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しまった!ダメダメなやつを勇者としてスカウトしてもうた Lv01 規約同意とちゅうとりある編

作者: ちょっと法師

 ここは、無数にある世界の中の一つ、現在の地球の中の日本な。


 そそ、この物語を読もうとしている、アンタのところだな。


 おっおい、そっ閉じはしないでくれ。


 ワシは、使徒だ。

 アンタらが住む世界の保護と観察が仕事なんだわ。

 カッコは羽の生えた子供なのだが、年齢的には立派なおっさんだ。

 魔法も使えるぞ。

 しかもあんたらが腰抜かして奥歯がガタガタいうぐらいの魔力ちからはあるで。

 魔法使いであり、賢者でもあるわ。


 なに! DTいうな!

 DTちゃうわ。


 しょ、証拠あるぞ。

 ここにDTでない証拠写真と動画も出せるわ。

 ただ、世知辛い世の中、児ポに抵触するかもしれん。

 作者が捕まったら即終了、見せれん。

 スクロールなしの一画面ストーリーになってしまうわ。

 ふん、残念だったな。


 これでも、ワシには嫁がおったわ。

 イランこと言うて喧嘩別れしたがな。


 いわゆるバツイチだわ。

 まあ、おとこの勲章みたいなもんだ。


 ままま、まあ、見た目は子供、中身は大人ちゅうやつだわ。


 アレも見た目、子供だぞ、ちっ。


 名は「パウワウ」。


 ワシの持つ得意な魔法は、火力、破魔といった攻撃系かな。

 攻撃系に関しては、ワシら使徒の中では最強クラスだぞ。

 なんかこう、ずっばーん、とか、どっかーん、といった気分のええものが得意だな。


 ややこしい系は苦手だわ。

 時間操作とか守りとか治癒とかはそんなに得意でない。

 使えんことはないがな。

 じっくり、落ち着いてやらんとうまくいかん。

 時間かかるし、面倒だわな。


 んー、あんたらが言う、この世界を創造したとか、見えないのにいると信じられている「カミサマ」にあたるエラい人の使いの者だ。

 エラい人と言うたが、人とはいえない。

 もっと、こう、超越したヤツな。

 とにかく、すっげえヤツらしい。


 らしい? そそ、ワシも見たことない。

 いつも、聞こえざる声、つまり、思念でアレコレ言ってくるのだな。


 幻聴の類かって? ちゃうわ。

 こっち側の立派なコミュニケーションなんだわ。


 その「カミサマ」ってやつ、いっつもワシには面倒なことばかり言うてくるんだわ。

 で、聞こえないふりしたり、拒否や反抗したり、失敗したりするとキッツイお仕置きがまってんのよ。


 たまらんでえ。


 お仕置き? 毎回違う内容でなぁ。

 そうだな、こないだのやつは突然筋肉ムキムキのオネイサンが現れてな、ワシの両足首ガッチリ掴んでめっちゃシビれる電気アンマの刑とかあったな。

 あれ、キッツイで。

 キョーレツ息苦しい刺激でな、ワシの口から変な声出てしまったわ。

 で、刑の執行が終わるとなぜか、土下座して延長を頼んでしまう屈辱的なお仕置きだったな。

 ちなみに3セット受刑したのは秘密な。


 前置きの自己紹介が長くなるのでこの辺りでぶった切るが、今回の仕事はちと壮大な内容でな。


 カミサマが言うには安定しきったあんたらの地球に混沌期がくるからって。

 まあ、地上の覇者交代かどうかの時代到来だな。

 いまの人類が生き残ればよし、ヤケ起こしたりとか次の高度文明をもつ動物とかが支配するかもしれん。

 カミサマはあくまで傍観するだけでコトの流れを見るだけだという。

 ヒマでもホドがあるだろ、ちっ。


 ワシはまだ、この人類を見てみたいのが本音でな、あんたら人類の文化に惚れてるんで、歴史づくりの白羽の屋が立ったんだわ。

 で、ワシには、地球の中の誰かを勇者に仕立ててなんとかしろっ! って言うてきた。


 ったく、こっちは忙しい時にだぞ。


 忙しいのは、地球のけしからん文化の一つ、ネットエロゲのせいだ。

 今回のリリースした「もんはん」ちゅう、まことにけしからんゲームをプレ、いや検閲中に、だ。


 えっと、ちなみに今回の「もんはん」ってのは、あの有名過ぎる自分の体よりデカイ武器を振り回すやつでなくてな、出てくる敵が全て「おにゃのこ」という設定のエロゲなんだわ。


