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傭兵団の料理番  作者: 川井 昂
二章・僕とリルさん
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閑話、入日よければ明日天気


「……あれからもう、何年経ったかの」


 ワイことクウガは、伸びた髪をかき上げて空を見上げる。

 今は夕方の時間帯、誰もこない街の外れの森の中でワイは、薪を割る斧を投げ捨てる。

 数は十分にある。当分は大丈夫やろ。


 シュリを失って数年。ワイは失意のまま旅をした。

 襲いかかってくる奴らを殺し、装備を剥ぎ取り近くの町や村に売る。その日その日だけ生きることを考えて、金を散財して過ごす。

 敵を傷つけ、近寄る女で遊び、適当に捨ててフラリと去る。

 最終的に辿り着いたオリトルでも、盗賊の装備を剥ぎ取って売り、近くの森を勝手に切り開き、生活する。

 そこで適当に生きて……唐突に閃いた。

 シュリの仇を取り死のう、と。

 その日からワイは、剣の修行を続けた。


 今に至り、ワイは伸びた髭をさする。


「そろそろ、ガングレイブも行動するみたいやな」


 数日前、ワイは襲ってきた盗賊を殺して持ち物を剥ぎ取ろうとトドメを刺そうとした。

 盗賊団は七人程度の雑魚ばかり。稽古にすらならん。

 だが、殺す直前に盗賊は言った。


 くそ、アプラーダが戦争直前になって危なくなってきたからここまで来たのに、と。


 良い情報を聞けた礼に、苦しまぬように一撃で首を刎ねて殺した。

 ワイはもう、時間がないことを悟る。


「もう少し修行をしておきたかったが……そろそろ行かねばならんな」


 ガングレイブがもうすぐ、グランエンドと戦争を起こす。

 ならワイもすぐに駆けつけねばならん。


 しかし……ワイの中に熱がない。

 シュリの仇を討とうという、熱さがない。


「……ワイの中から、熱意が消えてもうたか」


 こんな状態でガングレイブの元に駆けつけても、迷惑になるだけかもしれん。いない方がマシかもな。

 でも……と、ワイは思う。


「熱など、シュリがいなくなってからなかったわな。なら、やることはやるか」


 ワイは体を伸ばして、勝手に建てた小屋へ足を向ける。

 割った薪をキチンと片付けるなんてしない。適当に転がして、良い状態の奴を見繕って使うだけ。マメさなど、そこにはない。


 ふと、ワイは振り向いて太陽を見る。

 綺麗な夕日が、そこにあった。美しい夕焼け色の空。どこまでも眩しく、輝いて見える朱色の光。


「……さて、死に場所を求めるかの」


 ワイは小屋へと戻る。

 死に場所まで、もう少し。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんなにこじれちゃったクウガさんには食らわすしかない! くらぇえ!アジフライ!
[良い点] 連続更新、嬉しいです! [一言] 「食養生」が必要そうな人がさっそく登場。 絶対好物食べるまで治らないぞ、呪いみたいに。
[一言] 更新ありがとうございます♪
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