょう」
リルさんが怪訝な顔をしていた。
「テビス姫のこと、好きなの?」
「人として、なら」
それならよし、とリルさんは答えた。なんだ、嫉妬か?
「さ、入るっスよ。静かに、目立たずに、スよ」
目の前に見えてきたのは、森の中にある立派な街。前にも見た、ニュービストの城も見えてきた。
兵士に身分証明をして、街の中に入る。割とあっさりだ。
「随分とあっさり入れましたね」
「リルは前に、ニュービストに滞在してたことがある。あの兵士は、そのときの知り合い」
「へぇ」
僕は後ろを振り返り、兵士さんを見る。こちらに向かって会釈してくれてるので、悪い人ではないらしい。というか、リルさんに向かってしてる感じだ。
「知り合いっていうと、仕事仲間か何かで?」
「そんなところ。世話になった」
「なるほど」
リルさんの顔を見れば、懐かしそうな顔をしていた。僕がいない間、リルさんもリルさんで自分の人生を歩んでいたんだろうな。
……なんかモヤッとするな。これが嫉妬か。リルさんの気持ちが良くわかる。
僕がモヤッとした顔を見て、リルさんは嬉しそうにしていた。
「なに? 嫉妬してくれた?」
「……まぁ」
僕がブスッとして答えると、さらにリルさんは嬉しそうに僕の頬を突いてくる。
「んー?? シュリが、リルの男と、も、だ、ち、との交友関係に嫉妬するのー?? それはどういう気持ちー??」
「悔しい気持ち」
「そうかそうか、それは良い!」
「はいそこイチャコラすんな、いい加減ぶん殴るっスよ」
すっげぇ低い声でテグさんに脅されてしまった。怨嗟と怒りに塗れた目つきが、僕の心臓を打ち抜く。怖いっ。
リルさんはのらりくらりとして余裕そう。怖くないんか……。
で、ゼロさんたちはというと。
『見ろ! 人間だ! レイたちヴァルヴァの民以外の人間だぞ! まさか外の世界で見ることになるとは!』
『馬鹿野郎、レイ! あんまりキョロキョロすんな、田舎者だって思われるだろ……!』
『シファル! 変わった建物がある!』
『シューニャ! 旨そうな匂いがする!』
完全なお上りさん、観光客みたいな感じでキョロキョロして楽しんでる。こいつらっ、脳天気過ぎるだろっ! 復讐心はどこにいったんだ!?
ダメだ、完全に頼りにならん。と、僕はもう見るのを止めようとしました。
『シュリ』
す、と耳にゼロさんの声が届く。
『振り向かずに聞け』
さらに注意。僕は前を向いたまま、ゼロさんの声に耳を傾けました。
レイさんたちの楽しそうな、好奇心旺盛な様子が聞こえる。
『何人かに囲まれてる』
『!? ……っ』
『何も言うな、反応するな。そのまま前を向け』
囲まれてる。この忠告を聞いて、僕の背中に寒気が奔る。
隣にいるリルさんに小声で伝える。
「リルさん」
「なに?」
「……囲まれてるそうです」
リルさんはスッ、と真顔になりました。
「……ウーティン辺りかな」
「リルさんは気づいてました?」
「全然。わからなかった……」
リルさんは目線だけで、周囲を観察する。
僕たちはニュービストの街の中にいる。当然だが、人通りが多い道を歩いている。
店が多く立ち並ぶ道なので、人が多いのは当然なんだけどね。目的のものを買わなきゃいけないわけですし。
ところがどっこい、この人混みの中に僕たちを囲っている人がいる、とのことだ。
わいわいがやがやと賑わうこの中に、誰かがいる。
『……もしかして、ゼロさんたちが騒いでたのって、気づいてるのを誤魔化すためですか?』
『それ、も、ある』
『……何も言いません』
素で好奇心から騒いではしゃいでたね??