 正式タイトルは「もんもんはぁ~ん」ゆうやつ。

 このエロゲ、まことにけしからん。

 この世界の倫理と秩序が崩壊しちまうわ。

 

 で、もう少しでレイドボスの「魔改のヴァルキリー、ぶっとびのスミレたん」を攻略できそうだったのに。


 うわさに聞く、幻の装備アイテム「ビキニアーマー/スミレたん改」を逃してしまったわ。

 ちなみに「ビキニアーマー」はな、生地が少なければ少ないほど攻撃力と敏捷性がバク上げする装備でな、スミレたん仕様はもう、生地ってのはあらへん、紐パンみたいな最終形態化した、とんでもなくけしからんステータスのアイテムだったらしいわ。


 ワシが丹精込めて育てたキャラに装備してやりたかったな。


 カミサマはいっつも最悪なタイミングで命令してくんだわ、ちっ。



 さて、勇者を決めなくてはならんがな。

 ここで、ワシの地球での幅広い人脈がモノいうがな。


 聞いて驚くな、この地球で発達した大規模ネットワークをちらっと使えば簡単だがな。


 インターネッツいうやつだ。

 驚いたか、驚いてもええぞ、お前らの最先端のコミュニケーションツールだからな。


 そんで、MMOエロゲの「もんもんはぁ~ん」、通称「もんはん」で培った人脈でみつけた、中二のやつを勇者にしたろと思ってる。


 中二病患者じゃないで。

 正真正銘、自称、中学2年生と言うてたわ。

 R18ゲームだぞ、やつは14歳だ。

 すげぇけしからん男だ。


 その男、「もんはん」で知り合った、ギルドの「百合撲滅委員会ゆりぼくめついいんかい」のギルマスやっとる。

 ワシがぼっち(ソロプレイや)で寂しく、おにゃのこ(MOBの事な)を狩っていたら、エリアボスの「特攻少女隊総長、夜露死苦キョウコ」が現れてな、犯っつけてやろうと挑んだら、ワシの装備全部ひん剥かれて逆にボッコボコにされて追い回されていたところを助けてもろたん。


 そして、ヤツはワシに「キョウコ」がドロップしたレアアイテム「ブッコミキョウコの木刀/魔改造ブルブルマシン搭載仕様」というなんとも香ばしいものをくれたんや。


 ワシ、思ったんや。


 こいつおとこや。

 こいつなら世界を変えるかもしれん、そう思った。


 男の名前は、キャラ名で「聖剣士みや」、本名「宮地翔太みやじ しょうた」、イケメン男子だと言ってたわ。

 名前も、なかなかの中二臭してええわ。


 そんで、OFFで会おうかって誘ったら、ほいほい言って出てくるという。


 それで、これからワシ「宮地翔太」に会って勇者になってもらおかと思ってる。


 さて。


 そろそろ約束の時間だわ。

 羽の生えたガキのカッコじゃマズイわな。

 ワシも中二ぐらいのガキのカッコに変身して行かなくちゃな。



 ここは町の郊外、小高い丘の上の廃寺。

 檀家はほとんどいなくなって今では誰もいない廃墟だわ。

 夜来ると怖いでえ、ワシでも遠慮したいわな。


 ここで勇者見習いの男に簡単な稽古をつけとる。


 勇者見習いの男の名前は「宮地翔太みやじ しょうた14歳独身、当然DT」、MMORPG「もんもんはぁ~ん(通称:もんはん)」で知り合った。


 ワシは、こいつを「みや」と呼ぶことにする。


 ゲームでは骨のあるやつと見込んでいたが実際はどうしようもないヤツだな。

 まあ、声かけてOFFで来たやつだしな、勇者になるための同意ボタンをノータイム即クリックしたことだしな。

 

