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三章 その一

 久しぶりに、子供の頃の夢を見た。寝起きのはっきりしない頭で、段々ぼんやりと輪郭を失っていく夢の内容を、必死に思い出そうとする。

 登場するのは、泣いている女の子と、泣き止ませようとしている男の子。

 “悲しいことは、甘いもん食って忘れろよ!”

 男の子が女の子を泣き止ませようと、必死になって言った言葉だ。あの時見せた女の子の泣き顔は、本当に曖昧だが、教室で一人泣いていた金髪のあの子と、似ていたような気もする。

 思えば、不思議ではあった。バレンタインの時、あのヤンキー少女は俺に殴りかかろうとして、既の所で手を止めた。それは、なぜか。

 もしかしたら、ただの気まぐれだったのかもしれない。だけど俺には、どうしても何かの理由があったように思えてならなかった。

 例えばそれは、十年前に聞き覚えのある言葉を耳にしたから、とか。

 妄想に近い事だとは分かっている。だけど、もし仮にあの言葉に反応したのだとしたら、それは幼少の頃お菓子のやり取りをしていた当事者の二人しか知らない言葉を知っていた、ということになるだろう。

 当事者の一人――お菓子を手渡した男の子というのは、もちろん、俺。

 ならば、受け取った女の子というのは。

「……石井、なのか?」

 答えを探して問うが、聞こえてくるのは部屋に響く、無機質な秒針の音だけだった。

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