でも、素の反応だから他の人に気づかれなかったとかあるかもしれない。
『それで? シュリ、俺たちを囲ってる奴らに心当たりは?』
『僕たちの知ってる人に、この国の王女様に仕える間諜がいます。可能性があるとしたら、その人たちしか心当たりがありません。僕たちは昔、この国に来て王女様と会ったことがありますし、その間諜の人も知っています。リルさんはヴァルヴァの里に来る前に、この国に滞在していたことがあるので』
『……あぁ、なるほど。道理で気配が、こう、隠れて囲ってる割には上品で整ってると思った。もっと雑にしないと不自然なのにな』
ゼロさんから聞こえる、冷たく感情がなく、淡々とした声による評価。
怖い。ゼロさんが、怖い。
同じように、僕とゼロさんの会話が聞こえてるはずのレイさんたちに、なんの変化がないのも怖い。はしゃいで、騒いで、好奇心旺盛な少年少女を演じてる。
『それで? どうするつもりだ?』
『どうするとは』
『殺さないのか? どう考えても良いことにはならない』
ゾッとする言葉。これが、ヴァルヴァにとって普通なのでしょう。危険な可能性があるなら対話も必要ない。排除するのみ。
わかっていました。彼らと二年以上、一緒にいたのですから。
僕は大きく深呼吸をしてから一言。
『僕の意見としては、止めときましょうと』
『……理由を聞いても?』
『いや、こんな街中で戦闘行為はダメでしょう……』
『見られなければいい。元々、ヴァルヴァはそういう技に長けている』
『もし、本当にゼロさんたちがその技で殺すつもりなら、僕たちに気づかれないようにすでに行動してるはずでは? 僕に聞くってことは、何か理由があるんじゃないですか?』
そう、ヴァルヴァの民は傭兵として、暗殺者として活動している人たちだ。人知れず誰かを殺す技だって当たり前のように持ってて、当たり前のように使う。
だから、この状況でもゼロさんたちが本当にやる気だったら、僕どころかリルさんとテグさんにさえわからないように行動をしているはずなのです。
なのに僕に忠告し、僕に意見を求める。
理由があるはず。
『……正解』
『理由は?』
『ヴァルヴァの里の外で、ヴァルヴァの民のことを詳しく知ってるのはシュリたちだけ、のはずだ。そのシュリが、ヴァルヴァの民らしい振る舞いを外の世界の普通の街で俺たちがしようとしたら、どんな反応をするかを知りたかった』
『結果は?』
『……もう少し、外の世界を知った方がいいという結論だ。ヴァルヴァらしい振る舞いや常識を振りかざすのは良くないのはわかった。俺たちがそうする、という可能性を提示したとき、シュリは平静を装ってたろうが、俺にとっては予想以上の殺しに対する嫌悪感が見てとれた。戦場にいたのは聞いたし、『そういう』のを見たことあるのは知ってる。それなのに、ここが街の中という理由が付いた途端に忌避感が増したように思える。
それが当たり前なんだろう。場所、状況、理由、他の様々な要因が重ならなければ、こんな状況でも先に手を打つことができない。面倒くさいな』
ゼロさんは大きく溜め息を吐いた。
『ということだ、レイ、シファル、シューニャ。今は放置』
『わかった』
『めんどうくさ』
『とっととやりゃいいのに』
振り向けませんでした。ほんの少し、たった一言だけの会話。なのに、後ろにいるレイさんたちが本当に僕が知ってるレイさんたちなのかがわかりませんでした。
わからない。ただ口から発音の良い音声が流れたような、連絡事項。
人間らしさが微塵も存在しないやりとりに、僕は恐怖を感じました。
彼らのことは見ていたはずなのに。
同じ食卓を囲って一緒にいたのに。
「テグさん」
「わかってるっスよ。とりあえず、ヴァルヴァを宥めつつ移動するっス。囲ってる連中を確認してから、行動するっス。もしかしたら、テビス姫が」
と、テグさんが何かを言う前に口を止めた。
なんだなんだ? とテグさんの視線の先を辿ろうとする。どうやら人混みの向こうに何かがいるらしい。
馬車の音が聞こえる。どうやらやんごとなき身分の人がこっちへ馬車を走らせているらしい、遠くになんか王族の人が乗りそうな立派な馬車が見える。
中に乗ってるのは誰だ、と思う前にリルさんが動いた。テグさんも動いた。
「え、ちょ」
「リル、頼むっス」
「了解」
リルさんは馬車と僕の間に立ち、テグさんは僕を背中に隠すように立つ。
テグさんとリルさんの動きに呼応して、シファルさんとシューニャさんは僕たちから少し離れた場所に立ち、レイさんは建物の間の路地裏へ、ゼロさんは僕のさらに後ろに人混みに紛れたのが見えました。