 まあ「同意」には「規約」を読んで納得しなくてはならんが、十人中十人は、そんなもん一切読まずに即クリックするわな。


 「おい、みや、詠唱素振り200回。はじめっ」

 「えー、疲れたんでジュース飲ませてよ」

 「はよ、そこの枝を拾って、ちゃう、その横のもっとぶっといやつを拾え」

 「これ重いよ」

 「しゃあないな、腕力アシストの魔法をかけるから。ふむ、これで振れるだろう」

 「おお、軽い軽い。もっとアシストを強くすれば超人になれるんじゃね」

 「あほか、アシストと持ちあげるもんのバランスとスピードをナメるとお前の身体がついていかんわ。筋肉がちぎれ、骨が砕けることもあるわな。いまはこのアシストに慣れるようにしろ」

 「わわわ、わかった」


 ワシの魔法は筋肉の力はなんぼでも上がるが、強靭性は変わらんちゅうことだわ。

 缶コーラに例えると、アルミ缶が肉体、コーラが筋肉、炭酸が力な。

 炭酸をどんどん多くすればシュワシュワが強くなるが、限度を超えると缶が破裂するわけだ。


 力を強くすれば自分自身の筋肉や骨を破壊するということだわ。


 一応、強靭性アップの魔法は出来んことはないが、ワシの場合、不得意な魔法は数分から数時間、モノによっては数週間後にやっと発動する。


 蘇生も一応出来んこともないが、数週間かかってしまい、生き返るまでに腐っちまうわ。

 まあ、今まではゾンビ化魔法つってごまかしたがな。


 「わかったら、はよ素振りしろ」

 「その前にジュース飲みたいお」

 「あかんて。おまえ、同意クリックしたよな。勇者になる規約の645条の第2項に書いてるわ。いうこと効かん奴はケツバット50発の刑を処す」

 「のどかわいたー、パワさん、コーラ飲まないと死ぬっ」


 ワシ、錆びて朽ちた鉄管数本を拾って魔法で金属バットのような鈍器を作った。

 先端部には凶悪な刺のついたやつ。


 「こいつ、アルミちゃうで、鉄でできとる。こいつでケツしばくと、へへ、キクでぇ。」


 「みや」のやつ、真顔になって始めよったわ。


 「アークボルト」

 ひゅん。

 「アイスニードル」

 ひゅん。

 「アローレイン」

 ひゅん。

 「あんぱんち」

 ひゅん。



 この男、はっきり言うとアカンわ。

 ここまでヘタレなのも驚きやで。


 「イナズマキック」

 ぶんっ。

 「異界の魔神召喚」

 ぶんっ。


 足はおそいわ、声は小さいわ、恥ずかしがり屋でしかもすぐビビリよる。

 へっぴり腰で、なんかこう、動きがちぐはぐだわ。


 「ウルトラキック」

 ぶん。

 「ウルトラパンチ」

 ぶん。


 あのな、最初に言ったとおり、おまえにはなんも素質はあらへん。

 どんな有能な人間でも超能力や魔法なんて論外な。

 これっぽっちも期待せえへん。


 お前は勇者になるんだ。

 恥ずかしがらずに技を唱えんとカッコつかん。

 ハッタリと度胸つけれや。

 威力には関係ない派手なエフェクトも付けたるから心配せんでもええ。

 そして最後にドヤ顔とキメ台詞で勇者っぽくキメればええ。



 ワシはおまえの代わりに魔法や必殺技を発動させるから心配いらへん。

 おまえは大きな声で魔法や必殺技を唱えればあとはワシが出すだけな。


 しっかし、この男、どんくさいわ。

 唱えながら振りかぶるとワシがタイミングとれん。

 どの魔法出せばいいのかわからんわ。

 

 いいか、魔法や技の名前を言ってからアクションしろや。

 そしたら完璧にタイミング合わせたるわ。


 それとな、威力をあげるにはため時間を作れや。

 たとえばな、最初に魔法の名前いうて、振りぬくまで適当な呪文でもくっつればええ。

 間があくほど威力を徐々に上げてくからな。

 

 それとな、お前は能力的には勇者でも何でもあらへん。

 ただの生身の人間な。

 そこらじゅういる、一般ピーポーと一緒だ。

 いや、引きこもりでNEETである分、クズ人間な。

 ええか、わしの魔法は強力すぎるからほどほどにせんと、怪我どころかお前自体が死ぬで。


 小さな火の玉ぐらいなら大したことないけど、至近距離で太陽を作ったらあかん。

 ワシも気をつけるつもりだが、お前の詠唱のためが長すぎてうっかり作ってしまうかもしれん。

 お前の体、即ケシズミになるで。

 近くでの爆発もあかん。

 これはどんなに鍛えてもかわらんからな。


 それと、大事な事をもうひとつ。

 勇者はあくまでお前ひとりだ。

 代わりもおらんし、お前との契約時にカミサマにも伝えとる。

 当然、ワシとおまえとの間ではワシの方が格上な。

 お前はゴミでワシは使徒だ。

 だが、ワシら以外からはお前が勇者でなくてはならん。


 ヨソではお前がTueeeで、超すごいやつでないとならんわ。

 有名になってもらわな、歴史に残らん。


 お前が超カッコよく目立て。

 お前が超いい人であれ。

 お前は超強い男だ。

 お前が伝説を作るんだ。


 お前こそ勇者だ。


 大事なことだから2度言うぞ。


 お前こそ勇者だ。


 「メガクエイク」

 すかっ。


 「メテオ」

 すかっ。


 しかし、この気合のなさは何とかならんかな。

 アシストしてるのに、すぐに疲れよるわ。

 しゃあないな、アメをくれてやるか。


 「おーい、やめ、やめ。お前に気合を入れさせてやる」

 「ふうぅ、はい」

 「いいか、よく聞け。説明の順番通りやってみろ」

 「ふぁい」

 「ふむ、まずは、枝を振りあげる。次にライトニングアローと叫ぶ。最後にあの木に向って振りおろす。あの20メートル先の木だぞ」

 「あい」


 「いいか、大きい声で叫ぶのと大きく動作するのはワシがタイミング取りやすくするためだ。忘れるなよ」

 「あい」


 「よし、やってみろ」


 ヤツは少し深呼吸して振りかぶったわ。

 ワシは枝に激しいエフェクトをかけてやる。

 見掛け倒しの演出な。

 ちっとも威力には影響せん。

 枝の全体を輝かせ、その枝の先端に光球を作る。


 「ライトニングアロー」


 叫び終わるタイミングで枝を振る。

 枝の先端の光球にビリビリ音を加え、枝の振り抜きに合わせ光球を飛ばす。

 木に命中させ、そのタイミングで木を粉砕する。


 ぶぉおおんばりばりばりばり、どっかーん。


 あほ、みやのやつ、腰ぬかしおったわ。

 「おっ、おおお、すっげえ」

 「ふん、もっと派手な演出も出来るわ。」

 

 ヤツはたちあがり、枝を振りかぶる。

 

 「ライトニングアロー」


 ふん。


 ぶわぁぁん、ばりばりばり、ばっかーん。


 「おおお、やっぱすっげ」


 今度は、素早く降りかぶりながら唱え、そのまま振りぬく。


 ちょやめっ、あ!


 ぶわん、ばっこーん。


 「うぎゃっぁぁ」


 奴の手の枝が木っ端微塵にはじけ飛んだ。


 当然奴も失禁弾幕を撒き散らし吹っ飛んだ。


 「コルァ! おまえ、アクションと詠唱同時にすんな。エフェクトとターゲットの判断、爆破のタイミングが合わんわ」


 いまの難しいわ。

 ま、ワシもお前のタイミングに慣れてないからこうなるんだけどな。


 まあ、ええ。

 そのうち、お前とワシ、つーかーになるまでガンバらいで。

 そしたら、もっと早いタイミングで連発も出来るようになるわ。


 おっと、誰か来たようだ。


 今の爆音でおまわりさんがこっちに向かってきてるな。


 「おい、みや。おまわりさんが来るから、瞬間移動で逃げるぞ。俺の手をしっかり握れ」

 「あいっ」


 む、わしの手を掴んだみやの手、濡れてるな。

 あ、てってめえ、ションベンのついた手で触んじゃねえ、ちっ。。



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