本当になんなの? と思ってると馬車が止まる音がした。
がちゃり、と扉が開く音がする。どうやら中から誰かが出てきてるらしい。テグさんが執拗に邪魔をしてくるので、馬車も出てきた人も何も見えない。
「久しぶりであるのぉ、リル」
「テビス姫」
「まさかまたニュービストに来てくれるとは。驚いて妾自ら、出迎えに来てしもうたわ。とうとうこの国に仕官してくれる気になったかの?」
……この声、テビス姫??? 凄く久しぶりに聞いた声で、思わず僕は緊張する。
「いえ、再び旅の道具を揃えようかと」
「無体なことを言う。もうこの国に骨を埋めても良いではないか」
「リルには、リルのやることがあるんで」
「そうか、でも妾はしつこく勧誘するぞ。まずはこっちへ……ん? リルよ、何故旅の道具がない? 持っておったじゃろ?」
どんどん周りに野次馬が増えてくる。遠目からテビス姫を見ようと、たくさんの人が集まってきて輪を作りつつあります。
テグさんは僕を人混みの中に入れようと、後ずさりしつつ僕を背中越しに押してくる。止めてくれ、転ぶ。
「途中で落として」
「大事な荷物じゃろう? 何があった?」
「……実は戦争に巻き込まれて。戦場から抜けるために、仕方なく」
「……興味深い話じゃの。詳しく聞かせてくれんか? 城へ」
テビス姫の言葉が止まった。
「……テグか?」
「お、お久しぶりにございます、ス。テビス姫様」
「おお、テグも一緒じゃったか! 久しぶりに見たのぉ……確か、シュリの痕跡を、遺体や形見を探す旅をしていた、と聞いておったが……」
「ええ、まぁ……」
「……見つかったか?」
本人がここにいまーす。と出て行きたいイタズラな気持ちが湧いてくる。
が、テグさんがとことん邪魔である。
「……」
ふぃ、とテグさんが顔を逸らす。あ、これはテビス姫の前で嘘を吐けないから、だんまりするつもりの奴だ。
テビス姫はテグさんの様子を見たのか、悲しそうな声で言いました。
「……仕方あるまい、見つけるのは容易ではないのじゃ。なぁテグ、どこまで探したか、城で聞かせてはくれぬか? 妾の方でも、探してみたいのじゃ」
「お、おぅ。そ、うっスね」
「……何故動かぬ??? まるで動けぬように見えるが???」
テビス姫が不思議そうに聞いてきます。テグさんはジリジリと僕を人混みの中にどうにかして押し込もうとしていましたが、とうとう動けなくなりました。下手に動けばテビス姫に悟られる。
このままだとテビス姫が、テグさんの後ろの僕のことを聞いてくるでしょう、どうするつもりなのか。
「テビス姫、リルたちの周りに誰かいるのは?」
「ああ。門番から話が伝わってきたのでは。リルの動向を探らせておっただけじゃ。敵意はない、すまぬの」
ナイスだリルさん、これで周りに誰がいるのかがわかった。
僕はゼロさんの姿を探して――。
何故かウーティンさんと目があった。
「あ」
「……」
ウーティンさんが、何故そこに? ウーティンさんは、ちょうどゼロさんの隣に立っていました。ゼロさんは僕から何かを言われると思っていたのでしょうが、僕の口から出たのはマヌケな声。
不思議そうにするゼロさんの隣のウーティンさんは、僕の顔を見ても何の反応もない。
あ、そうか。僕の髪の色と瞳が変わってる。だから初見じゃわからないんだ。服装はそのままだけど、人相が違う。反応が遅れてる。
な、何かゼロさんに言わねば、隣の人のことを言わねば。
「……?!」
だが、遅かった。
僕が何かを言う前に、ウーティンさんの表情が変わった。
驚きと、喜びと、興奮。
頬が朱色に染まり、人混みをかき分けてこっちに来る。
逃げようとしても、テグさんがいる。動けなかった。
そのままウーティンさんは人混みから出てくると、スッと僕の前に立つ。
で、抱きしめてきた。
「は?」
「捕まえ、た」
なんだ、女性から抱きしめられ、
いや、違う、これ、抱きしめてるわけじゃねぇ。思いっきり捕まえてる奴だ。逃がさないようにベアバックみたいな形になってる奴だ。
「おごごごごご」
しかも力が強いから逃げられないし、だんだんと絞める力が増してきて息ができないおごごごごご。
「シュリ!?」
「え? どうしたっスか?」
リルさんがこっちを見て口を開き、テグさんは振り向く。
一連の行動の中で、ウーティンさんがスタスタと僕を持ち上げるように抱きしめて捕まえたまま、歩く。
呆気に取られてるテビス姫の前に立ったウーティンさんが、言いました。
「姫様。シュリ、を、捕まえ、ました」
「……は?」
なんか、テビス姫の口から初めて。
マヌケな声を聞いた気がしました。